説明してもニーズが理解されない理由

先日「コトラーのマーケティング入門(Marketing: An Introduction 14版)」を購入しました。

X上で言及している通り、私はコトラーが嫌いなので批判しながら楽しく読ませていただいております。

それはそうと、この本を手に取った理由が「ニーズ(Needs)/ウォンツ/デマンズ」についての理解を深めるためです。※原文では「デマンズ」は「需要」と訳されてますが、わかりにくくなるので「デマンズ」としてます。

さらにその奥の動機を掘り下げると、どうにも、

  • 自分では割と自覚している市場ニーズを他者が理解してくれない

  • ニーズについて説明してもクライアントがどうにも腑に落ちていない

  • ニーズを理屈として理解していても実感として伴っていない

  • 上記のような理由により最適なマーケティング施策が遂行できない

という状態が生じているような気がしてならない事案があまりに多すぎるからです。

要は「ニーズを言葉や理論で知ってはいるものの、実態や具体としては理解していない」人が多いのでは?という仮説が思い浮かんでくるのです。

そこで「ニーズの構造」ともいうべき概念を、用語で定義したり、図解で示すためにはどうしたものか…と思案した結果、だいぶ解像度が上がってきたので、今回は「ニーズが理解されない理由」というテーマで持論をお伝えしていきます。

自分がわからないニーズは「存在しないも同義」

シンプルに結論だけ言っちゃうと、多くの人にとって自分がわからないニーズは存在しないも同義…というのが、たどり着いた結論(≒仮説)です。

たとえば、同じマーケティングをやっている立場の人間に私が「認知科学は意思決定に影響を及ぼすので、マーケティング力が上がるよ」と言ってもまったく理解されずに「??」と変人扱いされます。

これはおそらく”認知科学””意思決定に影響を及ぼす”のワードだけで”自身の仕事に関係があり有用である”瞬時に理解できるほどの経験や課題感がないわかりやすい具体例の説明がないからだと想像できます。

要は、しょせん人は「自分に知ることしか知らない」ので「ニーズなんて知りようがない」という身も蓋もない話になるのです。

なので「AIが普及したことで、今後はセンスメイキングであったり、企業が自社の価値観を伝えていく本質的なブランディングが顕在ニーズになるよ」と言っても、大半の人は「???」でしょう。

世で言われる「ニーズ」は既知のものだけ受け入れられる

ここまで話したことは、冒頭で説明した「ニーズ/ウォンツ/デマンズ」についてスプレッドシートで細分化してた際に「既知/未知」というイシューを設定した際に閃いたことです。

おそらく、既知と未知のものが分別できなかったり、一般的な意味で言われる「ニーズ」を「ニーズ/ウォンツ/デマンズ」と分解できなかったり、ただ単に自分が知らないだけのものをすべて「インサイト」と呼ぶような人は、下記のように認識になってるのではないかなーと思います。

で、コトラーが「コトラーのマーケティング入門(Marketing: An Introduction 14版)」の冒頭でニーズ/ウォンツ/デマンズの話をしてるのも、おそらく「ニーズやウォンツとは何なのか?」を感覚的に伝えるため…という意図があるように受け取れます。

逆に私としては「嫌々、そのニーズ/ウォンツ/デマンズの定義だと雑すぎて使えないくない?」とコトラー嫌いがさらに加速しているため、こうしてスプレッドシートで独自のフレームワークとして実用的に落とし込んでる次第です。

で、ニーズ/ウォンツについてそこそこ解像度が高い人も、おそらく多くの人が下記のような状態なのではないかなーと予想。

要は「市場に広く浸透して知れ渡っていたり、自分自身が経験したことは”既知”として自覚できるけど、そうでない”未知”を認識することはできない」ってわけです。

で、これを他者に「なぜわからないことがわからない・想像で補えないかわからない」と愚痴ってると、ことごとく「それはあなたが特殊なだけです」と言われてChatGPTと壁打ちし続けた結果「やっぱり自分が特殊なだけかも…」と諦めたので、”マーケティングの概念を平易で具体的に説明している”コトラー様の本を用いて解説しているという経緯です。

未知を知覚するのは超高等スキル!?

というわけで、よく言われる「日本でスティーブ・ジョブズが生まれない理由」とやら「イノベーションが起きない理由」の真相について、お話しますね。

未知をできない人があまりに多いから。

下記の自作フレームワーク(未完成品)を見れば、これもおおよそ説明できるんじゃないかなーと思ってます。

本来的には、ここで提唱している「未知を知覚する」という工程こそが、マーケティングリサーチやユーザーインタビューを行い、ニーズやインサイトを発見していくための意義なんだと思います。

ただ前述のように「既知しか理解できない人」が大半なので、ニーズもインサイトもマーケティングリサーチもすべて矮小化されて「既知しか理解できない人向けのどこかで見たことあるマーケティング(既にウォンツがコモディティ化している市場でのマーケティング)」ばかりが「これがマーケティングだ!」ともてはやされるという構図なんだと思います。

なお、下記の記事に書いてる通り、比較的「イノベーション起こしてるIT会社の最先端です」みたいな国内IT企業「楽天」「Softbank」も、実際には「既存市場をプライシングの差でどうにかした」という評価だけで見れば「そんなに革新的じゃないよねー」と見方もできます。

まとめ:コトラーすらみんな理解してないんじゃ?

というわけで、コトラーのマーケティング本で最初に出てくる「ニーズ/ウォンツ/デマンズですら大半のマーケターが使いこなせてないんじゃ…?」という気づきが得られたので、課題提起してみようかと思いました。

また、私自身、なんとなく感覚としては理解していても他者に伝達するために「コトラーみたいなことやらないとならないのか…」と気が遠くなっているので、自戒も込めて執筆。

最後に、同書籍からウォンツについての引用文にて、締めくくり。

製品にとらわれすぎるあまり既存のウォンツしか意識せず、その背後にあるニーズを見落としてしまう。製品は顧客の抱える問題を解決するための道具にすぎないというのに、そのことを忘れてしまうのだ。

顧客のニーズは変わらないが、ウォンツは新たな別製品に変わるのである。

自社の製品やサービスの属性にとどまらず、それ以上に視野を広げるのが賢いマーケターといえる。




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