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【REPORT】富士山外国人登山者のためのやさしい日本語

富士山外国人登山者と日本語で話すためのプチセミナー
~信仰と芸術の世界文化遺産を大切にしてもらうには?~

2023年は、富士山が世界文化遺産に登録されて10周年です。
富士山の開山前に、外国人登山者への対応をする山小屋や登山ガイドの方をはじめとする方々に向けたセミナーを行いました。

静岡県多文化共生課主催によるチャレンジングな企画です。
やさしい日本語の研修・イベント(令和5年度)|静岡県公式ホームページ (pref.shizuoka.jp)

やさしい日本語を活用した①口頭コミュニケーション、②表示・標識・張り紙などの案内・サイネージ、③多言語音声翻訳VoiceTra(NICT)やGoogle翻訳をはじめとする自動翻訳について、みんなで学び合いました。

エクスプレス!多言語対応

開山前の忙しい時期でしたので、1時間のセミナーでした。そのため、外国人対応の心構えなど基本的なことをおさえつつ、最も効率よく、すぐに実践していただくことを重視しました。

多言語対応の基本は、やさしい日本語です。

やさしい日本語の説明

やさしい日本語の「やさしさ」とは、2つの意味があります。
1 言葉レベルが「易しい」(easy)
→小学生低学年くらいの語彙が標準です。

2 相手にとって 「優しい」 (kind)
→例えば、こういったことも優しさです。
➊ 身ぶり・手ぶり
➋ 絵や写真を見せる
➌ 文字を大きくする
➍ 文字を読みやすい字体にする
➎ 漢字・カタカナに「ふりがな」をふる
➏ 声を適切な大きさにする
➐ 相手にわかる言葉に言い直す

やさしい日本語が使えれば、VoiceTraをはじめとする自動翻訳が格段に上手く使えるようになります。

また、表示・標識のポイントとして、以下を挙げました。

➊ JISのピクトグラムを探す(国土交通省サイト)
➔ 該当があれば一発OK!
➋ やさしい日本語も書く。特にふりがなを振る
➔ ➊➋を兼ね揃えることで、ユニバーサルデザインなものになります。
➌ 視認性を高める
➍ 連続性・統一性を揃える
➔ たくさんの色を使わない
➔ フォントを決める(UDゴシックなど)
➔ 大きさ・高さを揃える
➎ 手書きの場合、字を崩さない
➔ 自動翻訳しやすくなる
➏ 数字は漢字ではなく123・・・に! 日本独特の表記をしない
➔ 三〇二一米は、3,021mとする
➐ 極力、このセットを基本に!

❽食規定やアレルギーのリスクが最も怖い問題!
➔ ユダヤ教徒「カシェル」
 イスラム教徒「ハラール」
 ベジタリアン、ヴィーガン
 各種アレルギー・・・など、すべてへの対応は困難

→食材ピクト・フードピクトは、あくまでも「その料理に何が使われているか」を情報開示するためのツールなので、食規定やアレルギーなどを持つ人が自己判断できるような環境をつくる

山小屋を想定した「やさしい日本語」言い換えチャレンジ

私自身も富士山を登頂したことがあり、高山病スレスレの状態でしたので、山小屋に大変お世話になりました。
今回、セミナーを行うにあたって、YouTubeを見て、山小屋の多言語対応状況を確認しました。5回も登頂しました(笑)

具体的な状況を想定して、ペアワークで書換えの練習をしました。

↑ 入口やトイレのドアなど
↑ 山小屋の販売窓口の例
↑ トイレの入り口など
↑ 山小屋前の黒板など
↑ トイレの使用にあたっての例

やさしい日本語の書き方のポイント(まとめ)

➊まずは、伝えたいことの優先順位、そのときの状況を考慮して、情報を整理・取捨選択する。
➋初めて来た日本人(非専門家) が読んでも分かりやすい文章にする
➌日本の文化や習慣、ルールを知らないことを前提に、外国人の立場になって文章を修正する。
やさしい日本語にする。 特に、難しい言葉を避けて、漢字・カタカナにふりがなを振る。

メディア露出

NHK

海外からの富士山登山 やさしい日本語で案内するセミナー|NHK 静岡県のニュース

テレビ静岡・Yahoo!ニュース

脱コロナで富士山の外国人登山客増加か 観光業者が“やさしい日本語”講座 世界文化遺産登録10周年(テレビ静岡NEWS) - Yahoo!ニュース

TBS・SBS

富士登山の外国人には“やさしい日本語”で 一文を短く 擬音語避けて=静岡・沼津市 | SBS NEWS | 静岡放送 | 静岡県内ニュース・天気 (tbs.co.jp)

静岡新聞

参加者の皆さんの声

◆非常に役立ちました。保全協力金への対応に生かしたいと思います。
◆自分の中で、外国人へ向けた業務を行う時の視点が1つ増えた気がする。啓発にしても、注意を促すにしても、伝わらなければ意味がないので、積極的にやさしい日本語を駆使していこうと思った。
◆自動翻訳について、やさしい日本語を使うことで、情報が正しく伝えられることを知って、会話だけでなく、ホームページに生かしていきたい。
◆日頃無意識にまわりくどい説明をしていたことに気づきました。
◆ふだんから目にする日本語をやさしい日本にしてみる習慣をつけて練習したいと思います。
◆実際に使う時にはわかり合いたいきもちが伝わるように使うことが大切だと思います。
◆会話形式でやっていただき、理解が深まりました。
◆話し相手への誤解を恐れて無駄に長文になっていた。今後は「やさしい日本語」意識的に使用していきたい。やさしいは易しいではなく、相手に対する親切心。様々な場面で応用していきたい。
◆職業柄難しい日本語を使うことが多いので、とても勉強になった。
◆大変良い学びの機会でした。正解はないけれど、わかりやすい日本語を心がけたいと思います。

終了後、たくさんの方と名刺交換させていただきました。皆さん、各コミュニティで着実に広げていってくださるような熱意や情熱を感じる方々でした!どうもありがとうございました。

メッセージ ~セミナーを終えて~

世界文化遺産富士山は、過去の先人たちから与えられた日本・世界の財産です。
同時に、未来の世代からの預かり物でもあります。

だけど、今、たくさんの問題が・・・
信仰と芸術の世界文化遺産を未来へ贈り届けるためには・・・

富士山の価値について、登山者一人一人の理解が必要です。
そのためには、情報提供・コミュニケーション。
今回のやさしい日本語が、1つのきっかけになれば幸いです。

富士山の外国人登山者への対応については、まだまだ道半ばです。
また、二合目、三合目と歩みを進めていくご協力ができればと願っております。


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