野次馬の夢

他人がぬいぐるみを選ぶ瞬間を見届けたいという欲望がある。

どんなときにぬいぐるみを欲しいと思い、どんなぬいぐるみを選ぶのか興味がある。ツイッターで「ぬいぐるみ」で検索して、ぬいぐるみが欲しいとか、このぬいぐるみが欲しいと呟いている人を発見すると買ってみた感想知りたくてフォローしてしまう。

それがその場限りで何となく言ってみただけでもそれはそれ。でもなんで欲しいと思ったのか聞いてみたい気持ちはある。こんな自分が気持ち悪いと想うから聞けないけど・・・

インテリアとして欲するもよし。好きなキャラクターだからコレクションとして収集するもよし。家族を増やす気持ちで迎えるもよし。いろんな人がいろんな理由で、必要不可欠とは言い難いふわふわした物体を求める理由を聞いてみたり、買った瞬間を眺めてみたりしたい。

これが家電やゲームではダメなのは自分でも説明できる。大抵買う目的がハッキリしてるものだから。生活に必要とか、面白そうだからとか。でもフィギュアを買うところを見るのじゃダメなのか?と言われるとうまく説明できそうもない。

多分だけど、ぬいぐるみをどこか特別視してるところがあるんだと思う。それともなければ、いい大人がぬいぐるみを好んでいるということが気恥ずかしくて仲間を探したいのだろうか?でも、小さい子供がぬいぐるみを選んでいるところを見るのもわりと好きだ。子供がぬいぐるみを選んでいる様は最初のポケモンを3匹のうちから選んでいるあの場面を思い起こさせる。

いつだったか、大好きなコウペンちゃんというキャラクターを取り扱っているお店に行ったときのこと。確かその日は連休で、わりとレジが混んでおり、列にならんで順番を待っていたときだった。

小学校低~中学年の男の子がコウペンちゃんのぬいぐるみを選んでいた。男の子が選んでいたのは新発売のシリーズで、コウペンちゃんが被り物をしており、ウサギ、カエル、クマの3種類があった。

どの子にするか選んでいたのだと思う。しばらく売場の前に立っている男の子を見て、まさしくオーキド博士からポケモンをもらうあのワンシーンじゃないかとちょっとワクワクしてしまった。男の子には申し訳ないけど、失礼なくらいガン見していた。

少しして、男の子が手に取ったのはウサギのコウペンちゃん。大事そうに両手で持ってお母さんらしき人のところへ行き、選んだコウペンちゃんを見せた後、レジ待ちの列の最後尾に並んだ。

良いものを見せてもらったと思った。男の子にしたら見世物じゃねえぞ!と怒鳴るかもしれないけど。

もしかしたら自分が思っているような大事なパートナーを選んだみたいなつもりは男の子には全くないかもしれない。男の子にとってちょっとした買い物を勝手に美化してるだけという可能性も十分ある。それでもいい。妄想が作ったフィクションだったとしても男の子の宝物が1つ増えた瞬間に立ち会えたことにほっこりした気分になった。

男の子は1人でレジの列に並んだ。おこづかいで買うのかもしれない。今すぐ男の子の後ろに並び直し、それを買うお金を出させてくれないか?と申し出たくなった。でもすぐにやめた。野暮ってもんだし、何よりそんな人がいたら気持ち悪いに決まってるから。

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