どうしようもない人生を歩む君へ
そう、君、君だ君。
学力も、それを伸ばす才能もない
体力も堅強な体もない。運動神経もない。
コミュニケーション能力も低く、誰とも分かり合えない。
生涯の伴侶どころか、友人すら怪しい。あるのはアルコールと社会不適合思想。
君、君だ君そう、君だ。
今まで生きてきた工程が何につながっているか、想像するのも恐ろしい。
これまでを振り返るのはもっと恐ろしい、どうしようもない君だ、君。
人々から至らなさを追及される、君だ、君。
たどり着いた職場は何をやっているかわからない、何をしているかわからない。この世の肥溜め、掃いて捨ててもいい関係で生きている君へ。
君の力が必要だ。
この世界には君の力が必要なんだ。
365日、24時間、呼ばれればいつでもどこでも飛ばされ、休日も定時もない。危険と理不尽と長時間戦い、終われば汚くて臭い。報酬は猛烈な低賃金に世間からの嘲り。 君、そう、君だ、君! 君たちの力がこの世には必要なんだ!
100年前の水道管はなぜ機能しているか、いまだ水を流し続けるのか。365日、24時間、数千円払うだけで十分な水を我々に届けるのか。
イケてる大学教授がきれいな実験室で実験して「うーん、A金属とB金属を接合するとイオン化現象でさびやすくなるから、やめたほうがいい」みたいなことを見つけてくれたからか。
企業は「それは大変だ」と言って全数変えてくれたからか。
違う、全然違う。
現実には「変えるとコストがかかる。錆びたら逐次交換」そして交換した部品も旧来のさびやすいものだ。わかってはいるがまったく変えない。今日も明日も新しい継ぎ目が爆発する。だれだ、だれが届けてるんだ、24h365日。
そう、君だ、君。君が届けてるんだ。
道行く過積載の20tダンプ。もはや30tダンプだ。縦横無尽に車が行きかう道路。老いも若いも行ったり来たり。偶然跳ね飛ばせばお前の責任で刑務所行だお疲れさん。若いカップルがよろしく死角から信号無視。それでもお前の責任だ。ブレーキ2度踏み、エア不足の警告音が15分響き渡る。プエエエエエエエエエエエエエエその砂利で高速道路は作られるがお前には週末行楽をする機会はない。プエエエエエエエエエエ高速なんて使わない。手前の休日は1DKの糞賃貸で日ごろの睡眠不足を解消。気づけば17時過ぎ。申し訳程度に飲酒。明日はAM01:00から仕事、排雪のために。
でも、君だ、君。君が動かしてるんだ。
よろしく国家資格を取ったはいいが糞の賃金にもつながらない。仕事の相方はビザなしブラジル人と実習ベトナム人だ。「もう祖国のほうが給料いいよ」勤続15年、手取りはようやく10万円。週休1日で盆休みはなし。リコール三昧メーカー言い放題。交換するのはこちら。交換のための工具は自腹。営業やってきて日付をまたぐための軽食をパクり。「新商品?」何が自動車整備士だ。何年やっても新人の営業以下の扱い。存在意義なし。
だけども君だ、君。君が整えてるんだ。
世界には君の、君たちの力が必要なんだ。君たちがいないとインテリが大学の研究室で没頭できないし、君たちがいないと誰もがうらやむ六本木のビルは建たないし、家庭を持った奴らの笑顔もないんだ。
だから君の力が必要なんだ。