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マリアナのような底より

街の音は遠く不明瞭で
わたしは耳から髪の毛までが重く
マリアナのような深い海溝に沈んでいる

海底の二枚貝から群れをなして浮上する水泡が
晴れやかな砂浜につづく蜘蛛の糸なのだとしたら
したたかに酸素を奪えない私たちは
きっと不完全なまま生まれたんだね

群青色の水泡を虹色の膜が縁取る
夢でしか見られなかったその泡を割り
泳ぎの得意な亀が一瞥の後に去ってゆく
軽やかに泳ぎ去る亀が眩くて仕方がなかった

海の底から見上げる未来に果てはないが
過去には滞った感情が深く根を下ろす
虹彩から全くの輝きが失せて
複雑に絡まったこころの鈍い色たちは
調律もされずにいなないているよ

海溝はふかく
とてもふかく
今日も街の音は遠く不明瞭で他人事のよう
水面にはどんな眩しさの光が注いでいるのかと
思えど知るすべもない薄ぐもりのこころで
マリアナのような場所に深く沈むわたしは
今日をどう越えてゆくのかという問いかけに
向かい合えずにいる

水底にしずむような生まれでなければ
晴れやかな気持ちで砂浜を駆けたかった
泳ぎさえ得意であったなら
海を庭のようにして優雅であれた
しかしわたしはマリアナのような水底にいる

今日も耳から目、そして髪の毛までもが重く
わたしにはすべてのことが遠く不明瞭に聴こえている



I appreciate your brilliant photo,DenisDoukhan
https://pixabay.com/ja/users/denisdoukhan-607002/

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