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20枚シナリオ『貴方は私の』

シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:古痕


登場人物

江口麗奈(16)高校生
井上祐樹(17)麗奈の同級生
井上真里(22)祐樹の姉
美術部員
女子生徒

シナリオ

○マンション・305室・リビング(朝)
仏壇には5歳くらい女の子が笑顔で手を伸ばす写真が置かれている。
江口麗奈(16)は仏壇の前で手を合わせる。
リビングの中央にある大きなテーブルの上には置手紙と五千円が置かれている。
麗奈は椅子に置かれた通学カバンを開けて財布を取り出す。
五千円を財布にいれて、カバンにしまう。
カバンを肩にかけて、紙を丸めてゴミ箱に捨てる。
麗奈は振り向き、仏壇を見る。

麗奈「いってきます。お姉ちゃん」

○日谷高等学校・一階・廊下(朝)
廊下で複数の生徒が話している。
井上祐樹(17)は複数の男子学生と話している。
麗奈は横を通り過ぎる。
開けっ放しの教室の扉をくぐり、教室の中に入っていく。

○日谷高等学校・美術室(夕)
キャンバスに絵を描いている生徒やスケッチブックに絵を描いている生徒もいる。
麗奈はスケッチブックを広げて、外を見ている。

美術部員「あ、江口さん」

麗奈は振り向き、部員を見る。

美術部員「ちょっと写真とってもいい?」
麗奈「え?なんで?」

美術部員はスマホを見せる。

美術部員「これ、最近流行ってるAIアプリなんだけど、これで色んな年齢の人の顔を描いて練習しようと思ってるんだ。それでモデル探してるの」
麗奈「へー、面白いね。私もやっていい?写真撮りあおうよ」

美術部員は頬をかく。

美術部員「えー、へへ。うん良いよ」

○マンション・305室・リビング
麗奈はリビングに入ると、通学カバンを椅子に置く。
スマホを持って、祭壇の前にある写真を撮る。
じっとスマホを見る。

○駅前・コーヒーショップ(夜)
窓際にはパソコンを見ているサラリーマンやおしゃべりを楽しむ
2人組の女性がいる。
麗奈は空いている窓際の席に座り、
駅の入口を見ながらコーヒーを飲む。
コーヒーを置き、スマホを持つ。
窓の外には、駅の入口近くの柱に寄りかかり井上真里(22)が立っている。
麗奈はスマホの画面と真里を並べる。

麗奈「似てる」

麗奈はコーヒーを撮ってるようにしつつ真里を撮る。
スマホとコーヒーをテーブルに置く。
窓の外には井上が小走りで、真里に近づく。
麗奈はその様子を見ながら、コーヒーを飲み干して店から出る。

○日谷高等学校・一階・廊下(夕)
廊下には作りかけの看板や使いかけの道具が置かれていく。
麗奈は端の方に立ってスマホを見ている。
教室から荷物を持った女子生徒が出てくる。

女子生徒「あ、江口さん暇?」
麗奈「うーん。もうちょっとで乾くからそれまではね。ここから離れられないけど、何か手伝う?」
女子生徒「いやー、じゃあいいかな。あ!」

クラスメイトの視線の先には井上が立っている。

女子生徒「井上君!ちょっとこれ体育館にいる田中君に届けてくれない?」

麗奈はじっと井上を見る。
井上は女子生徒に近づく。

井上「今暇だし、いいよ」
女子生徒「ありがと!よろしく~」

女子生徒は井上に荷物を渡すと教室へ入っていく。

麗奈「井上くん?」

麗奈はじっと井上を見る。
井上は少し照れたように身をよじる。

井上「え、あ。え、江口さんどうしたの?」

麗奈はにっこりと笑う。

麗奈「ううん。気を付けてね」
井上「え!うん。ありがとう」

井上は小走りで体育館に向かう。
麗奈は井上の背中を見る。

○マンション・305室・リビング
麗奈は仏壇の前に立つ。

麗奈「何にも覚えてないのにね」

麗奈は写真を見て、スマホを取り出す。

麗奈「でも流石になあ。クラスメイト以外に接点もないし、無理かも」

スマホの画面には真里が映っている。

麗奈「そっくりな人と話したって」

麗奈は胸を押さえる。

○日谷高等学校・一階・廊下(夕)
射的屋へようこそと書かれた看板が、壁に立てかけられている。
麗奈は絵の具を片している。
井上が麗奈に近づく。

井上「江口さん、何か手伝おうか?」

麗奈は顔を上げる。

麗奈「ありがとう。これを美術室に片したいから持ってほしいかな」

井上は空のバケツや筆を持つ。

井上「他に何か持とうか?」
麗奈「ありがとう。他は」

麗奈は周りを見る。

麗奈「大丈夫だと思う。じゃあいこっか」

○日谷高等学校・一階・渡り廊下(夕)
麗奈は絵の具の入った大きめの木の板を持って歩く。
井上は空のバケツと筆をもって歩く。

麗奈「ありがとう。井上君とこうやって話すのって初めてかも」
井上「え、あー。そうかも」
麗奈「そっちの作業はどう?的づくりって結構大変?」
井上「え、どうかな。俺は陸上部の方もあるからあんま参加してないけど、皆楽しそうにやってるよ」

麗奈はじっと井上を見る。

麗奈「ふうん、そうなんだ」

二人は無言で数歩歩く。

井上「あ、え、江口さんは休日はなにするの?」
麗奈「え?」

麗奈は立ち止まる。
井上も立ち止まり振り向く。

井上「いや!変な意味とかじゃなくて、なんかその、気になって」

麗奈はじっと井上を見る。

麗奈「何それ。ふーん?そうだな、なんだろう」

井上は筆をバケツに入れたり、手に持ったりしている。

麗奈「散歩して次に描くものを探したり、映画を見たりするかな」
井上「そ、そうなんだ!映画」
麗奈「うん。いろいろ見るの。井上君は映画見に行ったりする?」
井上「えー、あー」
麗奈「ねえ、良かったらなんだけど。一緒に見に行かない?」
井上「え!」

井上は顔が赤くなる。
麗奈はにっこりと笑う。

麗奈「陸上部って忙しそうだから無理かな?」
井上「全然!い、いこう!」

○映画館・ロビー(夕)
真里はドリンクを麗奈に渡す。

真里「はい、これ」
麗奈「あ、ありがとうございます。いくらでしたか?」
真里「いいの、いいの!お姉さんのおごり」

麗奈は照れたように笑いドリンクを受け取る。

真里「私はここで失礼するけど、弟のことよろしくね!」
麗奈「あ、はい」

真里は手を振って、友人の元へ歩いていく。
麗奈は後ろ姿をじっと見つめる。
井上が小走りで近づく。

井上「ごめんね。姉ちゃん何かいってた?」
麗奈「ううん、なにも。むしろ、ごめんね。おごってもらちゃって」

井上は困ったように頭をかく。

井上「いや、うん。後で伝えておくから気にしないで」
麗奈「そう?でもいいなお姉さん」
井上「え?そうかな?」
麗奈「うん。私、お姉ちゃんいないから、ずっと話してみたかったの」
井上「へー、兄弟いないんだ?」
麗奈「ふふ」

麗奈はじっとドリンクを見る。

To be continued…

感想

シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
今後の展開が気になるように制作しました。
当時は評価がよく、続きが気になると思ってくれた人が多くて嬉しかったです。
今思うと、台詞などもう少し伝わりやすく出来たのではと思いました。

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