西洋と東洋そして自己と他者
スティーブ・ジョブズが禅の世界に興味を持ち、そういった考えから新しいテクノロジーや世界観を作り出していたのは有名な話。
もう少し古くはビートルズもインド、仏教に興味を持ち、その彼らの音楽に大きな影響を与えていた時期がある。
それは西洋の宗教観と東洋の宗教観の融合が新しい価値を生み出して、それが世界に認められていったとも言える。
西洋の宗教観、遡ればひとつのところに辿り着く。一神のヤハウェ「ありてある者」。この一神の元に世界が作られているという考え方。そしてこのヤハウェが示した十戒が示すように言葉による戒律がある。それは倫理となり、西洋人の深いところに言語と共に根付いている。一神とともにあるが前提。
一方東洋の宗教、仏教。仏教は「縁起」という考え方が根本にある。他との関係が縁となって生起する。一切の存在は縁起によって成立しており,したがってそれ自身の実体といったものは存在せず,空である。そういう宗教観だ。
ざっくりだけど、あるとないの対立の構造が西洋と東洋で見られる。
あるのか、ないのか?
西洋はあるってなんだ?ってことを追求しそれはやがて高度な科学を生み出した。
東洋はないってなんだ?ってことを追求し、その宗教観は色々な形に発展、東洋人の精神性を進化させていった。
そして、冒頭で示した、スティーブ・ジョブズのように西洋側から東洋を取り入れ、成果を収めた例もあれば、仏教発祥のインドは、英語やITを積極的に取り入れ、現在、目覚しく経済的発展を果たしている。東洋から西洋を取り入れた。
つまり、この二項は相性が良いのだと思う。
西洋と東洋の統合の意義深さは今までも言われ続けてきた。グローバリズムの延長でこの現象をとらえると、ちょっと意味が薄くなる。世界を一つにしようという考えではない。
あるとないの二項を融合しようということだ。
回りくどい言い方をすると。
あるの反対はないではない。
あるの反対は「あるの反対」。
ないの反対はあるではない。
ないの反対は「ないの反対」。
あるとないを二元で考えないという思考だ。
あるとないの解釈で二元を用いないと言えば、量子論。
物質の最小単位、素粒子の振舞いだ。
素粒子は観測されるまでは可能性の波で、観測されると粒、物質となる。
これは有名な二重スリット実験で詳しく実証されている。
つまり、あるとないが重なっていると考えられるのだ。
もう科学はここまできてる。量子コンピューターも実用化されている。
ここの世界にいち早く足を踏み入れて、その原理を導入した技術、考え方が既に世界を動かし始めている。
そこを踏まえたうえで、私たちの日本人はどういう立ち位置にいるのか。
日本は東洋、しかも極東に位置する。東の果てだ。
もちろん古くから仏教は入ってきてはいるし、地理的にも民族的にも中国や朝鮮の影響は大きい。
明治維新後、急速に近代化をし1980年代にはJapan as No.1と言われるほど経済発展を果たした。
東洋と西洋の融合をうまく果たしている。
世界に於いてはこの統合の先駆者として、日本人が果たす役割は大きいと思う。
これから先、この世界をどう認識していくのか?
大変大きなテーマ。
あるとないの二元をもう少し、踏み込んで考えてみたい。
これは僕がこの場でもよく引用する「ヌーソロジー」の考え方が新しい方法性を示してくれた。
ヌーソロジーでは前と後ろという概念を、ただの位置の概念としない。
前は自己、後ろは他者。見ている自分とみられている自分。
この二項をこの世の最大の二元としてあつかう。
あるとないの二元ではない。あるとないは物質が主語だ。
自己と他者の二元では、主語は方向性のことを言う。観点のことをいう。
自己側から見る。他者側から見る。そして、その接点に物質ができる。
二段階で創造がされている。
この世界観だ。
ヌーソロジーではシュタイナー思想、カタカムナなどもよく引用され、似たような世界観を持っているとされる。
自己と他者。
わたしとあなた。向き合う二者の関係を紐解いてみる。
わたしはわたしであり、わたしはあなたのあなたでもある。
あなたはあなたから見たわたしから世界を見ている。そのわたしのあなたのあなたがあなた。
あなたのあなたというように鏡がいつも写し返す。この関係性が二段階の創造の源泉。
一神のヤハウェが言った、ありてある者とも違う。仏教の空とも違う。これらは鏡の関係、二段階の創造を考慮出来ていない。片手落ちだ。
これからは鏡の関係を理解した新しい空間、創造が求められてる。
鏡に写っている世界は結果の世界。その奥に原因の世界があるはずだ。
それがこれからの日本人の大きなテーマだと思う。
ヌーソロジーでは日本語の精神という言い方をする。
日本語にその精神性が組み込まれているという。
日本語を話す私たちが描く空間認識は特別なものであると思う。
日本語の精神、こんなに近くに、統合のヒントがあったなんて。
日本って面白く、奥深い。