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競技選手はスーパーシューズについて"正直に話したほうがいい"その⑤:川内優輝🇯🇵(アシックス)
(写真:2019年ゴールドコーストマラソン ©︎Sushiman Photography)
2021年4月5日の午前中に興味深いオンライン記事が公開された。
高橋尚子と川内優輝というアシックスのシューズを着用した2人の男女マラソンのスーパースターによる対談記事。
その中で川内は以下のように話している。
自己ベスト更新のうれしさ、楽しさを思い出しましたし、まだまだいけると思っています。厚底は『薄底を履いた時マイナス2分くらい』の力があるのかなと感じていますので、今までの自己ベストが2時間8分14秒だった私が仮に2分速くなれば、2時間6分14秒まではいけます。薄底の時は2時間7、8分を目指していましたが、今は2時間5、6分を目指す気持ちで練習していいんじゃないかと思っています。
周りが2年くらい履いている中で、私は厚底歴がまだ2、3カ月ですからね。年齢的にはベテランですが、厚底歴では間違いなくルーキーです。一時は遠くに離れてしまったライバルたちの背中も、また近づいてきましたよ!
レベルの高いマラソン大会での川内の近年のレースぶりといえば、中盤から苦しそうな表情を浮かべて集団から離れてしまうものの、ずるずる引き下がらずに終盤にペースを落とした選手を拾うようなスタイル。
しかし、アシックスの新厚底カーボンシューズを履いた川内は、2021年2月28日のびわ湖毎日マラソンの中盤ではそのような苦しそうな表情は見せず、8年ぶりの自己新となる2:07:27をマークした。
2時間7分27秒。
— 川内 優輝 Yuki Kawauchi (@kawauchi2019) February 28, 2021
ようやく2時間7分台を出せました!!
2時間8分37秒で走った時は23歳。
あの時からずっと「2時間7分台は出せる」
そう信じて走り続けてきました。
10年かかりましたが、ようやく目標を達成できました。#びわ湖毎日マラソン 、そしてテレビの前のみなさん、ありがとうございました!
10年間ずっと2時間7分台を目指して走り続けてきました。
— 川内 優輝 Yuki Kawauchi (@kawauchi2019) February 28, 2021
途中、捻挫して走れなくなったり、サブ10もできなくなったりして「もう無理じゃないか」と諦めそうになった時もありました。
でも絶対に諦めたくありませんでした。
プロに転向してでも必ず7分台を出さなければ人生終われないと思いました。
今は10年前違い、7分台を出しても、10位でした。
— 川内 優輝 Yuki Kawauchi (@kawauchi2019) February 28, 2021
先頭の鈴木選手は4分台で日本記録更新とのことで、次元が違うスピードだと思います。
それでも、7分台を出せたことで10年間ずっとずっとずっと想い続けてきた目標を達成できて、涙が出るほど嬉しかったですし、今日のびわ湖を私は絶対忘れません。
薄底→厚底カーボンの移行期1年間は"練習ができていれば"概ね記録が向上する
これは、今この記事を書いている私も実感していることである。
例えば、私が20代に競技をしていた時に出したハーフマラソン1:07:53(薄底)の社会人ベストは、2020年からたった9ヶ月間の練習期間で超えてしまったのだ(2021年3月の21.1km走1:07:45)。ちなみに2020年1月の21.1km走では1:16:05だった。
ここまで大きく記録を縮められた大きな要因に① 故障がなかったことと② 厚底カーボンシューズの存在の2点が挙がる。
アシックスは2020年の春に中厚底シューズのメタレーサーを発売したものの、川内はそれを大きなレースで使用することはなかった。しかし、それから1年も経たないうちに川内は薄底→厚底カーボンへの移行を済ませた。
2017年にナイキのサポートを受けていたチーム:東洋大の選手がいち早く済ませていた薄底→厚底カーボンへの移行。その移行から1年間の間は概ねどの選手も練習が継続できていれば記録は自ずとついてくる印象である。
川内も2020-2021年のアシックスの新厚底の開発段階においてその移行をする決意をしたようだ。
また、弟の川内鮮輝が厚底カーボンシューズなどの新シューズを履き始めてから(ドラゴンフライを含む)自己記録更新という結果を出す過程を見てきていたのも、兄にとっては大きかったことだろう。
https://www.facebook.com/yoshiki.kawauchi.7/posts/3812796698836576
弟の鮮輝は今後、ウルトラマラソンの世界記録(6:09:14 / 2018年風見尚)更新やサロマ優勝、IAU100km世界選手権での活躍などをを出すことを目標にしているだろうが、↑2020年にマラソンの自己記録を伸ばしており、そこで厚底カーボンシューズを着用する、という大半のランナーが行った薄底からの移行の過程を踏んだ。
そう考えると、やはり川内優輝ほどの百戦錬磨のマラソン経験のある選手がメタスピードシリーズという武器を手に入れたことによって、今後2時間05、06分台を目指すという流れは自然である。
また、びわ湖で彼の前にいた5名もの選手が2時間07分を切ったことも加えて、今後彼の練習のタイム向上や、疲労軽減、その他好メリットがメタスピードシリーズでもたらされることを考えると川内優輝は、もうサブ2:07に対してなんら壁を感じていないことだろう。
学生時代もその後も反骨精神:川内優輝こそプロランナー
若い頃に「君に何が足りないかわかるか?1度やったことを2度やって、2度やったことを3度やる。それが実業団だ。君はそれができていない」とある実業団の監督に言われて悔しく思ったことを覚えています。
— 川内 優輝 Yuki Kawauchi (@kawauchi2019) March 3, 2021
そして、今では100回やれました。
サブ10だと14回。
私を奮い立たせてくれた言葉に感謝です。 https://t.co/vTXO4SfQlH
現在、プロランナーとして活動している選手は日本ではかなり増えたが、それでも大迫傑と川内優輝は別格だろう。
日本も"プロランナー"が増えたけど結果が安定してる大迫選手、鮮やかな復活を遂げた川内選手は別格。
— Sushiman 🇯🇵 (@sushimankawarai) March 14, 2021
今や、1レースで40人もの日本人選手がサブテンを出す時代になったから、ただサブテンを持っててもそこで順位がとれなかったら淘汰されていく。
順位がとれるからこそ"プロ"というかなんというか。
今後はサブテンの回数を14回からもっと増やしていくのではないかと考えられる。
やはり、川内優輝がプロたる所以は、前人未到の領域に足を踏み入れることのできるあきらめないハートを持っているからこそではないだろうか。
シーズン初戦はTR5により、人生2度目のDQ。
— 川内 優輝 Yuki Kawauchi (@kawauchi2019) April 3, 2021
前回は2008年。
日本選手権10000mの8400m地点で松宮選手・木原選手らに周回遅れにされたことでDQになりました。
明日の5000m最終組は、色とRPの文字だけでなく、SORTIEMAGICの文字もしっかり確認して今日の分まで頑張ります。 pic.twitter.com/mr6MdesBYX
また、彼は成績が悪い時も一切言い訳をせずに諦めずに前を向いて練習を重ねてきた。結果が悪くても失格になっても正直に話す人柄の選手だ。
プロランナー3年目です。
— 川内 優輝 Yuki Kawauchi (@kawauchi2019) April 1, 2021
松宮・中本・佐々木・松村・阿久津・伊藤・山本・野口・谷川・小林・深津・園田
(敬称略)
といった国内外の大会で何度も一緒に走ってきた選手達が一気に引退してしまい寂しい想いもありますが、私はこれからが全盛期。
まだまだ今年も記録・順位共に挑戦し続けます。 pic.twitter.com/AgTCwqVUhv
同期の佐藤悠基も含めて今後に期待できる日本の30代の長距離選手の1人と言っても過言ではないだろう。
仙台ハーフが中止になったことで、彼のこの春のレースはぎふ清流ハーフが挙がるが、今後は以前のように海外レースにも果敢に挑戦していくのだろうか。
川内優輝の今後に注目である。
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