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Canva × 算数「統計領域」 〜統計計領域に相性抜群のCanvaを使って学びを深める〜

記事の概要

Canvaを活用して行った6年算数「データの活用」の実践をもとにした記事です。
各種デジタルツールがある中で、Canvaのメリットを最大限に活かし、これからの時代に必要とされる統計的問題解決の力を育てることをねらった実践をしました。
目次は下の通りです。
「1」でCanvaと統計領域の相性について簡単にまとめ、「2」以降で「1」の内容の詳細について述べていく構成となっています。


1.Canvaが統計領域と相性抜群なポイント

最初に、本記事の全体像をイメージしてもらうために次の画像をご覧ください。
6年生の統計領域でねらった内容と、そのためにCanvaを活用していく単元全体の授業イメージです。

統計領域の学習(特に高学年)で活きて働く力を育てるためには、正解が一つに決まらない場面で、データと自分の価値観を根拠に意思決定していく学習が大切だと考えています。その際、自分とは異なる考えにも触れ、それら全てをふまえて最終的な意思決定をしていく過程が大切です。このような学習過程を単元通して設定していくことが重要です。(※具体的な教材と授業展開については、後の項にまとめます。)
また、データを根拠にした自分の考えを人に伝わるようにまとめ、さらに自分と異なる考えも知ることで学習を深めるためには、プレゼンテーションなどのアウトプットの場が欠かせないと考えています。

そこで、Canvaの出番です。
Canvaは様々なグラフを自由自在に作成できます。また、共同編集ができることで、同じ考えをもった友達と意見交流しながら考えを練り上げ、深め合うことができます。そして、考えを伝えるためのプレゼンテーションにシームレスにつなげられます。

もう一度簡単に整理します。

  • グラフ作成

  • 共同編集

  • プレゼンテーション(またはポスターづくりなどのアウトプット全般)

これらの活動を自由に、シームレスに充実させるためのツールとして、Canvaが相性抜群なのです。

以下では、「統計領域でCanvaを選ぶ理由」、「単元全体のデザイン」に分けて詳しくまとめていきます。


2.統計領域でCanvaを選ぶ理由

2(1)各種アプリの特徴の整理

GIGA環境が整った現在の統計領域の学習においては、様々なデジタルツール活用が必須だと考えています。様々なアプリがありますが、代表的なアプリの長所と短所を次のように整理しました。

これらのうち、本実践では「教科書準拠のコンテンツ」と「SGRAPA」も使いながら、メインで「Canva」を活用していきました。

2(2)Canvaだからこそできること

今回の実践でCanvaをメインで活用したのは、最初に述べたような統計領域で自分が理想とする学習の展開と、Canvaの特徴が相性抜群で、それを最大限に活かしたかったからです。改めて、その特徴は次の3つです。

  1. 子どもたちが各種グラフを自由に作成できること

  2. 共同編集ができること

  3. 「分析」や「意思決定」から「結論のプレゼンテーション」までが一つのアプリ内でシームレスに完結できること

「1」に関しては、統計に特化したアプリと比べると、Canvaはグラフ作成の細かな機能などで劣る部分はあります。しかし、それを踏まえても、Canvaには小学校の段階で扱うには十分な機能があり、必要なら他のアプリを併用すればよいので、メインで使うのはCanvaが最適解だと判断しました。

「2」「3」に関しては、他のプレゼンテーションソフトでも実施は可能ですが、Canvaの機能や豊富な素材には敵いません。

そして何より「1〜3の全て」を同時に実現することを考えたとき、まとめて1つのアプリだけで完結するのがCanvaの強みです。「オールインワン」といわれることもある多機能なCanvaだからこそ実現できる単元の流れがあると考えています。

2(3)他学年の統計領域にもCanvaは相性抜群

今回の実践では6年生の授業として、単元終盤にプレゼンテーションを位置づけました。
下の学年の統計領域の学習でもやりやすい形としては、プレゼンテーションの代わりにポスターづくりなどの活動を位置づけることができます。
教科書にも例がある事例としては、次のような「けが調べ」での単元構成があります。
・「けがを減らしたい」という目的のために、データを集めて分析する。
・分析結果を表やグラフにまとめて考察する。
・その結果をポスターにして、けがを減らすための呼びかけを行う。
このような活動のポスターづくりをする際にも、同様にCanvaは相性抜群です。


3.授業を単元全体でデザインする

Canvaを使うかどうかに関わらず、まずは何をねらいとしてどんな授業を行うかが重要です。今回の実践では、「単元を通しての問いをもって活動できること」「新たな代表値やグラフなどの表現を学ぶことによって思考が多様に変容し、深まること」を鍵として考えました。そのため、単元全体で授業をデザインすることがより重要となります。

3(1)どんな教材を使うか

統計領域で扱う教材について考えてみます。まず大きな括りとして、
A「教科書の題材や数値を使う」
B「自校などの実データを使う」
の2つから選ぶとしたら、どちらを選びますか?

これに絶対的な正解はないですよね。ありきたりな回答ですが「ねらいと実態による」というところです。自分は、特に統計領域については、次のように長所と短所を考えながら検討して選ぶようにしています。

今回の実践では、A「教科書の題材や数値を使う」を選択しました。B「自校などの実データを使う」よさも捨てがたいところですが、今回Aを選択した理由は次の通りです。
6年「データの活用」では各種の代表値や新たなグラフなどの表現方法を学びます。私の学校で使用している教科書では、最初に設定した「単元を通しての問い」にもとづき、各代表値などを単に知識として知るのではなく、それらを使うよさも含めて学べるようなストーリーができあがるように、絶妙な数値設定がされています。
実際の教科書の中身を紹介するのが手っ取り早いのですが、ここに載せることはできないため伝わりづらいかもしれません。参考に、今回使った教科書教材の概要は次の通りです。

今回行いたい単元終盤のプレゼンや議論を深めるためには、各代表値や表現方法のよさを知った上で多様な意見が生まれることが必須です。そのためには、もとにするデータが、多様な意見が生まれるような数値であると理想的です。そこで、今回は教科書の「絶妙に設定された数値」を活用することが最適であると判断しました。
また、他人事の学習としないためには、知的好奇心を引き出す場面設定などの工夫が必須です。その点でも、上記の「長縄大会の優勝予想」は、提示の仕方や絶妙な数値設定により、子どもたちにとって十分な知的好奇心を引き出すことができると判断しました。

3(2)思考が変容し、判断が多様化する数値設定を最大限に活用する

前項で、使用した教科書について「絶妙に設定された数値」があると表現したのは、長縄大会の優勝クラスを予想するための根拠となるデータが、次のような設定になっているところです。
「平均値だけで考えたら2組が優勝しそう」
「散らばりをみたら、1組が安定していて本番に強そう」
「最頻値がよい記録になっているから3組がよい記録を出す可能性が高そう」
「1回だけ外れた記録(外れ値)があるけど、これを入れるか入れないかで予想が変わる」
など、新たな視点を学習するたびに予想が揺さぶられる数値設定になっています。さらに単元終盤でこれらの情報を組み合わせて判断するとなると、思考はより複雑化、多様化します。

このような数値設定の特徴を把握し、単元全体の中で何回か「予想と理由」を書く場面を設定したり、適切な揺さぶりをかけたりしていくことで、子どもたちの知的好奇心を刺激し続けることができます。優勝予想という「単元を通しての問い」を設定した上での、単元全体を俯瞰した教師の関わりで思考を深めることができます。

3(3)「算数はいつも正解が一つ」ではない

前項で述べたように、今回使った教科書の設定では、優勝予想に絶対的な1つの結論はありません。どのデータを根拠にして、何に重点を置くかという個々の価値観によって、結論は多様になります。これからの時代の算数では、こうした学習が重要になってきます。統計領域では特に必須だと考えます。

算数では、計算結果や、指示通りにかいた図形は一通りに決まります。
これについて「算数はいつも正解が一つ」といわれがちですが、厳密にはそうではなないと考えています。「計算結果を問うから正解が一つ」「指示の結果できあがる図形を問うから正解が一つ」になるだけです。教科の特性上、こうしたことを問うことを中心に学習を進めることが多くなるので、算数は正解が一つになる問題場面が「圧倒的に多い」だけだと考えています。決して「必ず」正解が一つになるのではないと考えます。今回の統計領域の例のように、設定の仕方によって、正解が一つではなく議論が生じる問題設定が可能になるからです。

教科書にもこのような教材が取り入れられるようになってきましたが、さらにこのような授業を深めていくための研究もされています。今回の実践にあたっても参考にさせてもらったのは、次の2冊の書籍です。

4.まとめ

改めて、これから先、統計領域を中心に「答えが一つではない算数授業」を行なっていくことを考えたとき、GIGA環境の恩恵は大きいと考えます。
そして、このような授業を行うときに現時点で活用可能なアプリを見渡したとき、Canvaの相性が抜群であると考えます。

ここでは詳細は割愛しますが、今回の実践ではPadletに一人一人のセクション(シェルフ)を作って、単元通しての考えや予想の変容を記録、共有していきました。その内容からも、単元を通した問いのある授業デザインで、Canvaを活用したことによる学びの深まりの様子を見とることができました。

  • グラフ作成

  • 共同編集

  • プレゼンテーションやポスターづくりなどのアウトプット

Canvaでこれらの活動を自由にシームレスに充実させていくことで、深い学びのある算数授業が実現可能になっていきます。

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