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ジョシュア・チェプテゲイ🇺🇬が5000m12:35.36の世界新 / ヤコブ・インゲブリクトセン🇳🇴が1500m3:28.68の欧州新などモナコDLで好記録続出

コロナ禍におけるスポーツの本格的な再開までには時間がかかったが、2020年8月14日:本来東京五輪が閉幕するはずだった日から1週間あまりの夏のある日に、陸上競技は世界陸連の本拠地:モナコの地で新たな始まりを迎えることとなった。

世界の長距離界は21世紀の新時代に突入

今季のDL開幕戦であるモナコDL(エキシビジョン大会として行われたDL2大会を除いて)の目玉は、男子5000mでのジョシュア・チェプテゲイの世界記録への挑戦だった。

182名の日本の陸上ファンによる戦前の予想はこうだ。

日本時間8/15の朝4時13分にレースが始まり、3人のペーサーが順番に2,400mまでを先導した。ペーサーが抜けてからの後半の2,600mをチェプテゲイはただ1人ながらも同じペースで走り続けることができたのだ。

そして、ケネニサ・ベケレの世界記録(12:37.35)を約2秒更新する12:35.36をマークしたチェプテゲイは嬉しそうにフィニッシュラインを越えた。

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J. チェプテゲイ:12:57

今回の男子5000mの12:35.36がどれだけ凄いかというと、世界陸連のスコアリングテーブルを参照すると10000m26:13.69、ハーフマラソン57:27の世界新記録相当である。

もともとチェプテゲイはロードでも1人で押していけるタイプのスタミナ型の選手なので、今後の10000mやハーフの世界記録更新にも期待がかかる(そもそも10000mやハーフが開催されるかどうかがポイントであるが)。

2019年に世界クロカン優勝と世界選手権10000m優勝を達成したチェプテゲイのこの5レースはとても安定している。

チェプテゲイのこの5レース
・5000m世界新 12:35.36(2020年8月)
・5kmロード世界新 12:51(2020年2月)
・10kmロード世界新 26:38(2019年12月)
・ドーハ世界選手権10000m金(2019年10月)
・DLファイナル5000m優勝(2019年8月)

【モナコDL男子5000m:フル動画】

※2,400mから単独走
1,000m 2:31.87
2,000m 5:03.77(2:31.90)
3,000m 7:35.14(2:31.37)
4,000m 10:05.46(2:30.32)
5,000m 12:35.36(2:29.90)

1. 60.70
2. 61.70
3. 60.64
4. 60.41
5. 61.25
6. 60.91 ※ペーサーは2,400mまで
7. 60.03
8. 60.10
9. 60.18
10. 60.33
11. 59.97
12. 59.64
ラスト200m30.27
ラスト3000m7:31.59

ペーサーが抜けてからの6周のほうがやや速く、ラスト2周が1番速い。

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ベケレの時と同じで後半は単独走でラスト1周もほぼ同じペース。今回はベケレの時と違って電子ペーサー(ウェーブライト)の光があったものの、後半のチェプテゲイはその光よりも前でレースを進めていた。

男子5000mの前世界記録保持者のケネニサ・ベケレは、このレース後に自身のインスタグラムでチェプテゲイへの祝福のメッセージを送った。


モナコDL:その他の種目でも好記録が続出

今回の本格的な世界の陸上大会再開の全体を通して、好記録が続出した。

【男子1500m】

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1. ティモシー・チェリヨット 🇰🇪 3:28.45 今季世界最高
2. ヤコブ・インゲブリクトセン 🇳🇴3 :28.68 欧州新!
3. ジェイク・ワイトマン 🇬🇧 3:29.47 PB 英国歴代2位!

400m 52.59 
800m 1:51.24(58.65)
1200m 2:47.64(56.40)
1500m 3:28.45(40.81)

スタートからチェリヨットのみペーサーについていく。
後続集団は1周目54、2周目57。

チェリヨットのスタートダッシュからのラストのダッシュに脱帽。世界王者の貫禄で最後抜かせないあたりが強すぎ。圧倒的。

ヤコブはまだ19歳。1500m世界記録も狙えるが彼にとって将来は恐らく5000mか10000mが1番強いだろう。

ワイトマンはクラム、コー、ファラーに続いての英国4人目のサブ3:30達成。

【男子1500m:フル動画】

にしても、1周目52で入って、
ラスト100mで再加速するとか信じられん...


【女子1000m】

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1. F. キピエゴン 🇰🇪 2:29.15 世界歴代2位、ケニア新
2. L. ミューア 🇬🇧 2:30.82 英国新
3. M. シアラ 🇮🇪 2:31.06 アイルランド新

400m 59.31
800m 1:59.66(60.35)
1000m 2:29.15(29.49)


【女子5000m】

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1. H. オビリ 🇰🇪 14:22.12 今季世界最高、大会新
2.  L. ギディ 🇪🇹 14:26.57
3. L. ウェイトマン 🇬🇧 14:35.44 英国歴代2位
4. J. ハル 🇦🇺 14:43.80 豪州新!
5. S. ロウバリー 🇺🇸 14:45.11

1000m 2:52.55
2000m 5:46.21(2:53.66)
3000m 8:41.67(2:55.46)
4000m 11:34.90(2:53.23)
5000m 14:22.12(2:47.22)
※ペーサー2200mまで
※ハッサン4000mでDNF

世界王者のオビリが貫禄の勝利。
ウェイトマンが大幅PBで英国歴代2位。
23歳のハルが豪州新。

🇬🇧 ウェイトマン 14:44.57(2019年) ドーハ世界選手権5000m7位
→ 14:35.44(2020年)

🇦🇺 ハル 15:00.32(2019年) →  14:43.80(2020年)豪州新
1500m 4:01.80(2019年ドーハ世界選手権準決勝落ち)

🇺🇸 ロウバリー 15:05.99(2019年) → 14:45.11(2020年)
※2018年7月末に第1子を出産

アメリカ・ポートランドのピート・ジュリアンのトレーニンググループは男子800mでブレイジャー優勝(1:43.15)23歳のプロ2年目ハルが豪州新、35歳のロウバリーが自己2番目の好記録。


【男子800m】

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1. ドナヴァン・ブレイジャー  🇺🇸 1:43.15 今季世界最高
2. ブライス・ホッペル 🇺🇸 1:43.23 PB
...
5人がPB!!

ホッペル(22歳)はプロ2年目の今季屋外初戦で全米歴代7位の快走!


コロナ禍のトラックレース:国内外で好記録続出?

【2020/8/14モナコDL】
世界新記録:1(男子5000m12:35.36)
エリア記録更新:3
今季世界最高記録:11
DL記録更新:2
大会記録更新:3
国内記録更新:9

凄まじい。

今季トラック初戦の選手も多かったはずなのに、2020年のトラックレースで一体何が起こっているというのだろうか?

記録ラッシュはホクレンでも見られたが、その他にもアメリカではポートランドでのBTC記録会では男女5000mでともに北米記録が出た。

今年は五輪という最大の大会を翌年に延期したが、それは何か新しいことに挑戦するチャンスでもあったのだ。

この流れは今年の今後のトラックレースでも続いていくのだろうか。


環境や文化は与えてもらうのでなく“自分たち”で作る。

今回世界記録を更新したチェプテゲイの経歴で印象的なのは、高校卒業から本格的に陸上を始めたことと、そのキッカケがロンドン五輪男子マラソンでウガンダに2回目の金メダルをもたらしたスティーブン・キプロティチの優勝のシーンを見ていたことだったという。

キプロティチはウガンダで生まれ育ったものの、ケニア側の国境に近い場所にいたこともあり、その当時からキプチョゲの拠点であるケニア・カプタガトのグローバルスポーツのトレーニングキャンプで練習をしていた。

そのようなこともあり、同じNNランニングチームのメンバーであるチェプテゲイも一時期はケニアのグローバルスポーツのトレーニングキャンプで練習をしていたが、「母国を強くしたい」という思いのもとでウガンダに帰り、高地のカプチョルワでのトレーニングキャンプの主力選手となった。

その後の彼の活躍はロードで世界記録×3(5km、10km、15km ※10kmはその後塗り替えられた)、2019年世界クロカン金メダル、DLファイナル優勝、ドーハ世界選手権10000m金メダルと凄まじい。

しかし、ウガンダ全土で400mの全天候トラックは1つしかない(キプチョゲのキャンプもトラック練習は土のトラックで行う)。

チェプテゲイのトラック練習のほとんどは、カプチョルワの学校の後ろにある不均一な卵形の1周415mの芝生の「トラック」で行われる。また、トラックの最高点と最低点の間は約2メートル高さが違う。

そして、今回のウガンダの大統領がチャーターした飛行機に乗るために、カプチョルワから首都のカンパラまで陸路で7時間、カンパラからイスタンブールへの飛行機移動、22時間のイスタンブールでの経由時の滞在、そして、モナコについたのはカプチョルワを経ってから3日後のことだった。

これは我々に何を教えてくれるか?

どんなに苦労をしても、そこに辿り着くためのプロセスに間違いがなければ、全天候型のトラックがなくても、大会開催地までの直行便がなくても、目的地までの移動に3日かかろうが、人は世界記録を出すことができる。

ジョシュア・チェプテゲイという男は、ウガンダを長距離最強の国へと導く第2歩、キプロティチに続く世界に誇るレジェンドとなったのだ。


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