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20枚シナリオ『彼女の名前』

シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:再会


登場人物

吉村篤史(32)小説家
吉村梓(30)吉村の妻
加藤俊也(40)吉村の担当編集
千田成美(32)女優

シナリオ

○吉村家・居間
テーブルにはお茶は2つ置かれている。
吉村篤史(32)は資料を片手に持ちつつ、台本をめくる。
加藤俊也(40)は資料を見ている。

吉田「うーん。良いんじゃないか?」

加藤は顔を上げる。

加藤「お、本当ですか?」
吉田「ええ、まあ」

吉田は台本と資料をテーブルに置く。

加藤「村田さんも喜びますよ。先生の大ファンだそうですし」
吉田「え?監督さんそうなんですか。嬉しいなあ」
加藤「ええ、この台本も何回も書き直させたって話らしいですし」
吉田「へえー、凄いなあ。ドラマとか映画とかあんまり見なかったけど、今度村田監督の作品みようかな」

吉田はお茶を飲む。

吉田「何かおすすめとかありますか?」
加藤「それなら今度、うちにあるやつ持ってきますよ。次の打ち合わせの時に渡しますね」
吉田「あー、ありがとうございます。嬉しいな。どんなドラマになるんだろう」

吉田はテーブルの端に置かれている本を見る。
本のタイトルは「去り行く君へ」と書かれている。
加藤はカバンから写真の束を取り出す。

加藤「どうなんでしょうね。ああ、そういえばメインキャスト決まりましたよ」
吉田「へえ」

吉田は加藤から写真を受け取る。

吉田「まあ、見ても分かんないんですけどね」
加藤「ははは、先生は本の方がお好きですからね」

吉田は一枚一枚めくる。
千田成美(32)が映る写真を見たときに手を止める。

加藤「ん?ああ、千恵子を担当する女優さんですよ。先生のファンらしく、向こうからぜひ参加したいって話らしいですよ」
吉田「あ、ああ。そうなんだ。有名な人?ですよね」
加藤「そうですよ。向こうから声がかからなければキャストに組み込むなんて出来ないですよ!」
吉田「あー、はー、へー。作家人生で一番驚いたかも」
加藤「ええ!そうなんですか?」
吉田「ほら、イメージしてた千恵子そのままだからね。うん、まあ」

吉田はお茶を飲み干す。

加藤「ああ、それは驚きますね」
吉田「ははは。あ、この写真貰っても?」
加藤「え?それはちょっと」
吉田「ああ、すみません。妻にも見せたくて。そうですよね。お返しします」
加藤「ああ、なんだ。なら次の時に返していただければ、大丈夫ですよ」
吉田「え、あ。ありがとうございます」

○吉村家・居間(夜)
吉田は写真を見てため息を吐く。

吉田「千田成美ね」

吉田はテーブルにあるパソコンを開き、千田成美を調べる。
画面には千田成美の経歴が映っている。

○吉村家・玄関(夜)
吉村梓(30)は大荷物をもって入ってくる。

梓「ただいまー」

○吉村家・居間(夜)
吉田は梓の声を聞き、立ち上がる。

吉田「おかえり。楽しかったか?」

梓は大荷物をもって、居間に入る。
吉田は梓の荷物を受け取り、テーブルに置いたりして片づける。

梓「ええ、ええ!つい色々買っちゃった」
吉田「いいよ、いいよ。楽しかったなら」
梓「そういえば、鈴木先生の奥さん来てたの!旦那さんと一緒に」
吉田「え、鈴木先輩が?」

吉田は首をかしげる。

吉田「珍しいな。次のやつの取材かな」
梓「会えなくて残念だっていってたわよ。ほら、これドラマ記念の」
吉田「ええーいいのに」

梓は吉田にお菓子の箱を渡す。
吉田はお菓子の箱を受け取る。

吉田「嬉しいな。ここの饅頭好きなんだいよ」

梓はテーブルにある写真を見る。

梓「え!千田成美!」

吉田は気まずそうに頭をかく。

梓「あ、これドラマのキャストさん?」
吉田「そう、そう」
梓「え?お願いしたの?」
吉田「違う、違う!向こうが小説のファンでぜひやりたいって」
梓「へー、良かったじゃないですか。向こうは貴方の事覚えてるの?」
吉田「いやー知らないじゃないか?そもそも振ったやつこと覚えてるか?毎日のように告白されてた人だ」

吉田は唸って、腕を組む。

梓「まあ、確かに。覚えてたら気まずそう」
吉田「まあ、なんか。青春時代の思い出みたいなもんだしなあ」

梓は荷物を片付け始める。

吉田「なんか嘘みたいな人だったんだ。美人で誰にでも優しい。身なりもピシッとしてて、成績は良い方で、運動神経がいいのかスポーツもそつなくこなしてさ」
梓「はいはい。それで告白して振られたと」
吉田「はあ、だからなんかこっちだけ決まづいやつだよ」

吉田は頭をかく。

吉田「ああ、そうだ。担当さんがもしかしたらドラマの撮影見れるかもって言ってたぞ。一緒に行くか?好きだろう?」
梓「え!いいの」
吉田「ああ、良いって言ってたし」
梓「ええー何着ていこう」

梓は荷物をもって、台所へ向かう。
吉田はため息をはく。

○喫茶店・店内
アンティークが置かれている店内は少し薄暗く昭和を感じるようなしっとりした空気を出している。
吉田の座る椅子が軋む。
吉田は汗をハンカチで拭きつつ、うつむき加減でコーヒーを見つめる。
成美はサングラスをかちりと鳴らし、外してテーブルに置く。

成美「突然すみませんでした」
吉田「い、いえ」
成美「吉田先生にしか頼めないことがありまして」
吉田「は、はあ」

成美はコーヒーを飲む。
吉田は震える手でコーヒーカップを握る。

成美「鈴木先生と今でも交流があるんですよね?」
吉田「は、はい。まあ、昨日もあったので」
成美「昨日?彼はこっちにいるんですか?」
吉田「え?まあ、取材って言ってたかな」

成美は眉間に皺を寄せる。

成美「そうなんですか。こんなこと言うのはおかしいと思うんですけど、私と鈴木先生を合わせて欲しいんです」

吉田は顔を上げる。

吉田「え?なんでですか?」

成美はそっとコーヒーを見る。

成美「その。鈴木先生の作品に関わっていて」

成美は口を何度が開けては閉じる。

成美「ちょっとお聞きしたいことがあったんですけど」

成美は顔を上げて吉田を見る。

成美「先生もいつでも聞いてよいと言ってたんです。でも、連絡が取れなくなってしまって」
吉田「あーなるほど」

吉田は気まずそうに顔をかく。

吉田「鈴木先輩はそこらへん昔から適当なんですよね。悪意が有るわけではないので、言ったら会ってくれますよ」
成美「本当ですか!?」

成美は前のめりになる。

吉田「ええ、まあ。いつものことなら忘れてただけかと」

成美は眉間に皺を寄せる。

成美「忘れてた?」
吉田「いや、ああ、その。忙しい人ですので」
成美「そうですね。そういうこともあるんでしょうね」
吉田「まあ、まあ。奥さんに連絡しあたら確実に伝わると思うので」

成美は吉田を見る。

成美「奥さん?」
吉田「ええ、鈴木先生の奥さんです」
成美「結婚しているんですか?」
吉田「ええ、去年だったか。はい」
成美「去年?」
吉田「どうしたんですか?」
成美「去年のいつ頃です?」
吉田「え?あー6月だったかな」

成美は無表情になる。
吉田は身じろぐ。

吉田「どうしだんですか?」

成美は立ち上がる。

成美「ちょっと急用を思い出したので失礼します」

成美はテーブルに現金を置いて、店を去る。

To be continued…

感想

シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
今後の展開が気になるように制作しました。
伝わっている人には印象が良かったんですが、伝わらない人には気になる部分が多かったようで、もう少しシーンを選定した方が良かったと思いました。


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