おまかせ全部レビュー #築地青空三代目丸の内
カウンター寿司デビューをしたい人や、ちょっと贅沢なデートをしたい大人カップルにおすすめしたいお店がここ。つまみ4品に加えて、業界では有名なフジタ水産の鮪3貫を含む握り9貫が8800円で食べられるミドル級の人気店です。4回目の訪問でもしっかり楽しめる質を維持している板長佐野さんの努力に頭が上がりません。
この店が面白いのは、チェーン店だということ。実は本店が築地にあって、東京はもちろん名古屋や沖縄にも複数店舗を構えている実力派です。更に面白いのは、仕入れや料理が全て板長の裁量に任されていること。築地の本店ならお手軽に、丸の内なら少し贅沢に。沖縄なら本土では食べられない地魚を使ったりと、スタンプラリーのように巡っても楽しめるネオチェーン店と言えるでしょう。
全てが板長次第だからこそ実現したのが丸の内の魅力。業界の暗黙の了解で鮪の仲卸を変えることは容易ではない中、佐野さんは自己判断でフジタ水産の社長と交渉して取引を勝ち取りました。YouTubeに詳しいエピソードトークがあるので興味がある方は是非。特にこの時期(初夏)の鮪は藤田社長のお気に入りだそうで、冬の脂が落ち着くからこその酸味や香りを楽しむことができます。
春先のスマートな鰹には敢えて海苔醤油を合わせることで、香りのアプローチ方法に特化していた。
蛍烏賊は燻香を纏わせてパンチを強く、紅子はイクラと比べて食感も味わいも一段とまろやかな印象。この一皿で日本酒1号なくなってもおかしくない。
つまみは季節ごとに少しずつ変わるが、あん肝だけは常にレギュラーで見ない日がない。ただ、今回は西瓜の奈良漬けが刻んで混ぜ込まれていた。
一口噛めばと濃厚な卵を味覚で受け取り、それを追うようにして烏賊の香りが鼻を抜けた。これに山葵を足すことによって、山葵の香り→卵の濃厚さ→烏賊自体の香りという3段階のストーリーを構成していた。
ガリは米酢(白酢)と赤酢でつけた2種類。白酢の方がからく漬けてあるため、お口直しに食べるのが丁度いい。赤酢はつまみにも箸休めにも食べられる万能タイプ。
トップバッターは決まって小鯛が任されるのが丸の内流。鯛の子ではあるが、この店では熟練のベテラン感を放っているよう。
しっとりとした柔らかさもありながら、墨烏賊らしい歯切れのいい食感もしっかり楽しめる王道のネタ。
一口に全神経を集中して感じたいのが初夏の赤身。美味しい鮪を食べると口と鼻が繋がっていることを再確認し、味覚と嗅覚の境目が分からなくなるような感覚に陥る。
冬が過ぎたからと言って、鮪の王道の楽しみ方も忘れない。寿司の醍醐味ともいえる脂の乗った贅沢な部位。
すき身とたくあん、刻んだ白葱を叩いて握る今回のMVS(Most Valuable Sushi)。鼻に昇る香りに本鮪の味わい、それをコントラストで強調するたくあんと白葱、全てが合わさって形作る論理的で美味しい握り。
蝦蛄も鼻で感じたいネタの1つ。身は薄いながらもワイルドな香りが味わいの印象を強める。
雲丹は毎回出るわけではないが、今回は紫雲丹がコースに入っていた。馬糞雲丹よりは控えめな味わいながら、一度理解するとハマってしまう味の奥行きがある。
腹側は茹でたままの柔らかさで、尻尾側は炙って香ばしく、2種類の身を重ねて、穴子一匹を丸ごと味わわせるというこだわり。今回は食感に表れる程度までしっかり炙られていた。
甘い干瓢に多めに効かせた山葵。口に小さな刺激を走らせ、後半のラッシュで緩んだ口元を引き締めるような感覚。
カステラのような見た目でありながら、内部はプリンに寄せてしっとりと水分を持たせたハイブリッド型。デザートとして食べられる甘さがコースをまとめる。
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