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20枚シナリオ『契愛結婚』
シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:結婚式
登場人物
倉野さくら(32)専業主婦
赤穂紗希(32)さくらの妻
赤穂恵美(58)紗希の母親
赤穂千恵子(87)紗希の祖母
スタッフ
シナリオ
○カフェ・店内
店内は学生や社会人で賑わっている。
注文を待っている人や、席でパソコンを触っている人もいる。
さくらはカフェの窓際の席で汚れたつなぎを着て、テーブルに肘をつき、ストローを噛んでフラペチーノを飲む。
赤穂紗希(32)は隣の席でスーツを着て、コーヒーを飲む。
紗希「それで、どう?」
さくらは頭をかく。
さくら「嘘くさいけど、引き受けるわ」
紗希「ふふ」
紗希は顔を伏せる。
さくらは紗希を睨む。
紗希「ごめん。ごめん。あまりにも素直で」
紗希は顔をあげる。
紗希「まあ、確かに条件いいと怪しいよね」
さくら「自分で言う?」
紗希「まあ、ねえ。仕事というか、そもそも雇用を結ぶって訳でもないから仕事じゃないし」
さくらは机を指でコツコツと叩く。
紗希「まあ、人の人生借りるんだから、このくらいはっていう気持ちよ」
さくら「ふーん」
紗希「誰でもいいって訳じゃないよ」
紗希はコーヒーをテーブルに置く。
紗希「偏見がない。価値観が近そう。忍耐がありそうとか」
さくらはじっと紗希を見る。
紗希「まあ、一番は周りが何も言えないくらい美人ってことかな。モデルだって言われても誰も疑わなそうな感じとか」
さくら「はあ」
さくらはじろりと紗希を見る。
さくら「最低なこと言ってる自覚ある?」
紗希「まあね。でもそんなもんでしょ」
紗希はコーヒーを飲む。
紗希「結婚の決め手なんてね」
紗希はさくらを見て笑う。
さくら「そうかしら?」
紗希「お金の話から入ったから、ロマンはないけど、こうゆう部分を適当にすると後で揉めることになるから大事だと思うよ」
さくら「確かに。男女でも一緒かそこは」
紗希「周りはストーリーさえしっかりしてればなんでもいいのよ」
さくら「ストーリー?」
紗希「恋愛小説でも映画でも、現実でありそうで非現実な方が人は好きだからね」
さくら「ふうん?」
紗希「高校の時に一目ぼれしたしたあの子が、当時と同じ見た目で再会したことで止まらなくなった愛とか?」
さくら「よくありそうだけど、私が高校生は無理あるでしょ」
紗希「全然いけるよ。制服着たら誰も分からないわよ」
さくら「そこまで童顔じゃない」
紗希は笑いをこらえてコーヒーを飲む。
紗希「まあ、そのくらいに見えるって話。親族はこっちが本家よりだから納得せざる得ないし、兄さんと姉さんとはどっちかっていうと味方だし。父と母は子供を産む気ないなら興味もなくなるでしょ。何を言ってもおばあ様が決めたなら誰もなんも言わないよ。直接はね」
さくら「血縁が沢山いると大変そうね」
紗希は困ったように指を動かすが、気にしてないように笑う。
紗希「問題はおばあ様かな。嘘だってばれなければなんとかなると思う」
さくら「そしたら晴れて自由の身?」
紗希「まあ、そんなところかな」
さくら「金持ちってもっと自由かと思った」
紗希「全然。こうやって頑張らないとなんもないよ」
さくら「ふうん?」
紗希「ま、追々ってことで。それじゃ、来週から家探ししよう。何時に迎えにいけばいい?」
さくら「そうね」
さくらはスマホを見る。
○赤穂家・リビング(夜)
さくらはゆったりとしたワンピースを着ている。
腕を組み立っている。
紗希はスーツを着て、ソファーに座る。
紗希「おばあさまが?」
さくら「うん。お金はこっちが出すからって」
紗希「結婚式そんなに好きだったかな」
さくらは自室から自分の顔ほどある分厚い紙の束をもって戻ってくる。
紗希「え?」
さくらは紗希の前にあるテーブルに紙の束をおく。
ウェディングドレスや式場が書かれた紙がバラバラとテーブルに広がる。
さくら「やるわよ」
紗希「え、まさか?」
さくら「結婚式を!おばあ様が大満足するやつをね」
紗希は口をぽかんと開いたまま固まる。
○赤穂家・本家・千恵子の部屋
使用人がお茶をテーブルに置き、頭を下げて部屋から出る。
赤穂千恵子(87)はお茶を飲む。
千恵子「あの子と紗希の結婚式」
手紙を手に取る。
千恵子「面白いことになりそうね」
○プリンセスホテル・控室
赤穂恵美(58)は部屋に入るとスタッフに笑顔で何かを言い下げさせる。
ウェディングドレスの前に立ち、眉間に皺を寄せる。
恵美「まったくセンスのない」
恵美は部屋の中を調べる。
恵美「気に入らなくても、お母様が許したんだから、完璧な式にしないと」
スタッフがノックをする。
恵美「どうぞ」
スタッフはお辞儀をして部屋に入る。
スタッフ「お待たせしました。ご用意したものの説明をさせていただきます。」
○紗希の車・車内
紗希はハンドルの横にあるスマホを見る。
さくらは助手席で紗希のスマホを見る。
紗希「お母様が式場を調べてる」
さくら「そのなんか、さらっと身辺調査するのなんなの?」
紗希「嗜みだから」
さくらは眉間に皺を寄せる。
さくら「めちゃくちゃにしてやろうとか?」
紗希「まさか。自分に泥がつかないように調べているでしょ」
さくら「何それ?こっちが話した時は気にしてなかったけど?」
紗希「こっちのことは何も言わないよ。ただ式をめちゃくちゃにするのは他に沢山いるから、そっちを警戒しているはず」
さくらはため息をつく。
さくら「みんな、嘘しか言わないの?」
紗希「さあ、どうだろうね」
○プリンセスホテル・ホテル受付前
紗希は笑顔で来客と挨拶をする。
さくらは紗希の隣に立っている。
さくら「もしかして、ここにいる人全員?」
紗希「うん。私の血縁者」
さくらは頬を引きつらせる。
さくら「顔が筋肉痛になりそう」
紗希「まあ、泊まりは血縁者だけにしているから、他に泊まった人や泊まらずに来る人もいるから、当日はもっといるよ」
さくら「へえー」
遠くから恵美が近づく。紗希の前に立つと笑顔で紗希の手を握る。
恵美「あらあら、仲良しね。紗希、奥に誠兄さんがいるから挨拶しなさい」
紗希「はい。ではさくらと行ってきます」
紗希は恵美の手を離し、さくらの手を引いて歩く。
恵美は笑顔でさくらを見る。
恵美「そう?ここは私がやっておくから、2人ともよろしくね」
紗希「はい、いってきます」
さくらは恵美にお辞儀をして、前を向き歩き出す。
さくら「良かったの?」
紗希「うーん、まあ。でも1人には出来ないし。嫌でしょ?」
さくら「それはどうだけど」
紗希「このままおじさんに挨拶したら、奥にいる、おばあ様へ挨拶にいこう」
さくら「なんかお母様に押し付けてない?」
紗希「まさか」
紗希は遠くて挨拶をしている
恵美を横目に見る。
紗希「こっちを気にせずに話せるから、むしろ好都合では?」
さくら「ええ」
さくらは疲れたようにため息を吐く。
さくら「一気に老けそう」
紗希は笑って、さくらを見る。
紗希「だから言ったでしょ?やめとこうって。おばあ様の頼みでも、私がなんとかしたからやらなくても大丈夫だったよ」
さくらは紗希をちらりと見る。
To be continued…
感想
シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
今後の展開が気になるように制作しました。
周りからの評価がよく、先生には話の展開の切り取り方を教わりました。
20枚シナリオはどうしても枚数の都合で早足になりがちなので、気をつけたいと思いました。