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詩を書いたころ 辺りは真っ暗だった 窓から見える世界は限定的で蒼白く 降り積もる雪も花びら…
夜が好きだった 夜は自分に妙に馴染んで優しくあり ただそこに在って静かに受け容れてくれた …
ずぶ濡れになった白い化合繊のシャツと 青い血管のすっと通る絹のような肌を 残照は包み込むよ…
オリオンの渦状腕に抱かれて きみは眠っている シリウスが地平に隠され 代わりにベガが昇る季…
シリウスが綺麗だね ちらちらと輝いて工業地帯のよう 日本から観測できる地球は夜だけど それ…
最寄駅の改札を抜けてから玄関までの道のりを 昨日とおなじ歩数で帰る その繰り返しをあるい…
土産の弁当箱を手に提げて新幹線を待っている いちど発てば帰る足もないし 懐かしんで帰る故郷でもない 都にはそういった決まりがあるという それでもぼくは 留まった三月のことを何度もまぶたの裏に焼きなおしているよ 雲がひしめいて空に模様をつくれば 夕焼けの色がいつもと違うと騒いでいたね 小旅行の心づもりであっても 引かれる後ろ髪もあるし 靴底のチューインガムのように 剝がしがたい感情さえ募る 新しくはじまる日々はそう悪くない 明るい光の差すことをもう知っ
暗順応した瞳で ベッドの縁をぼうっと眺めている 火山のように脈を打つ心臓とひとりきりで相対…