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【悲劇と喜劇は紙一重】吉住第7回単独公演『朝焼けのメリーゴーランド』

プロダクション人力舎所属のお笑い芸人・吉住の第7回単独公演『朝焼けのメリーゴーランド』に行きました。東京千秋楽、大阪千秋楽と2回も行ってしまいました。配信も買ったというのに……。

東京千秋楽
終演後の挨拶は撮影OKだったのです
大阪千秋楽
前回の大阪よりもキャパが広いHEPホールにて

本記事ではネタバレなしで第7回単独公演の感想を書いていきます。


そもそも吉住とは?

私の激推し芸人である吉住さん。そもそもどんな人物なのかご存知ない方もいると思うので簡単にご紹介。

福岡県北九州市の出身。東京03をきっかけにコントの面白さに目覚め、高校を卒業する頃には「自分もコントをやってみたい」と思ったそうです。

ブレイクのきっかけは「TheW 2020 優勝」だと言い切っていいでしょう。私もこの大会をたまたまテレビで見たことで吉住さんを知りました。

「女芸人」という枠組みが議論になりがちな「The W」。テレビでネタ披露する機会すらもらえない女性芸人が多いことを考えると私はこの大会には意義があると思っています(審査員やMCにもっと女性を起用しろよという不満はありますが)。

独特の設定と圧倒的な演技力により「1人コント」の完成度が異常に高く「どうせ、ゆりやんかAマッソが優勝するんだろうな〜」と思いながら見ていたら凄い人が出た!と驚いたのを覚えています。

そして後から調べると地元が自分と同じ北九州と判明!これは同郷のスターとして応援せねばならぬ!とずっとファンをやっています。


賞レースでいえば今年のR-1グランプリ準優勝が記憶に新しいですが、バラエティ番組やドラマなど多方面で活躍されています。

ま、単独の感想が書きたいのであとはWikipediaでも読んでください。


単独公演三部作が堂々の完結!

吉住さんはライブ終了後のエンディングトークで、この『朝焼けのメリーゴーランド』は直近2回の単独公演と合わせて三部作のような位置づけであり、次回からは変えるといった主旨のことを宣言していました。

具体的には、それぞれが独立して成立しているコントを何本か披露し、最後の長尺コントで他のコントの要素を全て回収し「実は90分くらいの1本のコント」だった、と思わせるような仕掛けのことを指しています。

ん!どういうこと?と思ったそこのアナタ!

なんとU-NEXTで過去の単独を見ることができますので、会員の方でちょっとでも興味があればまずこっちから見てほしい!


お笑いって少し可哀想

人生はクローズアップで見れば悲劇だが、
ロングショットで見れば喜劇だ。

チャールズ・チャップリン

さて第7回単独公演『朝焼けのメリーゴーランド』を見て最初に思い浮かんだのは、上で引用したチャップリンの有名な言葉です。

爆笑問題の太田さんが『芸人人語』の中で書いていたんですが、「人を傷つけない笑いなんかない」という主旨のコメントを書いています。

※すみません、いま手元にこの本がないので具体的にどこに書いてあるとかは言えません…。


私も、色々なニュアンスを含みますが、要は「ちょっと可哀想な人たちの悲劇」を笑うのがコントや映画におけるコメディの基本的な構造だと思うのです。

吉住さんのコントも基本的には、吉住さんが「なぜか可哀想な状況の人」を演じるか、「誰かを可哀想な状況に追い込んでいる人」を演じるかのどちらかだと思っています。


人間の描き方が進化したと思う

先にリンクを貼った第5回、第6回と今回の『朝焼けのメリーゴーランド』で私が変化を感じたのは、「人間」をすごく丁寧に描いている点です。

奇抜な設定、世界観はたしかに吉住さんの十八番。今回もそういう要素はあるのですが、直近2回の単独より「設定」ではなく「人間」で勝負をしている印象を受けました。

「設定が強い」タイプの吉住さんのネタといえば、『思い立ったが吉日』『キャディーさん』『愛犬家テスト』『縁結び』などが挙げられると思います。もちろんそれぞれキャラクターを演じ分けてはいますが、「人間の面白さ」より「シチュエーションの奇抜さ・異常性」が笑いのポイントだと思っています。


ところが今回の単独では「設定が強い」タイプのネタが少なくなっていた印象でした。吉住さんが演じる「キャラクター」そのものが何かしら「可哀想」で、でも本人は至って真剣に自分の人生を生きている、そんなコントが多かったと思います。

それが確信に変わったのは東京千秋楽から1週間後の大阪千秋楽を見たときです。

とあるネタが大幅に変更されており、オチすらも変わっていました。

最初は東京公演のバージョンだと、コントの内容と幕間映像の内容に違和感が生じるので、もっとわかりやすいように軌道修正したのかと思いました。実際ただそういう事情で変更しただけかもしれませんが、結果として「設定」の面白さより「人間」の面白さが上回る改変になっていたと思います。


※なんのことか言いますと、東京だと「巻き込まれてやむなく事件を対処している可哀想な人」だったコントが、大阪では「ひたすら勘違いしながら積極的に事件に関与する可哀想な人」に変わっていたんですね。

前者は主人公が「特殊なスキルがある人」であり、後者は「特殊なスキルが自分にあると勘違いしている人」だとわかりやすく切り替わっていたのです。後者のほうが「人間」としては愛おしいですよね。


コントは悲劇、しかし人生は喜劇

人生はクローズアップで見れば悲劇だが、
ロングショットで見れば喜劇だ。

チャールズ・チャップリン

さてもう一度この言葉を引用します。

最後の長尺コントで、単独のタイトルである「朝焼けのメリーゴーランド」を連想させるシーンがあり、そこで吉住さん演じるキャラクターがあるセリフを語ります。

ネタバレになるので具体的には書きませんが、今回の単独は「人間」とか「人生」という大きな射程を見据えながら作り上げた単独だったんだとわかり、笑いながら感動しました。SNSでも泣いた、みたいなコメントを読んだ気がします。

今回は数々の「人間」が暗転と明転の繰り返しの中から登場しましたが、それはそのキャラクターの人生のごく一部の「悲劇」を切り取ったにすぎない。そしてそれはコントとしてめちゃくちゃ面白い。

しかしクライマックスのセリフに込められたメッセージは「他人から見れば悲劇の連続、失敗の連続の人生かもしれない。それでも本人がそれでも幸せなら喜劇だといえる」と言っているような気がしました。

あらゆる人生を肯定する着地。なんかもう本当に凄いなと。人を笑わせながら、ただ面白かったな〜では帰らせてくれないんですよ。


さあ!配信を見ようじゃないか!

さて、もう私の拙い感想はいいので皆さん配信を見てください。

※販売は11/24(日)12:00まで
※見逃し視聴は11/24(日)23:59まで

飲み会1回分より安い!飲み会に行くよりこの配信を買うほうが健康にもいいですよ!健康にいいですよ (大事なことなので2回)!


ちなみにU-NEXTでは過去のDVD化された作品がすべて配信されているようです(私はU-NEXTの回し者ではありません)。こちらも要チェックだ!

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