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ギュスターヴ・カイユボット 《パリの通り、雨の日》 〜 アートの聖地巡礼(米国)

前回、ジョルジュ・スーラの《グランド・ジャット島の日曜日の午後》をふと思い出したので、書いた記事がこちら。

8月の下旬から「アートの聖地巡礼」というテーマで、思いつくままに「もう一度みたい作品」があるアートの聖地(イタリア、ドイツなど)をnoteで紹介してきた。

このまま、ヨーロッパの記憶の旅を続けようかと思ったけれども、いろいろと思うこともあり、ちょっと気分転換をしてみよう。

というわけで、シカゴ美術研究所(シカゴ美術館)の所蔵作品で「もう一度みたい作品」をいろいろと思い出したので、これから少しずつ紹介していきたいと思う。

その名の通り、米国・シカゴの中心街にありながら、ミシガン湖の畔に位置するシカゴ美術研究所は、メトロポリタン美術館ほど、知られていないかもしれないけれども「アートの聖地」にふさわしい美術館。

正直、知らないともったいないあと思う名品が数多く所蔵されている。もちろん「え、あれもあるの?」というレベルの作品もある(*1)。それらは、これからのお楽しみ。

さてと。

前回の記事では、ふれなかったけれども、ジョルジュ・スーラの《グランド・ジャット島の日曜日の午後》は、シカゴ美術研究所の中でも、特大サイズの作品だ。公式サイトによれば、207.5 × 308.1 cm(近づけば、例の無数の点が肉眼でありありと見える)。

もう一作品、同美術研究所で有名な大型の作品が、フランス印象派の画家として知られているギュスターヴ・カイユボット(1848−1894)の《パリの通り、雨の日(原題:Rue de Paris, temps de pluie)》(1877)。

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その大きさは、212.2 × 276.2 cm。《グランド・ジャット島の日曜日の午後》に匹敵する大きな作品だ

カイユボットいえば、記憶が正しければ、2014年に国立新美術館で開催された「オルセー美術館展 印象派の誕生 ―描くことの自由―」(2014年7月9日~10月20日)で、カイユボットの《床削り》(1875年)が展示されていたはずだ(*2)。こちらの作品は、パリの日常を描いた印象派というよりは、労働者の働く姿に注目した強烈なリアリズムを表現している(*3)。

今回紹介する、カイユボットの《パリの通り、雨の日》(1877)は、19世紀後半のパリの風景を描いている。

ジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン(1809- 1891)による改造計画で見違えるようになったパリの街の変化をカイユボットは体験している。《パリの通り、雨の日》に描かれている通りも、その1つだろう(*4)。

実は、画面手前にみえる紳士&淑女は、等身大で描かれている。彼らは、最新流行のファッションを身にまとい、パリの街を歩きながら、ふと何かをみているようだ。紳士が持つ傘さえも粋にみえる。

が、気がつくと他の人々も同じ傘を持ち歩いている。すると、人々が持つ傘の色と、背景に描かれている建物の部分(窓枠等)の色が、ほぼ同色で統一されていることに気付く。カイユボット、何気に計算しているんだな。

でも、画面の中で、最も印象的なのは、雨にぬれた石畳の表現かな。《床削り》の床もそうだけれども、このあたりの表現が他の印象派の画家達と異なる、カイユボットらしいところだと思う。

《パリの通り、雨の日》で描かれている場所は、パリのサン=ラザール駅の近く。そう、あのクロード・モネの《サン=ラザール駅》(オルセー美術館所蔵他)に描かれている駅だ(*5)。そして、どちらの作品も1877年に描かれている。

パリ生まれのブルジョアだったカイユボットは、印象派の画家達にとって、仲間のひとりであり、パトロンでもあり、自分達の作品の購入者でもあった。もちろん、モネ、そしてルノワール達も世話になった。カイユボットのおかげで、印象派の画家達の名品が存在するのだと思う。

そんなカイユボットの代表作《パリの通り、雨の日》は、シカゴ美術研究所の中でも忘れられない名品のひとつ。


NOTE:
*1.例えば、20世紀米国人アーティスト、エドワード・ホッパー(1882-1967)の現代アートの伝説的な作品《ナイトホークス》(1942)。シカゴ美術研究所の以下の公式サイトをご参考までに。

*2.「オルセー美術館展 印象派の誕生 ―描くことの自由―」については、国立新美術館の以下の公式サイトをご参考までに。

*3.カイユボット、《床削り》の画像は、オルセー美術館の以下の公式サイトをご参考までに。

*4.ギュスターヴ・カイユボット、《パリの通り、雨の日》(シカゴ美術研究所所蔵)は、クリエイティブ・コモンズ・ゼロの作品。画像(見出し画像含む)、作品情報、作品解説は、シカゴ美術研究所の以下の公式サイトより引用。

*5.オルセー美術館所蔵のクロード・モネ、《サン=ラザール駅》は、オルセー美術館の以下の公式サイトをご参考までに。