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20枚シナリオ『山の蕎麦屋』

シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:不安


登場人物

戸羽順平(25)登山家
蕎麦屋の主人
蕎麦屋の奥さん

シナリオ

○高尾山・山道(朝)
天気は晴れており、人も多い。
談笑しながら歩く人もいる。
戸羽順平(25)は長袖長ズボン、少し大きめのリュックを背負っている。首にはアナログカメラを提げている。
戸羽は立ち止まり、カメラを構え、写真を撮る。

戸羽「うん。今日はいい天気だな」

戸羽はカメラを覗きこむ。

戸羽「ん?」

カメラ越しに曇ったような景色が映る。
戸羽はカメラから顔を離し、レンズを見る。
戸羽は首をかしげ、カメラのレンズをのぞき込む。
カメラ越しの景色は明るい綺麗な木々の景色が広がる。

戸羽「なんだ、気のせいか」

戸羽はカメラのシャッターを押す。

○高尾山・高尾山薬王院
戸羽は朱印帳を見る。
ペラペラとページをめくり、閉じてカバンの中にしまう。
カメラを取り出し、写真を撮る。

戸羽「ん?曇ってきたか?」

戸羽は遠くを見るが、空は晴れている。

戸羽「気のせいか?」

戸羽はカメラを覗きこみ、カメラ越しに見る景色は曇っている。

戸羽「うーん、レンズが汚れているのか」

カメラを覗き込む。
景色は曇っている様子はなく、神社を映している。
カメラから顔を離し、頭をかく。

戸羽「おかしいな。デジタルじゃないし」

戸羽はカメラを覗き込む。
景色は晴れた神社が映っている。
戸羽はシャッターを押す。
カメラには黒い何かが横切る。

戸羽「え?」

戸羽は辺りを見渡す。
観光客で賑わっている。
黒い影のような生き物はいない。

戸羽「疲れているのか?」

戸羽は首をかしげて、歩き出す。

○高尾山・やまびこ茶屋・店内
戸羽は席に座り、店員を呼ぶ。

戸羽「すみません。とろろそばセットで」
店員「はい、そばセットのとろろそばですね」

店員は奥に下がる。
戸羽はカバンから布きんを取り出す。
カメラのレンズを拭いて、レンズ越しに店内を見る。
曇っている様子はない。

戸羽「やっぱり汚れていただけか?」

何度かカメラ越しに足元を見るが、曇っている様子はない。

戸羽「うーん」

店員が戸羽の前にくる。

店員「お待たせしました。そばセットです」

戸羽は店員に会釈をする。
カメラを横に置き、箸をとり、手を合わせる。

戸羽「いただきます」

そばを食べて、おにぎりを半分に分けて食べる。
そばを食べて、もう半分のおにぎりに手を伸ばすがおにぎりはどこにもない。

戸羽「あれ」

戸羽はお皿をみるがそこには何もない。
戸羽は首をかしげる。

戸羽「食べたか?」

戸羽は首をかしげつつ、残りのそばをすする。

○高尾山・山道
観光客が戸羽の横を通りすぎる。
戸羽は時折立ち止まっては写真を撮る。
戸羽は歩いていると、周りから人が居ないことに気づく。

戸羽「なんだか曇ってきたな」

戸羽は空を見上げるとうす黒い雲が、遠くの方に見える。

戸羽「雨が降る前に降りれるかな」

戸羽は早歩きで移動する。

○高尾山・山道・雨道(夕方)
雨音が響く。
道は霧に覆われており、何も見えない。
戸羽は走る。

戸羽「しまったな。振ってきたか」

戸羽は店小屋が目に入り、店の前まで走る。
屋根の下に入ると雨水をはらい、カバンからタオルを取り出す。
戸羽はタオルで顔を拭きながら辺りを見渡す。

戸羽「ここ、どこだろう」

戸羽は店小屋を見て首をかしげる。
店の看板らしきものはなく、店の名前はわからない。
戸羽はスマホを見るが画面は真っ暗で映らない。

戸羽「電池切れか?」

戸羽はカバンから充電器を取り出そうとすると、店の扉が開く。
蕎麦屋の主人が驚いたように、戸羽を見る。
戸羽も突然出てきた老人に驚く。

蕎麦屋の主人「おや、どうしました?」
戸羽「あ、すみません。急に雨が降ったもので雨宿りさせていただいてます」
蕎麦屋の主人「ああ、そうなんですね」

蕎麦屋の主人は外を見る。

蕎麦屋の主人「うちは蕎麦屋でね。良かったら中で休むかい?」
戸羽「え?良いんですか?」
蕎麦屋の主人「ええ、ええ。雨が上がるまでゆっくりしていきなさい」
戸羽「ありがとうございます」

○蕎麦屋・店内
蕎麦屋の主人は机に上げてある、震える手で椅子を下ろそうとする。
戸田は慌てて手を貸す。

蕎麦屋の主人「おや、すみませんね」
戸羽「いえいえ、雨宿りさせ頂いてるんです。気にしないでください」
蕎麦屋の主人「体も冷えたでしょう。お茶を持ってきますね」
戸羽「え、あ、ありがとうございます」

蕎麦屋の主人は奥に消える。
戸羽はテーブルに置かれたメニューを見る。

戸羽「蕎麦屋なのか。山の近くに店があったなんて知らなかったな」

奥から聞きなれない音がする、戸羽は店の奥を見ようと体を動かす。
音がだんだん大きくなる。
戸羽は辺りを見渡す。
戸羽は席を立ち、ゆっくりと店の奥へ近づく。

戸羽「あの、大丈夫ですか?」

奥から老婆が出てくる。

蕎麦屋の奥さん「あら、座ってて良かったのに。さあ、どうぞお茶ですよ」戸羽「え、あ、どうも」

戸羽は席へ戻される。
蕎麦屋の奥さんはお茶を机に置く。

蕎麦屋の奥さん「主人がね。良かったらお蕎麦でもって。お腹すいてます?」戸羽「え、悪いですよ」
蕎麦屋の奥さん「いいの。いいの。ついでだから食べちゃって。お代もいらないから」
戸羽「いえ、あの」

店の奥から大きな音がする。
聞きなれない音が間を空けて、ガンガンとなり、静かになる。

戸羽「あの、さっきから聞こえる音って、蕎麦を打ってるんですかね?」

戸羽は蕎麦屋の奥さんを見る。
蕎麦屋の奥さんは笑顔で戸羽を見る。

戸羽「いや、ははは。気になって」

蕎麦屋の奥さんは笑顔で戸羽を見つめる。
戸羽はゆっくり視線を外す。
店の奥から大きな音がなる。
店の中は静かになる。
戸羽は視線をさ迷わせる。

蕎麦屋の奥さん「うちの蕎麦は特別なんですよ」
戸羽「は、はあ」
蕎麦屋の奥さん「きっと気に入りますよ」

蕎麦屋の奥さんはゆっくり頭を下げて、店の奥へ歩いていく。
戸羽は机に置いてある、お茶を飲もうと口元までもっていく。
店の扉がガンガンと叩かれる。
戸羽は振り向いて、店の扉を見る。
黒い何かがべたりと張り付いている。
戸羽は立ち上がる。

戸羽「あつ!」

戸羽は自身の太ももを見る。
すぐに店の扉を見る。
店の扉には黒い何かはいない。
戸羽はゆっくりお茶を机に置く。

戸羽「気のせいか?」

戸羽は店の中を見渡す。
机が6席分あり、1つの机には、四つの椅子が逆さに乗せてある。
バチンと音があり、棚の上のラジオが流れる。

戸羽「うお!」

ラジオからは天気予報が流れる。
『東京は晴れ』とアナウンサーが話す声が聞こえる。

戸羽「晴れだって?」

To be continued…

感想

シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
先生からの評価が良かったので、嬉しかったです。
今後の展開が気になるように制作しました。


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