ピーヒャラー
インターネット社会の黎明期、まだいつでもどこでもインターネットにアクセス出来ない時代のこと。モデムによってデジタル信号をアナログ信号に変換しダイヤルアップにてインターネット接続をしていた。
ダイヤルアップ接続は電話回線を使い、アクセスポイントに電話をかけるので、アナログ感たっぷり。モデムの電話番号のプッシュ音、アクセスポイントに接続中に鳴る『ピーヒャラー』というちょっと間抜けな音。それらを経由して初めて、ネットの世界のゲートが開く。
アクセスするまでのこの手間が、情報を取りに行く感覚を持たせてくれていた。
繋がってから、徐々に映し出されるYahoo!のトップページに興奮したものだ。
そこから情報化社会は勢いを増し、成長を続け今ではスマホさえあれば、いつでもどこでもアクセス出来る世の中になった。
こういった一連の変化はIT革命と言われ、農業革命、産業革命に次ぐ第3の革命と呼ばれる程だ。
人類が共通の価値と認識しているからこそ、このような革命が推進するのだから、人類共通の進化とも言えよう。進化論的には生存する為のベストな変容と言える。
食をコントロールし、物をコントロールし、情報をコントロールしてきた人類。
先進国では基本的に、食べる物には困らない、物は余るほど溢れ、情報も水のように手に入る。
いわゆる満たされた環境を手に入れた私たちだったが、その場合に立ってみるとまた新しい世界が見たくなる。
これから先、人類が目指すところはどこだろうか。
ここまでの進化は与えられた環境をいかに克服し、適応し、より良く生きるかという、ある意味『受動的』な方向性を持っていた。
時間と空間の中に投げ込まれた受動的な自己意識。
キーワードはこの意識にあるような気がする。
この意識から抜け出し、主体的な自己へと反転させる。
すると見えてくるのは全く新しい世界。
そして今、このことに気がつき始めた人が多い。気がついた人はわかっている。反転の鍵が外には無いことを。やり方ではないことを。
外側が内側の映し絵であるような世界観は、東洋人としては違和感のない世界だ。
人間ひとりひとりの意識が作る世界や時間。世界を主体的に創る意識。
新しい世界へアクセスしてみる。
『ピーヒャラー』と聞こえていた間抜けな音が違う信号を変換していたように、私たちの意識もうまく変換出来たら、新しい世界へのゲートが開かれるはずだ。