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潮風で錆びた煙突を背景に 湾岸線が北へ南へと流れてゆく 運河を吹き抜けるつよい風が雲の背中…
街の音は遠く不明瞭で わたしは耳から髪の毛までが重く マリアナのような深い海溝に沈んでいる…
松の林の合間を縫って 花売りが花の市場をひらく 鮮やかな南国の赤から 深く落ち着いた緑まで…
詩を書いたころ 辺りは真っ暗だった 窓から見える世界は限定的で蒼白く 降り積もる雪も花びら…
たとえば想像のなかの雪 もしくは護岸に打ち付けて飛沫をあげる波のような 柔らかいものに包ま…
夜が好きだった 夜は自分に妙に馴染んで優しくあり ただそこに在って静かに受け容れてくれた …