答えがないから面白い。治療用アプリの普及へ、製薬企業でのマーケティング経験を活かした挑戦
佐野さんは、事業開発部でマーケティング・アライアンス担当として活動しています。製薬企業、医療機器企業を経てサスメドに入社した、医療分野一筋の方です。サスメドにとって初めての治療用アプリの上市準備は、現在佳境を迎えています。今回は佐野さんに、製薬企業からスタートアップに転職した背景と、サスメドでマーケティングに携わることの面白さを伺いました。
プロフィール
革新的な医療系スタートアップで挑戦したかった
── サスメドに入社したきっかけを教えてください。
前職時代からサスメドのことは知っていました。グローバル本社でヘルスケア部門を担当しているボードメンバーの方々が来日した際、国内の医療分野において、革新的な取り組みを行っている企業やアカデミアを訪問するツアーが企画されました。そのうちの1社にサスメドが含まれていて、そのツアーを私がアテンドすることとなり、サスメドと何度か直接やりとりもしました。
アプリで治療するという新しい考え方に驚かされたのと同時に、治療用アプリがどのように医療現場に浸透し、患者さんの手元に届くのだろうと関心をもったことをよく覚えています。
その後、医療系のスタートアップに絞って転職活動をしていたところ、エージェントからサスメドを紹介されました。以前から知っていたこともあって大変興味を抱き、他社は一切受けず、もしご縁がなかったら前職に留まるつもりで選考を受けました。無事にご縁をいただき、今に至ります。
── そもそもなぜ医療系スタートアップを志望したのでしょうか?
単刀直入に言うと、「医療業界で新しいことにチャレンジしたい」と思ったのが理由です。
製薬企業でマーケティングを担当していたときに、医療系スタートアップへの転職を考え始めたのですが、当時、製薬企業のビジネスやマーケティングは、規制やルールがどんどん厳しくなっていました。製薬企業として、そして、個人としてやれることがすごく限られてきていたんです。いつしか、毎年同じようなことを繰り返している自分がいることに気づきました。
同じようなことであっても、繰り返すことで専門性を高め、精度を高めるという考え方もあると思います。「厳しい環境でも新しいことに挑戦し、現状を打破するようなチャレンジをするのがマーケターだ」とアドバイスをいただくこともありました。
しかし、くすぶった気持ちを抱えていた私には、もう少し荒療治が必要だと思い、製薬業界を離れて医療業界に貢献するという道を選びました。そして、前職にお世話になることになったのですが、製薬業界から医療機器業界にフィールドを変えたことで、さらに新しいチャレンジをしたいという思いが生まれ、革新的な取り組みをしているサスメドに入社しました。
── スタートアップに入社してみて、いかがですか?
想像していたスタートアップとは、いい意味で異なるという印象です。サスメドを一言で表現するならば、「地に足が着いた会社」でしょうか。
精神科の医師でもある代表の上野さんを筆頭に、メンバーのキャラクターとしては落ち着いた方が多いです。瞬発力重視で思いついたアイデアをどんどん出して実行していくというよりは、一呼吸置いて会話をするなど、思慮深い方ばかりだと感じています。スタートアップ=イケイケな雰囲気という勝手な印象があったのですが、自分のカラーとも合う会社でホッとしました。
── 佐野さんは現在、どのような業務を担当されていますか?
マーケティングとアライアンスの両軸で活動しています。一般的な製薬企業はマーケティングとアライアンスが別部門で存在していますが、その両方を足して割ったようなイメージです。
サスメドは治療用アプリの開発を行なっていて、直近は不眠障害の治療用アプリの上市に向けて動いているところです。自社で販売するのではなく、販売を担う製薬企業とパートナーシップを結んでいるため、現在は主に製薬企業とのアライアンスマネジメントやプロジェクトマネジメントを担当しています。そのほかにも、治療用アプリのシーズ開拓やアカデミアとの共同研究、医療データ分析の営業戦略立案・実行など、幅広く任せていただいております。
── 製薬企業に勤めた経験がお有りとのことですが、当時の経験が生きていると感じる瞬間はありますか?
販売パートナーとなる製薬企業が上市に向けてどのように動いていくのか、イメージしやすいというのがあります。例えば、マーケティングの戦略・戦術の建て方や、プロモーションコードを踏まえたプロモーション資材の作成など、基本的なフレームワークや、どんな準備が必要になるのかなど、当時の知識や経験をフル活用できています。
── 知識が必要となると、製薬企業での勤務経験は必須なポジションでしょうか?
そうですね。製薬企業のコマーシャル部門の方と話をすることも多いので、製薬企業でマーケティングや販売を担当される方がどんな考え方、動き方をしているのか、ある程度知っている必要があると思います。
行動指針にもある「社会的意義」を意識
── 入社後、大変だと感じたことはありますか?
サスメドは製薬企業と販売のパートナーシップを結んでいますが、伝統的な製薬企業とスタートアップでは企業規模やカルチャーが異なるので、足並みを揃えて、同じ方向に進む難しさは感じますね。
例えば、リスクの捉え方や意思決定のスピードが違うので、思うように進められないこともあります。しかしながら、サスメドの社員だからといって、サスメド側にだけ立って、一方的にこちらの意思だけを伝えることになってしまうと、事態が膠着することにもなりかねません。そのため、製薬企業の状況や考え方を踏まえたコミュニケーションを大事にしています。
また、システム開発の知識や視点が求められるところも、大変な部分かもしれません。
── どういったことでしょうか?
医薬品の開発といえば、治験を行い、実際に患者さんに投与した結果、有効性、安全性を評価するという「臨床開発」の視点が中心になっていると思います。一方で治療用アプリは製品が“アプリ”なので、そこにシステム開発の視点が加わってきます。臨床開発とシステム開発の2つの側面をみながらプロジェクトを進めることが必要です。
私自身、製薬企業で長く勤務してきたこともあり、臨床開発の内容は多少分かっているつもりではありますが、システム開発についてはキャッチアップが必要でした。日頃から臨床開発の方々、システム開発の方々とコミュニケーションを図り、自分の言葉として腹落ちできるように理解を深めていくことが大事だと思っています。
── サスメドに入社して得た学びはありますか?
「常に社会的意義を考える」です。サスメドに入社する前から、患者さんのために何ができるのかは自身に問いかけてきたつもりですが、サスメド入社後は、自分がやろうとしていることが持続可能な医療につながるのか、社会的な意義があるのかなど、さらに大きな視点、意識を持てるようになりました。
サスメドには行動指針があって、「常に社会的意義を考える」はそのうちの一つなんです。行動指針が公開されたことで、自分たちが何を大事にすべきなのか、あらためて言語化できたと感じます。
自分のやっている仕事が、社会にとってどんな影響があるのかを考えないと、手段が目的になってしまう可能性があると思います。サスメド全体に行動指針が浸透しているため、「それはサスメドがやるべきなのか?」「今やるべきなのか?」と、皆さん広い視点で議論しています。
── 佐野さんにとっての「やりがい」を教えてください。
睡眠障害の患者さんや、睡眠障害に携わっている医療従事者の方々に新しい選択肢を提供できる、というのは大きなやりがいですね。現在、睡眠障害の治療法として、ほとんどの場合は睡眠薬が用いられます。睡眠薬は良い点もありますが、特有の問題点も多く指摘されているので、薬ではない治療選択肢を選ぶことができるのであればそれに越したことはないと考えています。
治療用アプリによって、エビデンスのある非薬物療法を広く用いることができるようになれば、患者さんにとってメリットが大きいと思いますし、依存性といった睡眠薬特有の課題の解決にも繋がっていきます。社会課題の解決に繋がると思うと、やりがいのある仕事だなと感じます。
マーケティング手法4Pすべてに携われる、面白い仕事
── 佐野さんが思う、「サスメドに合う人」はどんな人でしょうか?
一つ目は、言うまでもないかもしれませんが、「持続可能な医療を実現するために、医療に貢献したい、医療を変えたいと思っている人」です。医療の課題を解決したいとか、医療に対して何かしらの貢献がしたいという思いは、サスメドで働く上では必須だと思いますね。
二つ目は、「何をすべきか自分で考え、行動できるようなセルフスターター型の人」です。仕事が与えられるというよりは、自分で必要だと考えて仕事を作っていかないと、「何もやることがない」となる可能性もゼロではありません。与えられたことをやるのではなく、自らアイデアを出して率先して動いていける人が合うのではないかと思います。
最後の三つ目は、「プロ意識を持ち、周りのメンバーもプロとして尊重できる人」です。私の場合、医療機関を対象としたマーケティングや販売という領域での知識や経験、スキルを発揮することを求められていると自覚しています。わからないことや初めてのこともたくさんありますが、過去の知識や経験を活かして、方向性を自分が決めて、物事を進めていくくらいの意識を持つようにしています。
ちょっとおこがましいですが、「自分で決めるんだ」くらいのプロ意識で進めていくのが重要だと思います。とはいえ、独りよがりになるのではなく、周囲の人たちを尊敬し、プロとして尊重するマインドも持ち、チームとして取り組んでいることは忘れてはならないとも思っています。
── 今サスメドに入社したら、どんな面白さがあると思われますか?
治療用アプリは新しい概念なので、どう届けるべきなのか、世の中にまだ答えがありません。例えば、医薬品の場合は卸を介して製品を流通させ、MRが情報を届けるというフローが決まっていて、その方法に疑問を持つことはあまりないかもしれません。しかし治療用アプリは、どのように流通させていくのか、マーケティング戦略から練る必要があります。既に正解パターンがある医薬品と比較して、世の中にない「正解」を作っていく仕事なので、とても面白いと感じていますね。
一般的に、マーケティングには4Pと呼ばれる有名なフレームワークがあって、「Product(製品)」、「Price(価格)」、「Promotion(プロモーション)」、「Place(流通)」の4つが存在します。医薬品はとても規制が厳格な産業なので、製薬企業のマーケティングは、実は4Pの中のプロモーションに特化していると個人的には考えています。それ以外は他の専門部署であったり、法規制や当局の決定で決められているからです。
一方で、治療用アプリのマーケティングを考える上では、4Pすべてに携わりながら、マーケティング担当として広がりのある仕事ができると思います。例えば、医療用医薬品だと医療機関や薬局への納入価は医薬品の卸が決めていますが、治療用アプリは取りうる流通方法によって、その価格を決めることもできると考えます。
もし、過去の自分と同じようにくすぶっている方がいたら、「サスメドでチャレンジする道もある」と伝えたいですね。