東京五輪陸上1日目:女子5000m予選 / 萩谷楓 / 廣中璃梨佳 / 田中希実🇯🇵は予選通過なるか。
女子5000mは1996年アトランタ五輪で志水見千子が当時の日本新の15:09.05で4位入賞を果たした種目である。
この4位という順位は、五輪トラック種目における日本人女子の1928年以降の最高順位だった = ロードやフィールド競技を除いて、1928年のアムステルダム五輪女子800m銀メダリストの人見絹枝以来、五輪のトラック種目での日本人のメダル獲得者はいない。
快挙ともいえるアトランタ五輪の4位入賞以降の五輪4大会では、日本人選手の決勝進出がなかったが、2016年のリオ五輪では上原美幸が決勝に進出した(決勝は15位)
2004年のアテネ五輪以降はアフリカ勢の優勢が依然変わらないが、昨年に新谷仁美と廣中璃梨佳が福士加代子以来、日本人選手としては15年ぶりに14分台をマークした。
また、2019年のドーハ世界選手権で決勝に進出して14位だった田中希実も代表入り。日本代表3名(萩谷、廣中、田中)の自己記録の平均は五輪史上最高ではないだろうか。
【この記事の要点】
・アンケート投票者の76%が日本人選手のうち少なくとも1人は予選通過できると考えている
・リオ五輪以前の五輪4大会(シドニー/アテネ/北京/ロンドン)での予選通過ボーダーは15分1けた〜10秒台だったが、予選を通過した日本人選手はいなかった
・記録水準が上がっているので予選通過に14分台が必要になる可能性もある
・萩谷と廣中が出場する1組のほうが手強いメンバーが揃っている
【女子5000m予選:7月30日夜】
・1組(19時00分スタート)萩谷楓 / 廣中璃梨佳 / スタートリスト
・2組(19時26分スタート)田中希実 / スタートリスト
テレビ:生放送無し → 21時15分からNHKで録画放映
ライブ配信:gorin.jp
アトランタ五輪以降の日本人選手の五輪成績
76%の投票者が“少なくとも1人の日本人選手が予選通過できる”と考えている。
しかし、シドニー五輪からロンドン五輪にかけて、日本人選手の予選通過はゼロ。日本記録保持者の福士でさえ予選通過することができなかったことを考えると高い壁であると考えることができる。
また、リオ五輪では上原が予選通過したがその時は予選通過のボーダーが15分20秒台とそこまで速い記録ではなかった。
今年は五輪までに世界で52人の選手が14分台をマーク(日本人選手はゼロ)していることを考えると記録水準は向上しており、予選の通過ラインが14分台になる可能性も十分に考えられる。
【五輪直近5大会の日本人選手の成績】
アトランタ五輪
・志水見千子
予選:(15:23.56)予選通過
決勝:4位入賞(15:09.05)日本新
※トラック種目では1928年以来の、五輪の日本人最高順位。
・弘山晴美 予選落ち:15:50.43
・市川良子 予選落ち:15:58.90
シドニー五輪
・志水見千子 1組10着(15:48.20)予選落ち
・田中めぐみ 2組7着(15:39.83)予選落ち
・市川良子 3組7着(15:23.41)予選落ち
アテネ五輪:日本人選手の出場者無し
北京五輪
・小林祐梨子 1組7着(15:15.87)予選落ち
・福士加代子 2組10着(15:20.46)予選落ち
・赤羽有紀子 2組12着(15:38.30)予選落ち
ロンドン五輪
・福士加代子 1組8着(15:09.31)予選落ち
・新谷仁美 2組10着(15:10.20)予選落ち
・吉川美香 2組13着(15:16.77)予選落ち
リオ五輪
・上原美幸
予選:1組7着(15:23.41)予選通過
決勝:15位(15:34.97)
・尾西美咲 2組9着(15:29.17)予選落ち
・鈴木亜由子 2組12着(15:41.81)予選落ち
今回の日本人選手は3人の自己記録は以下。
・廣中:14:59.37(日本歴代3位)
・田中:15:00.01 (日本歴代4位)
・萩谷:15:05.78(日本歴代6位)
“五輪史上最強メンバー”ともいえるが、今季14分台をマークしている選手がいないのが気になるところでもある。しかし、先述した通り今季14分台を出している選手は五輪までに世界で52人。
昨年には世界記録が14:06.62に更新され、女子初の13分台も視野に入ってきているのをみると、この種目は著しく記録水準が向上している。
廣中と萩谷が出場する1組のペースは読めないが、2組はプラスで拾われる選手でも14分台で走ってくる可能性があるので、田中は2組がスローになればラスト勝負に備え、ペースが流れれば自己新を狙うレースになるかもしれない。
予選1組:5強や廣中を含めて14分台を持つ選手が11人
予選は2組行われ各組の上位5名が自動予選通過。また2組×上位5名(10名)以外で予選での記録の良い選手5名が決勝に進出する(2組5+5)
1組は
・PB 14:30切りが5人(ハッサン/テフェリ/タエ/ジェベト/シュバイツァー)
・PB 14:40切りが7人
・PB 14:50台が廣中を含めて4人(組にPB 14分台が11人)
14:30切りの記録を持つ5強の力が抜けているだけに、この組で萩谷と廣中が5着以内に入るのは非常にハードルが高い。
ペースがそこそこ流れればプラスで決勝に残る可能性はあるが、そうなった場合、5強以外にも14分台の記録を持つ選手が6人もいることを考えると夏のレースとはいえ萩谷と廣中は自己記録近くでは走りたいところだろう。
2人ともまだ二十歳と若く、記録を更新する余地があるといえる。どういったレースができるかに注目したい。
【結果】
廣中がレースの前半を引っ張り、ラスト1周の勝負には敗れたものの14分台の自己新でプラス4番目で決勝進出。萩谷は予選落ちもこちらも自己新。気象条件でベストとはいえない夏の5000mで自己新を出したことは評価できる。
1着のハッサンはラスト1周を60.2、ラスト200mを28秒でカバー。
予選2組:金メダル候補の2人が中盤からペースを上げるか
予選2組は金メダル候補のH.オビリ🇰🇪(ケニア)とG.ツェガエ🇪🇹(エチオピア)の力が抜けている。この2人が中盤からペースを上げて他を圧倒するだろう。
1組のレースを見た後にレースがスタートするので、1組がハイペースでなければトップ2以外の選手はこの組をハイペースに持ち込みたいところ。
そうなってくると、5着以内はもちろんのこと、プラスで通過する選手までもが14分台で走らなければいけない状況になるかもしれない。2019年のドーハ世界選手権で決勝に進出した田中がこの組に出場するが、ドーハの時の予選通過記録が15:04.66。
今年は記録水準が上がっていることを考えると、やはり14分台という自己記録の走りが必要となる可能性がある。
田中の懸念点は今季のシーズンベストが15:11.82という点。日本選手権こそ800mと1500mとの3種目出場でタイトな日程だったが、ホクレンディスタンスチャレンジでは終盤にペースがそこまで上がらなかった。
今季の田中は1500mで日本記録を更新し、今大会で1500m(8/2午前 / 5000m予選の3日後)にも出場する。
2種目出場ということでこの5000m予選の結果が1500mに影響するかもしれない。1500mのために5000mの終盤で諦めるような走り(1500mに向けて温存すること)はしないと思うが、5000mで自己新相当のレースをすれば当然1500m予選への疲労があることも念頭においておきたい。
この組にはアフリカ勢以外にも今季14:28.55の自己新を出しているE.マッコルガン🇬🇧(イギリス)やリオ五輪7位のK.グロブダル🇳🇴(ノルウェー)といった力のある選手が多いので、ペースがそこそこ流れたとしても後半はペースアップすることは確実だろう。
【結果】
組5番でフィニッシュしたニヨンサバがレース中にインレーンに入ったため失格に。
田中はラスト200mからのペースアップについていけず、自己新だったものの予選落ち。1500mの日本記録を更新し、スピードのある、という自信を持っていただけに、ラスト200mだけで前の6人に3-4秒も引き離されたのはショックだっただろう。
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