見出し画像

東京五輪陸上1日目:男子10000m決勝 / 相澤晃 / 伊藤達彦🇯🇵はアフリカ勢相手に善戦できるか。

男子10000mは20世紀の終わりから21世紀にかけて金メダリストの世代交代があり、H.ゲブレセラシェ🇪🇹(エチオピア)K.ベケレ🇪🇹(エチオピア)モー・ファラー🇬🇧(イギリス)の3人の選手が五輪連覇を達成した種目。

前回王者のファラーは今回の出場権を得ることができなかったので、今回の五輪では新王者が生まれることとなる。

日本では2020年の暮れの日本選手権10000mの1日だけで18人が27分台で走った。そこで27:18.75の日本新で優勝したのが、今回の代表の相澤晃。2位に入った伊藤達彦とレースの中盤から激しい競り合いを見せ、同世代の2人が五輪の切符を獲得した。

一方、10000mは世界でも今回の金メダル候補のJ.チェプテゲイ🇺🇬(ウガンダ)が世界記録を26:11.00に塗り替えるなど、記録水準の向上がめざましく、G.ラップ以来の非アフリカ系選手の26分台も最近では再び視野に入ってきた種目である。

【この記事の要点】
・アンケート投票者の80%が相澤が伊藤の順位を上回ると考えている
・日本人選手にとってアフリカ勢を相手にこの種目で入賞をするのは快挙
・最近の世界大会の10000mはペースが流れるので、どの選手にとっても中盤あたりから厳しい展開になる
・ウガンダの選手(チェプテゲイかキプリモ)がウガンダにとって2012年ロンドン五輪以来の金メダルをもたらす可能性がある

【男子10000m決勝:7月30日20時30分スタート】
テレビ:TBS系列で生放送

スクリーンショット 2021-07-30 12.05.57

スクリーンショット 2021-07-30 12.06.06

スクリーンショット 2021-07-30 12.06.13

シドニー五輪以降の日本人選手の五輪成績

1けた順位を期待する人が32%+8%=40%ほどいるが、シドニー五輪以降で五輪における日本人選手の1けた順位はない。

かつては予選があった10000mはアテネ五輪から1発決勝で開催されることとなり、その方式がやがてメジャーとなった。

シドニー五輪:予選
・高岡寿成 / 予選:1組5着(27:59.95)予選通過
・花田勝彦 / 予選:2組3着(27:45.13)PB / 予選通過

スクリーンショット 2021-07-30 17.38.52

シドニー五輪:決勝
・高岡寿成 / 7位入賞(27:40.44)PB
・花田勝彦 / 15位(28:08.11)

スクリーンショット 2021-07-30 17.43.26

アテネ五輪:決勝 ※この大会から1発決勝に
・大野龍二 / 19位(29:06.50)

スクリーンショット 2021-07-30 17.45.35

北京五輪:決勝
・竹澤健介 / 28位(28:23.28)
・松宮隆行 / 31位(28:39.77)

スクリーンショット 2021-07-30 17.47.40

ロンドン五輪:決勝
・佐藤悠基 / 22位(28:44.06)

スクリーンショット 2021-07-30 17.48.38

リオ五輪:決勝
・大迫傑 / 17位(27:51.94)
・設楽悠太 / 29位(28:55.23)
・村山紘太 / 30位(29:02.51)

スクリーンショット 2021-07-30 17.52.45

シドニー五輪以降の日本人選手の1けた順位はない。


五輪の10000m決勝は気象条件もペース変化もタフなレース

アテネ五輪以降の代表選手の結果は特徴として、夏のレースでかつペースの変化が激しいので27分台の自己記録を持って臨んでいっても南半球で涼しかったシドニー五輪の時とは違って28分台の中盤を出すのが精一杯というレースになってしまう点。

そういった意味ではリオ五輪で17位ながらもきちんと27分台にまとめた大迫は、やはり日本人選手では力が抜けていた。

ペーサーをつけて記録を狙うような好条件のレースではなく、当然選手権なのでかなりタフなレースになるのと、シドニー五輪の時のように選手権でPBを出してこそ良い順位がついてくる。

今回の国立のレースでは日本の夏の蒸し暑さがあるが、相澤と伊藤がどの集団につけて、中盤以降にどのようなレースができるかは注目である。

しかし、この2回の日本選手権10000mとは違ってペーサーはいない選手権なので、ペースがどこで落ち着いて、ペースがどこで上がるか、その時の判断1つ1つが難しい。

そういった冷静なレースができるか、という点も見所の1つである。今回は1けた順位を予想する人が少なかったが、ウガンダ、エチオピア、ケニア、そしてアメリカやカナダの選手が強いことを考えるとそれらの選手に勝って、やっと1けた順位が見えてくる。

BTCのフィッシャー、キンケイド、スコット、アーメドといった5000mも兼ねている選手が、中盤でズルズルいってしまって、5000mのために諦めてしまって途中棄権するというパターンもなくはないので、どういうレースになるか注目したい。


金メダル争いはどうなるか:五輪新王者の誕生

冒頭に述べたが前回王者のファラー が出場できなかったので、今回は五輪10000mの新王者が誕生する。

アンケートではウガンダの2人のどちらかが優勝すると考えている人が35%。チェプテゲイは5000 / 10000m世界記録更新だけでなく、2019年ドーハ世界選手権金メダルという実績があるのが頼もしい。

そのチェプテゲイさえも凌駕してしまいそうなのがJ.キプリモ。今季は5月のチェコでの10000mを涼しい顔で単独走で走りながら26:33.93の世界歴代7位の快走を見せた(そのレースはスパイクで / 今回は最新のスパイクを履くそう)

キプリモは昨年の世界ハーフも制したが、12月のバレンシアハーフで57:37の世界歴代2位の好記録で2位になった時以外は、2020年以降のレースでは負けがない。彼の安定感の高さが特徴で、レースの中盤から他を圧倒するロングスパートができれば金メダルは近いだろう。

一方のチェプテゲイは今年6月のローマDLで12:54.69の記録ながら6位に敗れており、ラスト勝負に課題を残した。しかし、彼が2019年のドーハ世界選手権で優勝した時、2017年のロンドン世界選手権で銀メダルだった時の優勝記録は26:48、26:49とどちらもペースが流れたのでスローのラスト勝負ではなかった。

ある程度のペースで流れれば自然と先頭集団に残る選手は限られてくるので、例えラスト1周のスパートを持っていたとしてもラスト1周までに先頭集団にいなければ金メダルは獲得できない。

今回もある程度のペースでレースは流れるだろうから、調子が悪くなければ彼のメダル獲得は堅いだろう。ウガンダのどちらかの選手かが金メダルを獲得すると、五輪では2012年ロンドン大会でのS.キプロティチ以来のウガンダにとっての金メダルとなる。

金メダル候補としてケニアの選手も忘れたくないところだが、今回はケニア選考会で優勝したエースのG.カムウォロルが直前の故障で欠場、代わりに選考会4位のR.キプルトが直前で代表入りした。

五輪ではケニアの男子10000mでの金メダル獲得は1968年のメキシコシティ 大会まで遡らないといけない。直近ではリオ五輪でポール・タヌイが銀メダル獲得、またシドニー大会でのポール・テルガトのフィニッシュ前の競り合いの記憶が蘇る。

今回は平均的に走力の高い3人が走るが、ラスト勝負になった時にウガンダやエチオピア勢に少し見劣りするだろう。

一方のエチオピア勢は6月の選考会で上位選手が揃って26分台で走ったが、ペース変化の多い世界大会の決勝のようなタフな展開だった。そこでラスト1周を52秒台で締め括ったのが優勝したS.バレガとドーハ世界選手権銀メダリストのY.ケジェルチャ。

やはり、ゲブレセラシェ、ベケレの頃からラスト勝負はエチオピアの選手が圧倒的な力を誇っている。しかし、2人ともに5000m以上での世界大会での金メダル獲得がないのが懸念点である。

ここでエチオピア勢の誰かが金メダルを獲得することができれば、ラストの強いエチオピア というイメージは継続されていくだろう。


BTC勢は銅メダル〜入賞争いに加われるか

アメリカのバウワーマントラッククラブからはアーメド、スコット、フィッシャー、キンケイド、タンティベイトの5人の選手が出場する。いずれの選手も良い記録を持っている。

アーメドはドーハ世界選手権の5000mで銅メダルを獲得しており、前回のリオ五輪も5000mで4位入賞したものの10000mでは32位の終わっている。とはいえ、26分台の自己記録や経験値の多さはBTCの10000mに出場する選手の中でもトップ。

彼が先頭集団でどこまで粘れるかでメダル獲得の期待がかかる。

また、レースがスローペースになった時はフィッシャーやキンケイドといった全米選手権でワンツーをした2人にも流れが向くだろう。そうなった場合、ロンドン五輪のG.ラップの銀メダル獲得、とまではならなくても、入賞といった手堅い結果を残す可能性がある。

彼らは全米選手権でもそうだったが、ペース変化の多いレースを経験しており、ラスト800mで2:00を切ることができる。日本人選手との順位争いも注目の点となるだろう。

シドニー五輪で高岡寿成が7位入賞を果たした時は、ケニア、エチオピアの選手の次に入ったが、今ではウガンダやアメリカの選手もかなり手強い。

今回の東京とは気象条件が違うとはいえ、ドーハ世界選手権では6位までが26分台だったことを考えると、スローペースにならなかった場合、多少タイムが落ちたとしても入賞争いをするには27:00-27:10あたりのタイムが求められるかもしれない。

一方で、優勝記録が27:30程度のスローになるとBTC勢にもチャンスがあるかもしれない。レース展開にも注目である。


【関連記事】




サポートをいただける方の存在はとても大きく、それがモチベーションになるので、もっと良い記事を書こうとポジティブになります。