(2020/10/27)【SDGs-NY: Vol 18】失職したＮＹブロードウエイ劇場関係者に、レストランが「無料で食事提供」～ サステナブルな事業再生を目指すニューヨーク～
【SDGs】 （#11） 住み続けられる街づくりを
（#17）パートナーシップで目標を達成しよう
【来年6月までＮＹ劇場の全公演が中止に―10万人が失職】
コロナ禍パンデミックをうけ、ニューヨークのブロードウエイ劇場は10月9日、来年の5月31日まで全公演を中止すると発表、またニューヨーク・フィルハーモニーも10日、来年6月までの今シーズンの全公演を中止するとした。米ニューヨーク州・市当局による新型コロナウイルス感染対策の制限を受けての苦渋の決断である。
このＮＹの劇場や舞台の全公演中止により、劇場関係者10万人が職を失った。10月に入ったニューヨークの劇場街周辺は、希望を亡くしたかのように閑散とした状態が続いている。さらに観光客が激減しているニューヨークでは、劇場街のレストランもまた閉店が相次いでいる。
(写真：Forbes Japan)
そんな中、ブロードウェイの劇場周辺で長く営業してきた老舗姉妹レストラン２軒、フレンチのマルセイユレストラン(Marseille) と イタリアンのニッツアレストラン(Nizza)が、ブロードウエイの劇場関係者やダンサー俳優たちに無料で食事を提供すると発表した。
●フレンチのマルセイユレストラン(Marseille) 630 9th Avenue New York NY https://marseillenyc.com
●イタリアンのニッツアレストラン(Nizza)
https://nizzanyc.com
失職した劇場関係者たちに「食事に困ったら無料で食事を出しますよ。来年、劇場が再開してから払える人は払ってくれたら良いし、それでも払えない人は、払えなくてもいいですよ」と宣言したのだ。
加えて「ただし、レストランのサーバー(ウエイターやウエイトレス)もエッセンシャルワーカーだから、彼らにチップだけは払ってくださいね」と、同時にレストランのサーバー従事者達への支援もアピールしている。
【ＮＹブロードウエイ、5月に医療従事者に支援していた】
ニューヨークがコロナ禍パンデミックの感染拡大が広がっていた5月頃、ブロードウエイの俳優たちは、マンハッタンのベルビュー病院(（NYC Health and Hospitals / Bellevue）の最前線で働く医療従事者達に食事を提供する活動を行っていた。
これは、トニー賞も受賞したセリア・キーナンボルジャーさん、元共演者のギデオン・グリックさん、作家のビクトリア・マイヤーズさんらが立ち上げた、仮想の食事列車「#BroadwayFeedsBellevue（ブロードウェイ・フィード・ベルビュー）」と銘打ったキャンペーンで、劇場や演劇界からの寄付を基に地元のレストランへ食事を注文し、医療従事者らに提供するというもの。
このキャンペーンでは、一般の人たちも医療従事者へ食事支援ができるオンライン募金フォームを設置。１５０ドルからスポンサーになることが可能で（寄付はそれ以下の金額でも可能で）、医療従事者はもちろん、パンデミックで影響を受けたレストランへの支援も同時にできた。
（NYbiz news: 2020/5/1）
https://www.mealtrain.com/trains/7yw221
このＮＹ劇場関係者によるキャンペーンで、医療従事者もレストランオーナーも5月以降のもっとも厳しいコロナ禍のニューヨークの波を乗り切ることができた人が多かったという。
10月に入り、前述のように来年6月まで全公演が中止となったNYブロードウエイ劇場関係者が、さらに失業のまま瀕死の状態に陥っていく中、今度は、近隣のレストランオーナー達が、劇場関係者に無料で食事の提供に乗り出したというわけである。
5月に劇場関係者たちが、レストランと医療従事者に支援キャンペーンを実施したことで、今度は、彼らが劇場関係者たちを支援バックするというNYでのサステナブルなサプライチェーンに繋がった。
【ＮＹの劇場と俳優ダンサー達の成功が、同時にレストランの成功だ】
今回、劇場関係者への支援への名乗りを上げたフレンチのマルセイユレストラン（Marseille） と イタリアンのニッツアレストラン（Nizza）のオーナが、「今まで景気の良い時に劇場に稼がせて貰ったお礼だ、劇場と俳優やダンサー達の成功が、同時に我々レストランの成功でもある」と明言し、今回の支援の輪が広がった。
"Your success has been our success," the restaurants told actors.
（Business Insider）
この無料の食事提供は、劇場関係者のみ対象であり、時間帯は午後９ＰＭから劇場の身分証明書を持っている人に適用されるが、一般ニューヨーカーもこちらのレストランで食事をすることが可能である。ぜひレストラン営業への支援の一環として立ち寄ってみてはどうだろう。
【ＮＹでサステナブルな連携支援の輪が広がる】
コロナ禍の中のニューヨークで、協力しあうレストランオーナーと劇場関係者および医療従事者たち、その相互連携プレイが 今後のサステナブルなＮＹ市の再生を目指す動きとして注目され始めている。
そしてこの６カ月以上のコロナ禍パンデミックで、まだ昨今もブロードウエイ劇場の全公演中止に伴い閉店するレストランも続出するなか、ニューヨークではサステナブルな連携支援の輪が確実に広がりを見せているといえる。
そういう意味において、持続可能なビジネスのサプライチェーンの再構築への動きが活発になってきている。この動きが、今後「SDGs17項目が目指す本来の主旨でもある 「No one will be behind left & Well-being」≒誰も取り残さない社会の再形成 と 1人1人がよりよく生きる」意味とその目指すゴールに繋がる切っ掛けとなるのではないだろうか。
来年６月のＮＹブロードウエイ劇場の再開にむけて、各業界によるＳＤＧs連携の支援の輪がさらに拡大し繋がっていくことを期待したい。
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【SDGs NY】Vol. 18
（2020/10/27) サステナビジネスNYから見た所感
Hiroko Furuichi
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執筆：古市裕子 (本文は個人の見解)
NY Marketing Business Action, Inc 代表取締役
US JAPAN Career Network
日米キャリアコンサルタント・厚労省国家資格
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国連フォーラム幹事・所属
SDGs NY(持続可能な)×次世代×事業再生・企業存在価値
(略歴)
NY市立大学大学院・政治経済学国際関係論修士課程卒。
1998年～2015年：ジェトロ・ニューヨーク(経済産業省貿易保険部NY)。
(⁂現在の NEXI 日本貿易保険)。 中南米各国カントリーリスク及び企業信用リスク調査に従事。当時「貿易保険」誌や「通商弘報」(METI刊行物)・「New American Policy」ジェトロ配信等にリスク分析レポを寄稿。
2015年独立起業。国連提唱SDGs×企業価値×キャリア支援の観点から、多数
日系企業のＮＹビジネス進出支援や市場調査、またキャリアコンサルタントとして次世代への日米キャリア支援も手掛ける。
オフィシャルサイト：https://ny-mba.com
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