チップの雑談
本記事は、情報提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。暗号資産への投資は、価格変動のリスクなど、多大なリスクを伴います。投資の最終決定は、ご自身の判断で行ってください。
https://adventar.org/calendars/10211 夏休みの宿題を9月1日になって慌ててやる感じで、久々に焦っている。誤字脱字は多めに見ていただき、内容の勘違いは是非ご指摘してください。
Jito Labs共同創業者のbuffaluの上のツイートにあるように、ここ最近Jitoが叩き出す収益が最近活況を呈するPumpfunやRaydiumだけでなく、SolanaやEthereumをも上回る日が度々見られた。この収益とは何を指すのか、果たしてそれはSolana民にとって歓迎される話なのか、改めてJitoとは何を提供し、Solanaにどう貢献しているのか振り返りたい。このNoteにたどり着いている時点で既に相当な物好きだろうから、今回の内容は少し物足りないかと思うが、最近Solanaに興味を持った方にもっとSolanaを好きになってもらうことを目標にしてだらだら話を進めたい。
まずこの手数料とは
データ自体はDeFillamaのこちら。ちょうどbuffaluがツイートした前々日の11月20日が一旦のピークとなっていて、Feeが24時間で$15.55m。jito.wtfにある同日Tipが60,636.67 SOLとあるので、さきほどの$15.55mとはトレーダーやBotがJito-Solanaクライアントを経由してバリデーターに支払ったチップ総額を意味する。はず。つまりJito単体が1日で稼ぐ手数料ではなく、Jitoが裏で委任するバリデーターへの分配分も含めた全ての手数料(=チップ)。またこのチップはSolanaを使用するにかかるBase Fees、Priority Fees、Vote Feesとは別物である。
さすがにスタートアップで1日$15m稼ぐのはエグいがここは何が起きてもおかしくない界隈、数年後にはなきにしもあらずか。そして現在Jito Labs(Jitoの開発部隊)はこのチップの5%を取り分としているため11月20日には3,031.8 SOL、終値$236として$715,512稼いだことになる。ただまあこれは下記図を見ての通りATHでありもちろん毎日続くものではない。
そしてこの5%の取り分もJIP-8: TipRouter NCNの導入にて6%(Labsに3%、Jito DAOに2.85%、NCN ネットワーク参加者に0.15%分配)に変更を予定しているので、JTO保有者で意見のある人は積極的に議論に参加されたく。言葉に不自由があるのであればAIを使うなり私に相談してほしい。この意思決定は結構欧米風なので、意見を言わない人の意見はないものとされることは頭にいれておいてほしい。
なぜチップを払うのか
儲かるから。$100ドル儲かるディールがあれば合理的なトレーダーは$99を業者に支払って$1でも儲ける。らしい。
もしくは儲けるニュアンスではなく、オンチェーンで自分のTXが嵌め込まれるのを防ぐためにチップを払う(MEV protection)。jup.agではJito OnlyをEnableすることでこれが可能になる。詳しくはこちら。そう、ここは魑魅魍魎の世界。自分がサンドイッチして食べられてることすら大半の人は気がついていない。
そして24年の傾向としてはこのチップは通常のMEVに対してのものよりはブロックにいち早く取り込んでもらうための賄賂みたいなもので、Priority Feeの代替という位置付けらしい、buffaluが言うから間違いない。実際11月半ばにJitoに不具合が起きて、Jitoのバンドルが停止気味だった際にはPriority Feeの平均値が跳ね上がったことからもそういえる。
フィーが高いのは果たして良いことなのか
「取引事業者が利益を上げているということは、個人投資家が不利益を被っているのではないか?と直感的には感じるが、早い、安い、かっこいいで知られるSolanaを支えるエコシステムの中で圧倒的に割を食らっているのはバリデーターではないだろうか。得しているのはユーザー、そして運営?現在は価格が高騰したおかげで、多くのコインをステークしているバリデータらが結果報われたことは嬉しい限りだが、価格が上がってなかったら寒気がする。誰が偉いとかではないが関係者それぞれいて成り立つネットワークの仕組みを考えても、フィーの差でそれぞれの力の均衡が保たれる絶妙な状態だと思料。少なくとも11月20日はバリデータが最も高い収益を得たはずの日であり、Solanaの持続可能性を考えても彼らが健全な収益を得られているのであれば他の関係者もハッピーハッピー。定性的にぐたぐた書いてしまったがフィーが高いのは必ずしも悪いことではないという感想。ちょい強引。
ちな「MEVチップがATHってことはそれだけ搾取されてるってことに気がつけばかSolana」といった他チェーンからハラスメントはあるもののこれもさっきのbuffaluの解釈でいう、伝統的なbad MEV対策ではなく入場優先権に支払っているという意味で、少し指摘の矛先が違う。
そして上図は同日エポックのステーキング報酬の内訳で、初めてMEV+BR>IRを達成した(MEV報酬とブロック報酬がインフレ報酬を上回った)。インフレ報酬とはバリデーターとステーカーへのインセンティブ提供で、ネットワークの初期成長と安全性の確保から必要なものだが、これを上回るオーガニックの(手数料)報酬が継続することでインフレ報酬に頼らずにネットワークが自立することが示唆される。これは長期的にみてWin。
インフレは売り圧になるため悪とされがちで、価格を意識し過ぎて全くインフレさせない(ばら撒かない)草トークンもあるが、立ち上げ初期の段階で技術的に優位性の一切ないところはちょっと無理ゲー感が強い。また数千%のインフレをするような草も難しい。これには解がなく、フェーズにも多分によるのかと思うが、プロダクトが使われてはじめて意味があると、改めて考えさせられた。
Jitoとは
Jitoを理解している前提でここまで書いて申し訳ない。Jitoはエアドロで名前はよく知られているものの実際には何をしているのか理解されていない方が多いため(わたし含む)、改めてJitoについて振り返ろうと思う。
2つのトークンを持つインフラ屋
1つは$JTOというガバナンストークン、もう1つは$JitoSOLというリキッドステーキングトークン(LST)。
JTO
Jito財団の意思決定を司るガバナンストークン。JTOのユーティリティすらもVotingで決めていく。
JitoSOL
Solanaを裸で保有している(ステーキングしていない)人はインフレという実質罰ゲームみたいなものがあり年間現在で5.07%ほどステーキングをしている人に富が移転している(初期インフレ率は8%、年間減少率は15%で詳細はHeliusのブログを参照されたい)。5%は数年単位のHodlrからすると影響は大きい。ただしステーキングをすると自分の資産がロックされるという弱点があり、それを預り証(レシートみたいな)という形にしたものがLST。つまりユーザーが1 SOLを預けることで0.xx JitoSOL受け取ることができる。ここで1 JitoSOLではなく0.xx JitoSOLとしたのは、現在約8.68%の利回りがあり、エポック毎にJitoSOLがエアドロされるのではなく、対SOLで価格に反映されてきたためだ。もし利回りが8.68%続いたとして1年後にJitoSOLをSOLに変換すると1.0868 SOLになるという意味。そしてそしてこのJitoSOLをKaminoなどのレンディングサイトで貸し出すことで更なる利回りを得られるという欲張りセットもLSTのおかげで叶う。
ちなみにJitoSOLのTVLは今日12月5日時点で$3.398bでSolanaで一番でかい。
またSolanaのLSTでは41.5%のシェアを占める。
Jito-Solanaクライアント
Jito Labsが提供するクライアントは現在92.74% のシェアを占める。バリデーターは通常のステーキング報酬に加えてMEV報酬も付与されるため業界のスタンダードとなっている。この数値も来たるFiredancerによって大きく変化するとも。
StakeNet
ユーザーがJitoSOLと引き換えにステークしたSOLはJitoが独占してバリデートするのか?否。彼らは優秀なバリデート履歴を持つバリデーターにデリゲート(委任)する、その際の選別を全て自動的にする仕組みがStakeNetだ。23年11月のBreakpointで構想が発表され、実際にちょっと前に実装された。だからJitoの担当者と仲が良いから委任してもらうとか、そういう次元ではない。
そのためユーザー目線でJitoSOLを保有した場合のメリットは、MEV報酬付与のおかげで業界トップの高い利回りを得られてかつ、このStakeNetのおかげでSolanaネットワークの分散に貢献できることだ。以前何度もツイートしているが、この点Jitoは尊い。
Jito (Re)staking
まだ始まったばかりで$50m程度の枠しか解放していないが、これから本格稼働していくホットな領域。詳細は別記事にも沢山しているので参考にしてほしい。技術的な点に関してはエンジニアに任せるとして、言語に不安があるのであればいつでもコンタクトしてほしい。
まとめ
Jitoは単なるMEVインフラ以上の存在として、Solanaエコシステムに重要な価値を提供。
1. バリデーター経済の強化
- MEV報酬による新たな収益源の確立
- インフレ報酬への依存度低下
- ネットワークの持続可能性向上
2. ユーザー体験の改善
- 効率的なトランザクション処理
- 公平なMEV抽出の実現
- 高利回りのステーキングオプション
3. エコシステムへの貢献
- ネットワークの分散化促進
- 技術的イノベーション
- 透明性の高い運営
高額な手数料は一見するとネガティブに見えるかもしれないが、それはエコシステムの健全な発展を示す指標の一つとも言える。Jitoの成功は、Solanaの進化と成熟を象徴する重要な例といえるだろう。