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ジョシュア・チェプテゲイ🇺🇬が男子10000m26:11.00、レテセンベット・ギデイ🇪🇹が女子5000m14:06.62でそれぞれ世界記録を更新!

10月7日にスペインのバレンシアでNN Valencia World Record Dayが行われ、男子10000mでジョシュア・チェプテゲイ(ウガンダ)が26:11.00をマークして15年ぶりに同種目の世界記録を更新した。

また、このレースの直前に同会場で行われた女子5000mではレテセンベット・ギデイ(エチオピア)が14:06.62をマークし、12年ぶりに同種目の世界記録を更新した。

21世紀のニューノーマル:機械のようなイーブンペースで男女ともに世界新

8月のモナコDLで5000mの世界記録を更新したばかりのチェプテゲイであったが、レース前の日本の長距離ファンの予想は70%近くが世界記録更新と予想。

そして、今回の10000mのレースのペースは以下のようなペースになった。

前回のモナコでの5000mの世界記録更新に続けて、今回のレースでもチェプテゲイはペーサーが抜けてから(5000m以降に)精密機械のような正確なラップを刻んだ(1周ごとのラップは以下)。


【チェプテゲイ10000m26:11.00世界新:フル動画】

1000mごとのラップ
2:37.9 / 2:37.1 / 2:37.7 / 2:37.1 / 2:37.9(13:07.73)※ペーサー有
2:37.3 / 2:37.0 / 2:37.4 / 2:37.3 / 2:34.3(13:03.27) ※5000mから単独走
ラスト1周 61.06
ラスト3000m 7:49.0

今回のチェプテゲイのメトロノームのような正確なペースは、ベケレが世界記録を出した時とは違ってペースの上下はほとんどなく効率的であった。

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(出典:LetsRun.com

一方のベケレはラストスパートのキレはあるが、ラスト1000mまでの6000-9000mでペースを少し落としていることがわかる。


そして、このレースの前に行われた女子5000mでも、見事に世界新をマークしたギデイはチェプテゲイと同じようにほぼイーブンペース(ペーサーが抜けてからは少しペースアップ)での効率的な走りを見せた。

(右がギデイの1周ごとのラップ / 左が前WR保持者T. ディババのラップ)

女子5000m前世界記録保持者のT. ディババの従来の記録はペースの上下が激しく、14:11.15という記録には更新の余地があったといえる。

ギデイはこの4年間で12回5000mに出場しているが1度も優勝できていなかったが(どちらかというと一定のペースで押していけるが、ラストで競り負けてしまうタイプの選手)、今回は自己新を17秒更新する快走で優勝。

現在22歳のギデイは、これまでに世界クロカンのジュニアの部で2回金メダルを獲得しており、昨年の世界クロカンはシニアの部で銅メダル、ドーハ世界選手権は10000mで銅メダル。

その後11月のナイメーヘンでの15kmロードレースでは遠藤大地(帝京大)、森凪也(中央大)、蝦夷森章太(東洋大)を撃破する快走で44:20の世界最高記録をマーク。

ギデイは「長年夢見てきた5000mでの世界記録」を手にし、女子選手初の13分台も視野に入っているといえるだろう。


後半5000mは13:03.27:日本の大会の5000mでこの記録より速く走った者はいない

今回のチェプテゲイは、5000mの日本記録よりも速く5000mを通過し(13:07.73)、後半の5000mは単独走ながらも13:03.27で駆け抜けた。

この13:03.27(2:36.6/km)という後半の5000mはどれぐらい速いのだろうか?

日本の大会では5000mにおいて歴代で1度も12分台が出たことがない。


日本の大会ではD. コーメンが13:03.51で走ったのが歴代最高記録なので、今回チェプテゲイは、それとほぼ同じようなペースで後半の5000mを“1人”で走ったことになる。

日体大記録会で最終組のトップのケニア人選手が出すような13分1けたの記録でチェプテゲイは2回走ったことになり、そう考えれば規格外の記録である。

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また、今回ペーサーを務めたニコラス・キメリは3000-5000mまでを引っ張ったが、13:07で5000mを通過してからもレースを走り続け、後半の5000mは14:05でカバーして27:12.98の自己2番目の記録でフィニッシュした。


2020年は中長距離種目の世界新イヤー?

陸上競技において、2020年は男子棒高跳のA. デュプランティスが世界新を連発したが、その他で男女跳躍種目、短距離などで目立った世界記録は更新されていない(400mHのK. ワーホルムは世界新間近)。

しかし、今年は中長距離種目になると話は別である。

【2020年の中長距離種目の世界新】
男子
J. チェプテゲイ
・5km 12:51(2/14 モナコ)
・5000m 12:35.36(8/14 モナコ)
・10000m 26:11.02(10/7 バレンシア)

・10km 26:24(1/12 バレンシア R. キプルト)
・1時間走 21,330m(9/4 ブリュッセル M. ファラー )

女子
・5000m 14:06.65(10/7 バレンシア L. ギデイ)
・ハーフ 1:05:34(9/5 プラハ P. ジェプチルチル)※女子単独レース
・1時間走 18,930m(9/4 ブリュッセル S. ハッサン)

なんと、男女計8種目で世界新記録が生まれている。

【場所別】
バレンシア(10/7)
男子
10000m 26:11.00(J. チェプテゲイ)
10km 26:24(1/12 R. キプルト)
女子
5000m 14:06.62(L. ギデイ)

モナコ
5000m 12:35.36(8/14 J. チェプテゲイ)
5km 12:51(2/14 同上)

ブリュッセル(9/4)
男女1時間走
21,330m(M. ファラー )
18,930m(S. ハッサン)

プラハ(9/5)
女子ハーフ 1:05:34(P. ジェプチルチル)

今週の土曜日にはヘンゲロの大会で女子1000m、女子10000mで世界新記録が出る可能性があるが、なぜ中長距離種目だけがこれほどに多くの世界新が出るのだろうか?

しかも、男子5000mは16年ぶり、10000mは15年ぶり、女子5000mは12年ぶりの世界記録更新である。

大会が少なく、記録更新へのチャレンジがしやすい1年であった、という理由、しっかりと基礎構築ができたなど様々な要因があるが、それにしても短距離や跳躍、投擲でこれほど多くの世界記録が出ていないのは、逆になぜだろうか?

(同じように日本でも中長距離種目ではロード、トラックともに好記録が続出している)


今回10000mの世界新を出したチェプテゲイは10/17の世界ハーフで初のハーフマラソンを走る。選手権なので、記録が伸びないこともあるが、トラック2種目で世界記録を更新したチェプテゲイの初ハーフが期待される。

また、男子は12月1週目にバレンシアでハーフマラソンでの世界記録挑戦が予定されており、10km世界記録保持者のロネックス・キプルトなどが人類初のサブ58:00に挑戦する。再び、バレンシアの地で世界記録更新となるか?

ちなみに、12月1週のバレンシアではエリート選手のみのマラソンも行われるが、こちらも世界記録更新を目指せるような好メンバーが集まり、WMM並の白熱したレースが予定されている。

このレースに、ロンドンマラソンを欠場したベケレの出場が噂されている。


男子トラック長距離の史上最強の選手は誰か?

チェプテゲイは5000mで世界記録を出した、1週間後のインタビューで、

それぞれの時代には、テクノロジーの進歩とともに歩むので、それぞれの時代のベストの形があるから「それぞれの時代に活躍していた選手がそれぞれ素晴らしい」と答えている。

ゲブレセラシエの時代には最高の1足があって、ベケレの時代には最高の1足があって、チェプテゲイの時代には最高の1足や最高のテクノロジーがあるというわけだ。

そして、それそれが「素晴らしい」ということである。

とはいえ、長距離ファンであれば、あのケネニサ・ベケレの世界記録は5000mも10000mも更新されたとなると、ただごとではないだろう。

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ベケレといえば、数々の世界記録をマークしただけでなく、
・アテネ、北京五輪2連覇 (10000m)
・2003-2009世界選手権4連覇 (10000m)
・北京五輪、ベルリン世界選手権2冠 (5000m・10000m)
・世界クロカン5年連続2冠
といった世界大会でタイトルを総ナメにしてきた選手である。

一方のチェプテゲイは、5000mに関しては世界大会でのメダル獲得経験がなく、現在までにシニアの大会では世界クロカン、ドーハ世界選手権10000mの優勝という世界タイトル獲得し、世界ハーフのタイトルを今月さらに狙う。

さて、長距離ファンの話題としては、そのベケレかチェプテゲイ、それぞれの全盛期に一緒に走ることがあったとしたなら、どちらが強いのか?という問いである。

それは「男子トラック長距離の史上最強の選手は誰か?」という問にも置き換えられる。

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このどちらのアンケートもベケレが優勢であり、2種目の世界記録を失ったとはいえ、まだベケレが「トラックの皇帝」の名を保持しているといえるだろう。

今後も陸上競技においては好記録が続出するだろう。しかも、中長距離種目なら尚更であり(去年と今年の駅伝とマラソンの記録ラッシュを思い出してください...)、

それが今の陸上競技の姿である。

それぞれの時代の、それぞれ最高の選手の最高の瞬間を楽しもう


【この3年間の男女中長距離の世界新記録 / 非アフリカ系最高記録など】

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