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本気ならアシックス / 令和もよろしくアシックス / モーエンもよろしくアシックス。
2021.03.30(Tue) 12:30 Coming Soon#TheSpeedIsYours#SomethingFastFromASICS#ASICSRunning pic.twitter.com/5o5AmUF5V0
— ASICS Running JP (@ASICSRunningJP) March 23, 2021
2021年3月30日にアシックスが新しいレーシングシューズの発表を行うことが予定されている。それを前にした3月23日に↑の予告動画がアシックスの公式SNS(日本)で公開された。
現在、日本のエリート〜サブエリート長距離選手はロードレースにおいて90%前後がナイキのシューズを使用している現状である。
女子は東京五輪マラソン日本代表に内定している前田穂南(天満屋)、男子はびわ湖毎日マラソンで8年ぶりの自己新となる2:07:27を出した川内優輝がアシックスの契約選手である。
アシックスは日本の企業であるが、この2人の他にパッと名前が挙がる長距離の契約選手(広告で使用される"金銭"が発生する選手)がいないのが現状である(トヨタ自動車の大石港与、太田智樹、安川電機の北島寿典、黒崎播磨の田村友佑、女子実業団選手数名などもアシックスを使用しているが)。
一方で、アシックスの海外の長距離契約選手はとても多い。その点が長距離用の厚底カーボンシューズの激しい開発競争において、同じ日本企業のミズノとアシックスとで明確に違う点であると指摘しておきたい。
ナイキ→アシックスに!ソンドレ・モーエンとジュリアン・ワンダース
2021年3月23日、アシックスユーロとソンドレ・モーエン(ノルウェー)は互いの契約を結んだことをそれぞれのSNSで発表した。
モーエンといえば、2017年の福岡国際マラソンで2:05:48の当時の欧州記録で優勝した選手で、その後も2019年12月のバレンシアマラソンで2:06:16の記録を出しているが、2020年はロンドンマラソン9位(2:09:01)だった。
そして、ナイキとの契約が2020年末で切れたことが明らかになり、それから3月23日にアシックスとの契約が公式発表されるまでは、モーエンはシューズブランドとの契約が無い期間が続いていた。
また、別の記事で書いてみるが、ナイキは陸上だけでなくサッカーなど他のスポーツでも現在契約選手を大幅に減らしており、またシューズの開発にも大きく投資できていない状況である。これはナイキが経営資源の再編を行っている最中であり、陸上競技への予算配分が少なくなっていることが示唆できる。
一方で、アシックスは新たなシューズへの開発投資を行いながらも、こういった”ナイキ切り”にあった選手を救済している。そのようなことから、新たに今年からアシックスと契約している大物選手が目立つ。
その1人がモーエンと同じくケニアのイテンを拠点にしているジュリアン・ワンダース(スイス)である。彼はハーフマラソン(59:13)と10km(27:13)で欧州記録を持つ大物選手であるが、ナイキ切りの煽りを喰らった1人である。
ワンダースはかつてはNNランニングチームに所属してナイキのスポンサードを受けていたが、2021年よりアシックスの契約となった(NNランニングチームは契約選手の再編成を行っている)。
この2人の大物選手を手放した“ナイキの窮地”はいたる所に散りばめられているが、日本という市場は特殊で事情が異なるので、こういった窮地を容易に想像できないのかもしれない。
日本の陸上中長距離選手でナイキと多額の契約を結んでいるのは大迫傑ただ1人である。他の日本の陸上中長距離選手でナイキの契約選手は物品提供やその他のインセンティブがあるにしても、実業団からの会社の給料があるので、ナイキからの年間の契約料はそこまで高くないと想像ができる。
通常、日本記録やその国のトップに君臨するような陸上のプロ選手がスポーツブランドと契約を交わす場合、年間数百万円〜1千万円超(それを超える額もある)の契約になることがほとんど。
しかし、スポーツブランドにとっては日本の実業団選手と多額の契約を結ぶことは稀で、日本の市場における実業団選手の契約慣行というのは学生(物品提供のみ)も含めて非常にコスパが良い。
ナイキは何らかの理由で、モーエンやワンダースといった長距離種目における大物選手以外にも、多くの陸上トップ選手(世界大会メダリスト級多数)や、他種目でいえばサッカーの契約選手を多く手放している現状がある。
これは注目に値するが、日本ではレースで未だに90%前後の選手がナイキのシューズを履いているので、そういった事態が容易に想像できていない状況である。
そして、そんなチャンスをひしひしと狙っているのが多国籍企業のアシックスだ。
アシックスの海外アスリート一覧:男子長距離
ということで、以下にザッとアシックス契約の世界の長距離選手を並べてみる。傾向として20代後半や30台前半の契約選手が多い。
彼らが、3月30日以降にアシックス新シューズのプロモーションを続々とすることは目に見えていることだろう。
【アメリカ🇺🇸】
クレイトン・ヤング(Instagram)27歳
PB:5000m 13:31.79 / 10000m 28:18.50
2019年よりアシックス契約。BYU(ブリガムヤング大)時代に全米学生選手権男子10000m優勝。現在は大学時代から引き続きユタ州プロボが拠点。2021年3月21日に全米15kmロード選手権優勝でシニアで初の全米タイトルを獲得。
【ニュージーランド🇳🇿】
ゼーン・ロバートソン(Instagram)31歳
PB:10kmロード27:28(オセアニア記録)ハーフ59:47(オセアニア記録) / マラソン2:08:19(ニュージーランド記録)
リオ五輪ニュージーランド代表(10000m)。2018年末まではアディダス契約だったが、2019年にスポンサー無しとなり、ゴールドコーストマラソン3位で2:08:19のニュージーランド記録を樹立。その後アシックスと契約し、その後ケニアの標高3,000m超の場所に自身のトレーニングキャンプを2020年末からスタートさせた。東京五輪はマラソンでの出場を目指している。
(左がゼーン・ロバートソン。右がオーストリアの選手)
【ノルウェー🇳🇴】
ソンドレ・モーエン(Instagram)30歳
PB:10000m 27:24.78 / ハーフ59:48 / マラソン2:05:48(欧州歴代4位)
2017年福岡国際優勝(2:05:48)。計7種目(10000m、ハーフ、マラソンなど)でノルウェー記録を保持。リオ五輪にはマラソンで出場。
2020年末でナイキとの契約が終了。2021年3月よりアシックスと契約。ウェアに関してはノルウェーのDæhlie Sportswearと契約しており、アシックスとはシューズのみの契約となっている。
ノルウェーとケニアを拠点をしており、ケニアにいるときはジュリアン・ワンダースのトレーニンググループで練習を重ねている。東京五輪はマラソンでのメダル獲得を目指し、将来的にはマラソン2時間03分台を目標にしている。
【スイス🇨🇭】
ジュリアン・ワンダース(Instagram)25歳
PB:10000m 27:17.29(スイス記録)/ 10km 27:13(欧州記録) / ハーフ59:13(欧州記録)
2020年までNNランニングチームに所属しナイキ契約。2021年よりアシックス契約。東京五輪は5000m / 10000mで出場を狙う。この2年のハーフでは58分台ペースでしばしば10kmまでアタックしているが、後半に失速することが多かった。
ロードでは先頭を果敢に引っ張るなど、普段からケニアでの練習で先頭を引っ張るタフな選手。現在25歳でトラックでの記録を伸ばすことにも注力しているため、マラソンへの転向はまだまだ先の予定。
【ベルギー🇧🇪】
コーエン・ナート(Instagram)31歳
PB:ハーフ 1:01:38 / マラソン 2:07:39
2018年欧州選手権マラソン優勝でモーエンなどの強豪を撃破し、2019年よりアシックス契約。神戸のISS(アシックススポーツ工学研究所)にも数回訪問あり。2018年の欧州選手権のマラソンでの優勝経験があるので、東京五輪ではダークホース的存在に挙がるだろう。
メタレーサーが発売された時のプロモーションビデオに起用された。
【ドイツ🇩🇪】
リチャード・リンガー(Instagram)32歳
PB:5000m 13:10.94 / 10000m 27:36.52 / ハーフ 1:01:33
2013年ユニバーシアード5000m銅メダル。ドイツ選手権5000mで4連覇含む5勝(10000mは1勝)。欧州選手権 / 欧州室内選手権はそれぞれ1回ずつ銅メダル獲得。2018年欧州10000m選手権優勝。
2019年よりアシックスと契約。2019年ドーハ世界選手権に5000mで出場。2020年12月にマラソンデビュー(バレンシア / 2:10:59)。3月21日のドレスデンハーフで1:01:33の自己新。4月11日のNNミッションマラソンに出場予定で、初のサブテンを目指す。
【タイ🇹🇭】
トニー・ペイン(Instagram)32歳
PB:2:16:56(タイ記録 / 東南アジア記録)
ニュージーランド生まれのタイ人。2019年よりアシックス契約。2019年ドーハ世界選手権にマラソンで出場。
アシックスの海外アスリート一覧:女子長距離
【アメリカ🇺🇸】
サラ・ホール(Instagram)37歳
PB:ハーフ 1:08:58 / マラソン 2:20:32(全米歴代2位)
今回のプロモーション動画の冒頭部分で走っているのがサラ・ホール。
夫のライアン・ホールとともに長年アシックス契約。大学時代からプロキャリアの初期にかけてトラック中距離種目を主戦場にしていた(1500m、3000mSC)。
男子ハーフ北米記録(59:43)保持者で、北京 / ロンドン五輪マラソン全米代表の夫(ライアン)の2015年での引退を機に、夫が妻(サラ)のコーチに転向。
その後、競技種目を5000m、10000m、ハーフと伸ばしながら、2020年のロンドンマラソン2位(2:22:01)、その10週間後の12月には37歳ながらもマラソンで2:20:32の全米歴代2位の好記録をマーク。好記録を持っているものの、2020年東京五輪全米マラソン選考会では敗北し、東京五輪は10000mでの出場を狙う。
エチオピア出身の養子を4名、家族に持つ母親。エチオピアやアフリカへの支援を行う慈善団体のThe Hall Steps Foundationも運営している。
リンジー・フラナガン(Instagram)30歳
PB:ハーフ 1:09:37 / マラソン2:28:08
2017年ロンドン世界選手権マラソン全米代表。2020年よりアシックス契約。2020年東京五輪マラソン全米選考会12位。2021年全米15kmロード選手権2位。
エマ・ベイツ(Instagram)28歳
PB:ハーフ 1:09:42 / マラソン 2:25:27
2019年からアシックス契約。ボイシ州立大時代に2014年全米学生選手権女子10000m優勝(2013年3位)。2013年全米学生クロカン個人2位(2014年3位)など。2020年東京五輪マラソン全米選考会7位。
ダイアン・ヌクリ(Instagram)36歳
PB:10000m 31:28.69(ブルンジ記録) / ハーフ 1:09:12(ブルンジ記録) / マラソン 2:27:50
2017年にアメリカ国籍となったブルンジ系アメリカ人。2021年全米15kmロード選手権10位。
(真ん中がヌクリ、左がホール、右がベイツ。2020年12月のマラソンプロジェクトでのスタート前のアシックスチーム)
ディーナ・カスター(Instagram)48歳
PB:ハーフ 1:07:34 / マラソン 2:19:36(全米記録)
女子マラソン全米記録保持者。アテネ五輪マラソン銅メダル。世界選手権出場5回、五輪出場3回。一線を退いて入るもののアシックスの広告に起用される全米マラソン界のレジェンド。
マケナ・モーリー(Instagram)24歳
PB:5000m 15:26.22 / 10000m 32:28.58
コロラド大出身、2019年全米学生選手権入賞3回。2019年全米10マイルロード選手権2位、2021年全米15kmロード選手権4位
【イギリス🇬🇧】
エイリッシュ・マッコルガン(Instagram)30歳
PB:1500m 4:00.97 / 3000m 8:31.00 / 5000m 14:46.17 / 10000m 30:58.94
2017年欧州室内選手権3000m銅メダル、2018年欧州選手権5000m銀メダル。英連邦大会入賞3回。
2019年よりアシックスと契約。その前の1年間は5000m14分台の実力がありながらスポンサーが無い期間があった。2019年ドーハ世界選手権5000m10位 。そして、2021年2月20日に10000mで30:58.94をマークし、東京五輪は5000 / 10000mの2種目で出場を目指す。
長年の彼氏のマイケル・リマー(写真右:800mPB1:43.89、五輪出場3回)、そして彼女の母のリズ・マッコルガン(1988年ソウル五輪10000m銀、1991年東京世界選手権10000m金)も現在アシックスのシューズを履いている。
リズ・マッコルガンが東京世界選手権で金メダルを獲得した時に使用したシューズ。そのレースの前日に彼女は東京でアシックスと契約。
【オーストラリア🇦🇺】
リサ・ウェイトマン(Instagram)42歳
PB:ハーフ 1:08:48 / マラソン 2:25:15
マラソンで五輪3大会連続出場(2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオ)。英連邦大会マラソンで2回のメダル(2010年デリー大会銅、2018年ゴールドコースト大会銀メダル)2010年長野マラソン優勝。2020年大阪国際女子マラソン5位。東京五輪で4大会連続の五輪出場を目指す(参加標準突破済み)。
他にもアシックスの男女の海外契約選手は多くいるが、この辺りまでで。その他アシックス契約の男女短距離選手やウルトラランナーも多数いる。
海外長距離アシックス契約選手多くいるがその1人から
— Sushiman 🇯🇵 (@sushimankawarai) March 22, 2021
「アシックスは日本の会社。なぜ今日本のレースで履いてる人が今少ないんだ!?」
と。自分も逆の立場なら同じこと聞くだろう。
日本の事情を説明して納得してくれたが元々固定ファンはいるし春からアシックス履く人もいると思う、と返信した。
アシックスが外側からジワジワ固めてきている今年、新しいシューズのプロモーションが成功すれば、日本のレースでも、それ以外のランニングシーンにおいてもアシックスシューズを履く選手がもしかしたら増えるかもしれないだろう。
#アシックス のハイパースピードが届きました(海外で2020年発売)
— Sushiman 🇯🇵 (@sushimankawarai) March 24, 2021
日本では税込8,800円ぐらいでそろそろ?発売ですかね...
見るからにコスパに優れています。#ASICS がお財布に優しい新作も本気を出してきました。#本気ならアシックス#SomeThingFastFromASICS#TheSpeedIsYours#ASICSRUNNING pic.twitter.com/VTXI7sUux4
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