見出し画像

詩を書いたころ

詩を書いたころ
辺りは真っ暗だった
窓から見える世界は限定的で蒼白く
降り積もる雪も花びらも入道雲も
縁遠くて恨めしかった

よごと消えてしまいそうなかよわい炎に
薪をくべてはようやく眠り
目覚めればいつもその延命に後悔をした

思えばそのときは
後悔するさだめしか持ち合わせていなかった

くりかえす生活に擦り切れて
生命はすっかりくすんで濁る
月の出ない暗い夜と暗礁、
たったひとりで……
踏切を照らす青いひかりだけが光源だった
そして唯一の希望だった

深夜帯は何事かのなぐさめになる
終夜灯る街灯の変わらぬ明るさだけがわたしを赦して
赦されたこころで筆を取った
そのころ辺りは真っ暗だった
真っ暗ななかに浮かぶ
もしくは浮かんでほしい何事かを詩文にした

暗い夜に筆を取り
詩を書いては筆を置き
そして眠る……

それは色褪せた箱庭の中で
人工の太陽を待つような暮らし
しかし詩を書いたころ
それがわたしのすべてだった



I appreciate your brilliant photo,daway
https://pixabay.com/ja/users/daway-1278196/

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集