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イマドキの大学生は忙しすぎる
「あいつとんだね」と。
どうやら「とぶ」とはある人の連絡がつかなくなり、その人が団体から脱退しているとみなせるということらしい。
初めて人が「とんだ」とき、僕は驚いた。「とべるんだ」と。この世で、ある団体から消え去るのはどうも容易いのだ。
忙しすぎるせいだ。イマドキの大学生は多忙を極める。その一因はコロナ禍の最中に登場し、大学生の間に浸透したSlackとZoomだと思う。23時のミーティングというバケモノが誕生。仕事中の会社員のような速さで返信するのが習慣に。僕が所属していた学生団体は、25時にSlackで何か投稿したら1時間で20個多彩なリアクションが集う。さらに日程調整がなかなか合わない結果、ミーティングが23時から始まると告げられたことも多い。寝落ち通話でもないのに、いったい23時で話さなければならないものは何なのかい——まあ、実際ミーティング途中で寝てしまう人もいたね。
「若者は働きたくない」とマスコミが報じまくるが、人事や採用担当の方々はどうぞご安心ください。大学生として、イマドキの若者は働けると証言できる。
SlackとZoomの普及と浸透がもたらしたのは、参加できるコミュニティの増加だ。街中の大学生のSlackに覗いてみよう。Slackのワークスペースは5個ほどもあるだろう。コロナ禍以前は、話し合いを対面で行わなければならなかったので、分身できない限り行けるミーティングが限られている。なんせ23時にミーティングのために大学で彷徨くバカはいない。23時の大学、部室は飲んでいる酔っぱらいしかいなかっただろう。
しかしながらその結果、全てのコミュニティが代替可能な存在となり、少し肌が合わないと感じると連絡がつかなくなる。容易く脱退できる。なぜならこの団体が駄目だとしても彼・彼女のSlackにはまだ4個ほどの団体があるからだ。この団体にコミットしなければならない理由はどこにもない。
さらに、さほどイベントに来なくても団体にいつづけられる。なぜならSlackのワークスペースに入っているからだ。ただ団体へのコミットメントが下がる。イマドキの大学生は「だってその団体あんまり馴染んでいないもん」と反論するだろうが、コミットメントをせず、頻繁にイベントに来ないのであればいったいどうやって馴むのか。
自由を手に入れた。だがどこか寂しい。あたかも「あなたと関係を築けなくてもほかの人がいるんだ」、「あなたとの接点となるこの団体に来なくても私は別の団体にいけるんだ」とでも言っているように思う。
それとも、そう思うのは寂しがり屋の僕だけなのか。