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第4回市民対話を開催しました

こんにちは、すさきのすづくり編集部です。
2025年2月11日(火曜・祝日)、須崎市の図書館等複合施設の運営を考える第4回市民対話を開催しました。今回のテーマは「地域の居場所のつくり方──高知こどもの図書館の25年にまなぶ」。高知こどもの図書館館長の大木由香さんをゲストにお迎えし、15名のみなさんにご参加いただきました。

写真:自動ドアに貼った「市民対話」のポスター
会場は須崎公民館(交流ひろばすさき)

「こどもに本を届け続けること」高知こどもの図書館の歩みと理念

1999年に全国初のNPO法人が運営するこどもの本専門図書館として開館した高知こどもの図書館は、2023年12月に開館25周年を迎えました。館長の大木さんから、高知こどもの図書館の25年の歩みと活動についてお話しいただきました。

写真:マイクをもって笑顔で話しかける大木さん
大木由香さん

地域から図書館がなくならないように

「ポストの数だけ図書館を!」──これは、高知で図書館活動に尽力してきた先人たちの言葉です。1990年頃、高知県立図書館の建物の老朽化のために図書館の移転計画が持ち上がりました。その候補地が郊外だったことから、「街なかにこどもが図書館に通える環境を残したい」と考えた市民の活動を県がサポートすることで高知こどもの図書館が生まれました。

高知こどもの図書館は、職員と理事、そして多くのボランティアの方々が協働して運営を行っています。月に1回の選書委員会には、県外からオンラインで参加するメンバーもいます。本の貸し出しのほか、読み聞かせやブックトーク、ギャラリースペースを利用したイベントなどNPOならではの多彩な企画を行っています。これらの活動は、県や市の指定管理や委託業務ではなく、会員からの会費や寄付金などの自主財源でまかなっています。

設立当初は「本来なら行政がつくるべき図書館を私設でやるなんて」「非営利で続けられるのか」といった疑問の声もあり、「すぐにつぶれる」と言われたこともあったそうです。実際に何度も存続の危機にさらされながらも、奇跡的に寄付が集まり乗り越えてこられました。

「こどもの読書活動を支えるのは大人です」と大木さんは語ります。「大人の理解の輪が広がることで、こどもに本が届きます。本当にたくさんの大人に支えてもらって、わたしたちの活動は続いています」。

写真:参加者の後ろ姿
熱心にメモをとる参加者の姿

3世代にわたって愛される居場所

今回の市民対話のために図書館の過去の写真を見返した大木さんは、小さい頃の娘さんが写っていることに気づいたそうです。親子3世代にわたって利用する家族もあり、25年の歳月の中で地域の人たちの日常に図書館が溶け込んでいることがうかがえます。

全国の図書館に詳しいアカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)代表の岡本真さんは、「初めて高知こどもの図書館を訪れたとき、高校生の女の子が過ごしている姿に感動しました。それが他ではない高知で、25年続いていることに驚きます」と語りました。大人に連れてきてもらった小さな子だけでなく、中高生にも利用されていることは、そこが地域で安心して過ごせる居場所として機能している証でしょう。

写真:手振りを加えて話をする岡本さん
岡本真さん

行けなくても訪ねられる図書館

高知こどもの図書館の理念「こどもに本を届け続けること」に基づく活動は、館内だけにとどまりません。県内各地へ出かけていき、出張おはなし会や読書ボランティア養成講座を行なっています。ニューズレター『ほんとあそぶ』や、高知ゆかりの作家やイラストレーターが参加するオリジナルカレンダー、高知こどもの図書館を勝手に応援する新聞『へなちょこしんぶん』の発行も続けています。

コロナ禍でこどもたちが図書館を利用できなくなった際には、ウェブを通して読書案内ができるようにサイトの全面リニューアルを行いました。それに合わせて、ずっとアナログだった館内のデジタル化にも挑戦したそうです。これらの多角的な取り組みが評価され、2023年にはLibrary of the Yearの優秀賞を受賞しました。

「昔から今まで、やっていることはずっと一緒で、人と人がいて、間に本があります」と大木さん。会場の図書コーナーにあった絵本を手に取りながら、「ここの本棚にも良い絵本が揃っていました。こどもの読書活動を支えてこられた方が須崎にもいらっしゃることがわかります。そんな須崎の新しい図書館は、きっと素敵な場所になるでしょう」とエールをくださいました。

写真:絵本を掲げる大木さん
西村繁男さんの絵本『にちよういち』は、「高知の子みんなに読んでほしい」と大木さん

須崎市の図書館等複合施設への期待

高知こどもの図書館では、高知城の緑に囲まれた立地を生かしてネイチャーゲームを行なったり、高知城へ散歩に来たこどもたちが図書館にも立ち寄ったりしているそうです。「須崎にこれからできる施設でも、同じような風景がきっと見られるようになります」と岡本さん。大きな広場やキッズスペース、多目的ホールなどが併設された図面を見ながら、どのように施設を使っていきたいか、大木さんを交えて意見交換を行いました。

写真:配布された計画図を見る男性参加者

キッズスペースと図書館を併設するうえで、子どもの声やルールについてどう考えるか、大木さんにうかがいました。高知こどもの図書館では「おしゃべり禁止」といった張り紙や注意はしていませんが、自然と秩序が保たれているそうです。イベント時にこどもたちがわっと盛り上がる瞬間もありますが、「利用者同士の理解の循環がある」という言葉が印象的でした。

こどもたちの安全の見守りや声かけに関しては、館内をスタッフが回りながら気にかけているのと、何かあったときに言いに来れる場であることを意識しているそうです。

継続的な人員配置や図書費を

写真:2人の男性。1人はマイクを持って話し、もう1人は座ってそれを見ています。
福本課長と田尾係長

「こども一人ひとりに合った本を手渡せる司書がいると良いが、現図書館ではスタッフの入れ替わりが多いのを何とかできないだろうか」という声に対しては、生涯学習課の福本課長が応えます。「担当課としては、正規職の司書を配置することが望ましいと考えてはいますが、人事に関する内容であることから、市役所内で協議を進めている状況です」とのことです。また、図書資料費の予算を求める声に「予算を増やす内容で協議を進めています」との返答があり、会場からは拍手が起こりました。

対話が盛り上がってきたところで時間いっぱいとなり、第4回の市民対話は終了しました。ご参加いただいたみなさま、そして貴重なお話をしてくださった大木さん、本当にありがとうございました。

写真:絵本が並んだ棚の前で、かがんで手を伸ばしている大木さんの後ろ姿
市民対話前に図書コーナーからササッと絵本をピックアップする大木さん

市民対話は続く

今年度は4回の市民対話を行い、のべ78名の方にご参加いただきました。2025年度も引き続き、市民のみなさんと対話を重ねていきたいと考えています。
岡本さんからは「高知こどもの図書館へみんなで学びに行って市民対話を行うのも良いのでは」と提案がありました。お隣の佐川町に開館した佐川町立図書館「さくと」を訪れても良いでしょう。
「こんなことをみんなで考えたい」というテーマの提案も歓迎します。須崎市の図書館等複合施設でどんなことがしたいか、ぜひ今後の対話の場でお聞かせください。

これまでの市民対話