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深夜のファミレスの距離感なんて知らないのに、俺は『ファミレスを享受せよ』を遊んで、知ったかぶってしまったのだ

俺は、ファミレスを享受してきた。

ファミレスは享受されるためにある。

だけど、俺はファミレスを享受できていない。

いったい、なんの話かわからない人のために説明すると『ファミレスを享受せよ』というゲームの話である。ゲームの話だ。ただ、したいだけだ。正確にはゲームの話ではない気もするが、このゲームを褒める言葉は、ネットにいくらでもある。どんなゲームなのかは、ほかのレビューを読めばよい。

『ファミレスを享受せよ』は、SteamとSwitchで出ているアドベンチャーだ。製品版には、追加要素としてネタバレを含めた「イラストギャラリー」などが収録されているが、もとはブラウザのフリーゲームである。

『ファミレスを享受せよ』を知ったのは、知り合いがX(旧Twitter)で紹介したゲームをDM(旧ダイレクトメッセージ)で猛烈にオススメしてきたことから始まる。その日の俺(旧俺)は、もうさまざまな出来事に疲れ果てていて、何もする気が起きなかった。

そんな状態だったので、ゲーム中の間違い探しに出てくる魚のようなアイコンをしたネット上の知り合いから、DMで「ファミレスを享受せよがオススメですよ!」と再三勧められても、まったく心が動かなかったのだ。

だがしかし。ゲーム画面を見ただけで、面白そうなのはわかっていた。

自分が長年ゲームに触れ続けてきたゲームへのカンが、面白いという信号を発していた。夜の黒と青、そして黄色だけで構築されたグラフィックも、たいへんセンスが良い。黒、青、黄の3色だけで世界を表現しきっている。なんともハイソでオシャレな表現ではないか。いや、少し待ってほしい。

……まぶしすぎやしないか?

俺はオススメされる画像を見て、なんて日当たりの良いファミレスなのだと思った。見てみたまえ、店内が月明りで照らされてまっ黄色じゃないか。カーテンもないので、窓際の席まで光が差し込んでいる。まっ黄色だ。

すごいあかるい

いくらなんでもまぶしすぎる。
ここまでまぶしいのは異常事態だ。こんなにまぶしいと、明かりに惹かれた蚊柱やカメムシなどが窓に張り付いて大変なことになるのではないか。

肌の色や服の色まで判別できないほどに明るい光が差しているとなると、このファミレスはちょっと普通じゃないのは間違いない。

普通じゃないファミレスを舞台にしたゲームという話を聞いていたが、まさか、ここまで光が差し込んでいるファミレスだとは思いもよらなかった。そのことが心に引っ掛かり、俺はついにNintendo Switch版を購入したのだ。

電灯だった

自分で買って確かめてみたら、日の光ではなく店内を照らす電灯の表現だった。俺の勘違いである。だが、それでもかなり明るい。外に光が漏れているじゃないか。このままだと、電灯の話になってしまうので話題を変えよう。

このゲームを褒める時、よく人は「深夜のファミレスのような距離感や空気感」と例えることがある。俺もX(旧Twitter)でこのゲームの話をしようとして、いかにも賢しげに使ってしまった。だが、そもそも俺は1人で行く深夜のファミレスの距離感や空気感自体が、よくわかっていなかった。知ったかぶって、深夜のファミレスの距離感や空気感などと言ってしまったのだ。

だって、俺はここまで穏やかな雰囲気のファミレスには行ったことがない。

友人や社会人の付き合いでいくファミレスの距離感は、おそらく違う。1人で自分の家の近くのファミレスに行かなければ、その距離感は掴めない。

まだ俺が都会にいた時、仕事を抜け出して1人で深夜のファミレスに入ったことはある。たいてい、俺は腹が減っていたのでタンタンメンやガッツリしたハンバーグなどを注文し、無我夢中で食べてすぐに出てしまっていた。

距離感も何も、あったものではない。
むしろ、深夜に仕事を抜け出した場合は吉野家や松屋に飛び込むことのほうが多かったかもしれない。紅ショウガをたっぷり乗せた牛丼をかき込む。

もはや、ファミレスを享受すらしていない。ああ、俺はやはりわかっていないのだ。恥ずかしい。まだ格好つけてしまっている。

話がずれてしまったが、俺はじつのところ「深夜のファミレスの距離感」と言うものがわからない。田舎に住んでいるので「深夜のファミレスまでの距離感」なら、よくわかる。永遠のように甘く遠い。歩いていくと割と怖い。最近は11時前には閉まる。なあ、君。ファミレスを深夜営業せよ。

しかし、これはファミレスを享受するゲームだ。「ファミレスを享受せよ」とゲームの中のキャラも言っている。それはつまり、ファミレスを享受しなければならないだろう。だとするならば、やはり行かなければならない。

幸いにも、ちょっと遠出すれば深夜まで空いているファミレスもある。

そもそも、深夜のファミレスの距離感と言われても何時からが深夜なのだろうか。厚生労働省で労働基準法について調べてみたら、深夜料金は午後10時から午前5時までを差すようだ。つまり、10時のファミレスでも深夜なのかもしれない。ラストオーダーが10時15分くらいでもいいのだろうか。

でもたぶん、現実のファミレスの空気感では、このゲームの穏やかさは表現できない気がする。ファミレスなのに、ファミレスではないからこそのファミレスなのである。このゲームでしか享受できない「ファミレス」なのだ。

結局、何の話だったのかよくわからなくなってしまった。
ただ『ファミレスを享受せよ』を遊ぶと、きっとこういう他愛もなくて意味もない雑談をしてみたくなるのかもしれない。そういうことにしておこう。

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