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クロード・モネ 《積みわら》の連作 〜 アートの聖地巡礼(米国)

米国のアートの聖地のひとつ、シカゴ美術研究所で「もう一度みたい作品」の中で、クロード・モネの名品を紹介している。まだあるのかと思われるかもしれないのだが、モネ以外の名品も、まだまだあるのだ。

実際、シカゴ美術研究所が所蔵しているモネの作品のレベルの高さに今更ながら目を見張る(*1)。というわけで、今日は、クロード・モネの《積みわら》の連作を見ていこう。

一般的に「モネ → ジヴェルニー」となると、睡蓮を連想する。実は、モネがジヴェルニーに定住したのが1883年で、彼が《睡蓮》のためのアトリエを新設したのが1914年。意外なことに、1880年代のモネの作品は、旅先での景色が描いたものが多い。

ジヴェルニーの風景を本格的に描き始めるようになるのは、1890年に入ってからとなる。その頃の作品が、前回紹介した《ポピー畑》。そして、この頃から、モネは、様々な連作を描くようになっていく。

それまでも、モネは、同じ題材で複数の作品を制作する傾向はあった(例:サン=ラザール駅など)。しかし、ジヴェルニーの豊かな自然の風景を見ながら、モネは、「時の移ろいと共に変化する光と色彩」に惹かれているような連作の作品を描き始める。

まず、モネは、前述のジヴェルニーの《ポピー畑》を描いた頃から、自分のファームハウスの前にあった積みわらを描き始めた。それらが、1890年から1891年の間に制作された《積みわら》の連作だ。

実は、このモネの《積みわら》の連作を世界で最も多く所蔵しているのが、シカゴ美術研究所なのだ。その数、6点(全作品が展示されているかどうか2020年11月26日現在未確認)。

これらの6点の制作された順番は、手元の資料(シカゴ美術研究所公式サイトも含め)では、定かでないが、モネの作品の題名から「時の移ろい」を感じていきながら紹介する(*2)。

まずは、下記の二品の作品。どちらも季節は、異なる。春、夏、秋、冬。これらの、どのあたりの2つの季節を描いているか想像してみてほしい。

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答えは、夏と秋。これらの題名(当方の翻訳)は、上が《積みわら、夏の終わり》(1890/1891)、下が《積みわら、秋の日の終わり》(*3)。あなたの予想は、当たっただろうか。その理由はなぜか書き留めておくと、面白いと思う。

次に「秋の日の終わり」の次は、「これから冬なのかあ」ということで、同じくモネの《積み藁》(1890/1891)の4つの連作を続けてみてみよう(括弧内の数字は、シカゴ美術研究所のリファレンス番号)。

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《積みわら(雪の効果、曇り)》(1933.1155)

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《積みわら》(1983.29 )

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《積みわら(日の出、雪の効果)》(1922.431 )

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《積みわら(雪解け、日の出)》(1983.166)

順番は、当方が勝手に考えてみた。テーマは、「積みわら 〜 冬から春へ」というところか。正しいかどうか、モネのご意見を聞いてみたいところだけれども。

さて、モネは、この《積みわら》の連作を完成した後、1891年5月、それらのうち15点を、パリの画商ポール・デュラン=リュエルのギャラリーに出展する。その結果は、フランス美術史上、記録的な大評判となり、この頃から、モネは、様々な題材の連作を精力的に制作していくことになっていく。

つまり、モネの人生の中でも、重要なターニングポイントを示す作品が、これらの《積みわら》のシリーズともいえる。そう考えると、シカゴ美術研究所がこれらの6点を所蔵している事を自慢したいのもわかるかも。なんて思いながら、もう一度みてみたい。


NOTE:
*1.余談だが、英国のアート業界で、誰もが羨ましがるようなポストについていた印象派の専門家が、シカゴ美術研究所のポストの方をあたりまえのように選んだことを目のあたりにしたことがある。どうも、シカゴ美術研究所は、「研究者の印象派界隈」でも聖地のようだ。
*2.シカゴ美術研究所所蔵、クロード・モネ、《積みわら》(1890/1891)の連作の参考資料及び画像は、シカゴ美術研究所の以下の公式サイトより引用。同作品は、クリエイティブ・コモンズ・ゼロ(CC0)の作品。


追記(2020/11/26、画像の順番を一部修正しました。)