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アトラス35周年×政治要素の悪魔合体=キメンザかと思いきや、根底は王道のJ・RPG『メタファー:リファンタジオ』

アトラスの完全新規IP『メタファー:リファンタジオ』をクリアした。まず、結論から書くと王道ファンタジーRPGとして素直に面白かった。2024年に出た作品の中でも、かなりの上位に入るRPGなのは間違いないだろう。

難易度HARDでクリアしたが、濃密な80時間以上の旅(体験版10時間と合わせての計算)だった。三連休をゲーム漬けにして、平日の睡眠時間を削りながらプレイさせる力は、間違いなくアトラスのRPGだ。大きな悲しみと諦観を抱きながら遊ぶ「作り手に失望する」ような感覚はなかった。

細かい粗やシナリオ面での気になるところや、ややパターン化したサブダンジョンの省力化といった目につく部分はあるものの、押し切る勢いはある。

ひと言で表すなら「商業としてのゲームで最適解をはじき出すのがうまい」と言えるだろう。これは『ペルソナ3』以降の橋野桂氏のゲームの特徴でもある。アトラス的な尖り方を残しつつ、商業としての正解をはじき出す。

個人的な好み(自分は橋野作品だと『アバタールチューナー』は大好きだが、『ペルソナ5』は作品としての出来は抜きにして終盤のシナリオや政治観が好みではない)は抜きにして、売れるゲームを作るのがとてもうまい。

▲壮大な冒険を予感させる最初の砂漠。こういうフィールドはもっと欲しかったかも

どうしても、アトラスの小ネタが多い「スーパーアトラス大戦」的な部分が話題になりやすいが、新規IPなのでアトラスを知らなくても楽しめる。むしろ、知らないほうが純粋に楽しめるだろう。ここから入っても問題ない。

勇者が仲間たちと旅立ち、海や山を越えて魔王を倒しに行くファミコン時代の王道ファンタジーRPG、そこに政治部分をフレーバーとしてくわえて再解釈したような作品だ。割と素直に王道系である。限定版で堀井雄二氏と対談している理由がわかるくらい『ドラクエ』的な要素の再解釈でもあった。

それとは別に、35年でアトラスが自分の好みとは違う方向に変わってしまったこと(それが世間的には正解であること)が、自分の心に重くのしかかるゲームでもあったのは事実だ。面白いゲームではあったが、もはや自分が望んでいたアトラスの美学とは異なる美学だと、あらためて実感する内容でもある。2度の死を経て、『ペルソナ5』を経たアトラスはセガとなったのだ。

かつて、作中の思想や、哲学をネチネチとこねくり回して考察してはニタニタと楽しむ自分のような陰の者や、オカルト好きたちの共感を得るカルトなタイトルだった時代から、より多くの層へとターゲットをとるようになり、そうした要素は(ちゃんと調べると残ってはいるのだが)影を潜めた。アトラスを作り上げてきたものから何がなくなり、新たなスタッフが何を残そうとしているのか。思い出とともに、再確認する旅でもあった。

そうした、個人的なアトラス作品への思い出や思い入れを交えつつ、いったい『メタファー:リファンタジオ』はどんなゲームだったのか。遊び終えた感想を語っていこう。おそらく、相当に長くなるので覚悟して欲しい。


『Project Re Fantasy』から『メタファー:リファンタジオ』になるまでの長い道のり

『メタファー:リファンタジオ』は、2016年12月に『Project Re Fantasy』として発表されたアトラスの完全新規IPだ。突如、世の中に投げられた意識の高いコンセプトビデオとともに、何か新しい王道ファンタジーを始めるということしかわからない状態で発表され、発売までに8年かかっている。

もちろん、その間にはいくつかのコンセプトビデオや生放送などがあったものの、ゲームとしての正式な姿はわからないままであった。さらに、情報そのものも2017年の12月に公開されたコンセプトビデオのオマケ「中世の甲冑を着た騎士がチキンを貪り食う」という謎のイメージビデオを出したあとに情報が途絶えてしまう。

2019年の抱負などで開発が続けられていることは明言されていたが、一時期は開発中止の噂すら飛び交っていた。それ以前に、いったいこの謎のコンセプトビデオはなんだったのか。当時はとても不思議だったのだが……。

実は、この映像はヨルゲン・レス(Jorgen Leth)監督のドキュメンタリー『66 Scenes from America』に収められている1シーン「ハンバーガーを食べるアンディー・ウォーホル」の映像のオマージュだ。

当時は何がしたいのかがよくわからなかったのだが、2019年にバーガーキングのCMでアンディー・ウォーホルの映像が使われ、当時海外でCMが批判をあびていたことで、私はあらためて元の『66 Scenes from America』について調べなおした。そして、2023年に『メタファー:リファンタジオ』が発表されたことで、これは相当なコンセプトのネタバレであることに気が付く。

『66 Scenes from America』は、当時のアメリカ的な短い66の映像をつなげ合わせ、ランダムに1982年当時のアメリカの姿を見せるドキュメンタリー映画である。それは、アメリカのような多民族国家のメタファーを感じるファンタジーな異世界を舞台とした『メタファー:リファンタジオ』のコンセプトとしても合致するものである。『66 Scenes from uchronia』だったのだ。

「現代社会の鏡(メタファー)」として、さまざまな暗喩を仕込み、作中で物語とともに見せていく『メタファー:リファンタジオ』は、旅を通してゲーム中の舞台・ユークロニア連合王国の現実が切り取られていく。

ただのパロディーであるふざけた映像ではなく、どのコンセプトビデオよりも『メタファー:リファンタジオ』を明確に語るものだったのだろう。

そして、それらを作品の外でも作中でも一切説明しない(比喩ではあるが、何の比喩なのかはまったく語らない)という首尾一貫した姿勢は、現代の表現規制が激しいなかで、どう表現するかを考えたうえでのやり方であり、かつエンターテインメントに徹したままで尖れるものでもある。

また、ゲーム開始時の説明文ではあくまでも比喩ではなく、「実在の事物との類似点が見受けられた場合も、意図したものではなくすべて偶発的事象に他なりません」と、これまでの作品にはない注意書きがある。

タイトル名が『メタファー:リファンタジオ』の時点で、暗喩だろうと思えるのだが、あくまでも偶然ですよという形に留めているのも、作品を遊んで描かれた思想や皮肉、政治的要素を見れば納得できる内容だ。

たとえば、選挙要素はトランプ政権以降のアメリカの分断の暗喩かもしれない、街の名前などはモンテネグロなどの暗喩かもしれない、惺教はあの正教会の暗喩かもしれない、候補者たちの公約は、あの思想やこの思想の暗喩かもしれない……。そうしたいくらでも想像ができそうな現実の事物との類似点は、あくまでも偶発的事象でしかないと言い切る。きっと、設定資料などの本が出ても、政治観やネーミングの由来などを詳しくは語らないだろう。

政治を取り扱うことで、日本企業のゲームとしては神話や悪魔とは違う方向で尖ったままではいるし、エンターテインメントとしても両立している。

橋野桂氏のプロデュースタイトルが、ほかのアトラス作品よりも大きく売れる理由がわかる気がした。この発想力に勝つのは、相当に難しい話だ。

▲あくまでも比喩ではなく、偶発的事象だと前書きされたゲーム開始時の説明文

とはいえ、当初の発表から純粋なハイ・ファンタジーやまったく新しいシステムなどを想像していた人たちにとっては、正式発表時に何か違うと思ったのも間違いではないだろう。かなり、いつものアトラスの味付けや既存のシステムの集合体をベースにした、メタファンタジー的なイメージが強い。

外山 その後、実際のゲーム映像を絡めて開示されてきたときの印象は、正直、最初のイメージとは違うなと思いました。

https://www.famitsu.com/article/202410/20753

自分も、当初は外山氏と同じ感想を抱いた。作品の方向性を切り替えたタイミングで、早々に35周年お祭り作品として推すべきだったのではないか。ただ、そこは宣伝の問題で、ゲームの出来不出来とは関係ない話でもある。

宣伝面で言えば「メガテン・ペルソナを継ぐ、アトラスの次世代ファンタジーRPG」という文句でもおかしくはない。作品そのものが、35年の歴史でアトラス作品を愛してきたプレイヤーたちの体験。そのメタファーでもある。大量の小ネタの入れ方を見ても、お祭り作品。スーパーアトラス大戦だ。

しかし、単純に「お祭り」と言ってしまうと、アトラスネタが何故作中にこれだけ使われているのか。その本質やゲームを通して訴えたかった部分を見誤ってしまうだろう。ゲームの宣伝とは難しいものだと感じた。

メタファーをふんだんに入れた政治的な側面。アトラスの味付けが濃い王道ファンタジー

本作は、「ユークロニア連合王国」と呼ばれる架空の世界を舞台にしたファンタジーRPGである。王政が敷かれ、3つの国と8つの種族が混在するこの世界では、根深い差別や偏見がはびこっていた。

だが、王の死をきっかけに支持を集めたものが誰でも王になれるという「王の魔法」が発動。さまざまな候補者が公約を掲げながら対立するなか、主人公は「親友の王子にかけられた呪いを解く」ため、王を目指す旅を始める。

王を目指す選挙のような仕組みが根幹にあるが、あくまでも主人公の目的は「親友の王子にかけられた呪いを解く」こと。そのため、王を目指すのは呪いをかけた候補者・ルイに近づくためという目的が提示されている。

選挙で特定の思想を押し付けてくるゲームと言うよりも、かなり誇張された政治思想を持つライバルと戦いながら冒険の旅を繰り広げる方向性で、最初に危惧していたよりも思想的な面はうまく消臭されていると感じられた。

おバカな公約を掲げた候補者が乱立するのは、ある意味で都知事選のような状況を思わせる

『ペルソナ3』からその傾向はあったのだが、とくに『ペルソナ5』で顕著に感じたのが政治的要素の極端なカリカチュアライズ、戯画化だった。

橋野氏がプロデュースするアトラスのゲーム、とくに『P5』以降(正確にはP3からその要素はある)の作品は、ポピュリズム的な側面が多分に含まれている。ともすれば、大衆批判ともとれる内容を極端に戯画化して描いているのは、もはやストレートに誇張した形でテーマを描かないと大衆には伝わらないだろう、という確信めいたものがあるのではないかと思うほどだ。

それほどに近年のシリーズは非常にわかりやすく、敵側の思想やボスの見た目などを戯画化して、大きく誇張しながら滑稽に描いてきた。

テーマ性そのものに色濃く皮肉や現実のメタファーが用いられるのはアトラス作品が35年かけて培ってきたものでもあるのだが、あえて語らない『女神転生』シリーズと、語りすぎなほどに語る昨今の『ペルソナ(P)』シリーズは対照的でもある。しかし、これは現代なら当たり前の手法だ。

アトラス作品だけではなく、近年はとくにRPGにおける風潮として「説明は過剰なまでにしないと伝わらない」という空気を色濃く感じる。それ故に、メガテンもやがては「語っていく」物語になっていくのではないだろうか。

こうした手法で描く現代劇には弱点もあり、思想が合わない人や誇張されている部分が鼻につく人には不快感を与えやすい。そうした面でも、本作がより現代の鏡としての政治的要素を取り扱ううえで、ファンタジーになったのは納得がいく形である。現代へのカウンターとしての異世界だ。

▲作中の幻想小説に出てくる理想郷は、我々が暮らす現代に近いがより理想的でもある

本作は、ファンタジーとしての世界観を構築したうえで「あくまでもその世界における思想」として、無茶苦茶な公約を掲げた候補者や差別的な描写を入れ込んでいる。やたらと多い立候補者は昨今の都知事選と被るところがあるが、意外にサラッと触れていく程度なので鼻につくまではいかない。

シルバー民主主義的な主張で騒がれたキャラクターも、長命な種族としての主張として誇張しているので、あまり現代に当てはめるとストローマン論法になってしまうが、掘り下げずに候補者の1人として描く程度だ。

特定の思想を語りたいというよりも「政治の話はタブーではなく、もっと軽く触れていい」というメッセージが(結構直接的に)語られている。

肌の色ではなく、角や耳などの特徴で差別されることで現代を描く手法は、まさに現代的だ。昨今のポリティカルコレクトネスやDEIに縛られがちなゲーム業界の風潮に対して、異種族のメタファー(暗喩)を使うことで疑義を呈している。ユークロニア連合王国が多民族国家のメタファーを感じたり、かなり海外(主として北米市場)を狙ったシナリオだと感じた。

ただ、暴力行為で何とかせざるを得ないファンタジーRPGと、民主的な政治要素のかみ合わせは、ファンタジーでも少々かみ合わせが悪いのかもしれない。王道ファンタジーRPGとしては終盤まで楽しみつつも、政治的要素の帰結としては、終盤に若干齟齬を感じる部分もあった。とはいえ、政治要素はある種フレーバーで、全体的には冒険ものとして最後まで楽しめる作品だ。

わかりやすいコンセプトで誇張された8種族

実は『Project Re Fantasy』の時点で、今の種族名に繋がるヒントが存在している。発売前のコンセプトビデオにあった職業名からも推測できるようになっているのだが、各種族は現代的なレッテルのメタファーだ。

作中の描写やセリフと、コンセプトビデオのヒントから推測すると、クレーマーのクレマール族。ルサンチマンなルサント族。老躯で老愚で老害なローグ族。意識の高いイシュキア族。かまってちゃんのスラングneedyのニディア族。踊って騒ぐのが好きなパリピのパリパス族。優柔不断で決められないユージフ族。無力感を抱えて本音をムッツリと黙るムツタリ族となる。

コンセプトビデオだと種族名ではなく職業になっているのだが、

聖職者:劣等感を抱えた「ルサンチマン」
魔法使い:罪悪感を抱えた「クレーマー」
戦士:無力感を抱えた「ムッツリ」
盗賊:疎外感を抱えた「優柔不断」
地方領主:孤独感を抱えた「カマッテ」

という説明があり、今に至る種族名に生かされているのがわかりやすい。

もちろん、これらはOPの注意書きのように「実在の事物との類似点が見受けられた場合も、意図したものではなくすべて偶発的事象に他なりません」というものなので、設定資料集などで明言される可能性はないと思う。あくまでも、プレイヤーである我々がそう感じる偶発的な類似点だ。

幻想小説は民主主義のようでいて、共産主義も入っている。作者であるモアの名前がトマス・モアから取られているように、現代のような世界を「理想郷」として描きつつ、幻想的な世界をユークロニア(時がない、どこにもない理想郷=ユートピア)として名付けるのも含めて、現代の写し鏡だ。

エルダ族も、そうした法則から考えることもできるのだが……。

主人公のエルダ族がイシュキア族やクレマール族から差別され、しかし実態としてはパリパス族の方が現実的に酷い差別を受けている描写。作中で「不浄の種族」とモブから言われているシーンなど、暗喩を考察するとなかなかセンシティブかもしれない。複数の要素が混ぜ合わされている感じだ。

現実ではキリスト教の指導者など、差別されない側としての言葉に似ているのだが、これもほかの8種族と同様に、ストーリーで語られる意味とは別の現実的なレッテルのメタファーが隠されているのではないだろうか。何かに似ている発音やエルダ族の民族衣装、それらを合わせると歴史的に差別されてきた存在を合わせたメタファーかもしれないが、あえて深くは掘り下げない。意図したものではなく、あくまでも偶発的事象に他ならないのだ。

王道の冒険ファンタジーの現代版として見たほうがいい

とはいえ、本作はそうした政治的な要素はいっさい考えずに王道の新作ファンタジーRPGとしても楽しめる。むしろ小難しいことなんて、クリアしたあとから考えていい。カレンダーで制限された期間のなか、王都を飛び出して仲間たちと各所の問題を片付け、大小さまざまなダンジョンを攻略しながらメインの目的を達成する。アトラス流のRPGとして、磨き上げられている。

大きな都市はきちんと歩けるが、小さな村や絶景は1枚絵で割り切ってごまかしていたり、サブダンジョンが森や洞窟、塔などいくつかのパターン化されているところなど、省力化が図られているところはあるのだが、旅の表現としてはうまく作られているので気にはならなかった。1つ残念な点を挙げるとするなら、終盤のあそこがメインのダンジョンじゃなかったことかな。

たぶん、みんな言っていると思うので、どことは言わないがあそこは絶対に探索させてもっとイベントを入れるべき場所だと思うのだが……。

基本的に重たいダークファンタジーではなく、ギャグや力押しのイベントも多く、そういった面でも往年のゲーム的なファンタジーRPGでもある。

真面目に思想を考えて常に頭を悩ますシナリオではなく、あくでもベースはペルソナ5的。ギャグもシリアスも交えながら、仲間やフォロワーたちとの友情や絆で乗り越えていくPシリーズの延長線上だ。むしろ、Pシリーズよりも世界観との兼ね合いで、登場人物たちのポジティブさやギャグが目立つ。

不快感を与えないように気を使いつつ、メガテン的な思想対立を軽く振りかけながら、ペルソナシリーズのファンも狙っているのだと感じた。選挙や思想の要素は、発売前に予想していたよりもフレーバーや動機付けに近い。

器の大きさを見せつけるイベントが結構ある。本当は内心傷ついているかもしれない

ライバルのルイとは何度も衝突して印象付けられるようになっているし、器の大きさや「こいつ、演説のうまさと運だけで渡り歩いてるな……」となる強引な部分も、カリスマ性で押し切ってくる。近年のアトラスが出してきたタイトルのなかでも、敵のキャラが立っている部類に入るのは間違いない。ルイはメガテンを遊んでいる人ならば、あのキャラがモデルかつ暗喩だと出た瞬間にピンとくるが、本作独自のカリスマキャラとして確立できている。

終盤、良い意味での『P5』っぽさと手癖としての『P5』っぽさの両方を感じてしまうところもあったが、政治ネタを入れ込んでいるので気を使ったのはわかる。やや、政治×王道ファンタジー要素がケンカしている部分はあるものの9月までの冒険は文句なしに楽しかったし、終盤も王道ファンタジーRPGとしては納得できたので、新規IPの1作目としては大成功と言えるだろう。

開始直後からぶち込まれるメタフィクションと、ペルソナ要素多めなスーパーアトラス大戦

完全新規IPではあるのだが、良いか悪いかはともかく本作はかなり既存のアトラス作品を感じる35周年作品でもある。体感としてはペルソナ4割、世界樹3割、メガテン2割、その他アバタールチューナーなどのアトラスゲー1割くらいの割合で、要素が混ざりあった作品なので、良くも悪くも古いアトラス作品を知っているほど、何から持ってきたのかわかる小ネタが多い。

ボットやブリザーなどの属性魔法名は、初代『デジタル・デビル物語 女神転生』から取られている。これは同じ橋野作品でもあり、真ではなく「新・女神転生」としての側面もあった『デジタルデビルサーガ アバタールチューナー』では、アイテム名として採用されていた。どうも、それまでとは異なる新規IPを作る時に、あえて旧作の魔法名をつけている気がする。

オッドアイで妖精を連れている主人公は『グローランサー』のカーマインを思わせる。大統領選ではないが、ファンタジーで選挙という時点で『グローランサー』シリーズとの符号も感じられるし、意図的かもしれない。

開き直った意図的な既視感は、思っていた以上にいつものアトラスである。何せ、OPにドンと東京タワーが映り、本に挟まれる描写が入るくらいだ。幻想世界の小説として描かれる世界をわかりやすく開幕から描写している。

いきなりドカンと東京らしき場所が映るオープニングムービー

昨今は、インディーゲームなどでもメタフィクション的な要素がある場合に冒頭から提示する作品が増えているが、本作でもプレイヤー自身の名前と主人公の名前を別々に入力させるなど、冒頭からメタ的にプレイヤーは別にいることを意識させている。最初から第四の壁を超える作品も珍しくなくなった今だからこそ、あえてやれる描写でもあるだろう。

カレンダー式の進行はPシリーズでおなじみだが、コミュレベルはイベントが発生したら必ず上がるように改善されている。専用のペルソナを作っていく必要はないし、スケジュールもカツカツではなく、ギチギチ。常に何かしらの行動を能動的に起こしていれば、ランクが満たせるようになっている。

むしろ、ここまで簡易化するなら普通にカレンダーなしでもいいのではないかと思うくらい、必要性が学園ものであるPシリーズよりは薄かった。

戦闘はペルソナシリーズのワンモアプレスではなく、『真・女神転生III』のプレスターン。防御はあるが真IIIベースなので、最近のプレスターンとはちょっと違って「次に回す」を選ぶと半プレスのアイコンは消える仕様だ。

敵の弱点をついても総攻撃はないが、合体技の「ジンテーゼ」によって強力なスキルを発動できる。ペルソナシリーズでは『ペルソナ2』から採用されており、『アバタールチューナー』でも取り入れられていた要素だ。

悪魔やペルソナではなく、今回は職業としてのジョブチェンジ、アーキタイプを付け替えていくのだが、この育成も『デジタルデビルサーガ アバタールチューナー2』のマントラヘキサドライブを簡易化したようなものである。知っている単語がスラスラ出てくるくらい、アトラスのシステムが詰めあわされて面白いところだけ引っこ抜かれた感じだ。システムの悪魔合体。

戦闘中にペルソナチェンジができない戦闘と、MP管理が重要となるバランスは、『世界樹の迷宮』シリーズのカツカツ感を思わせる。世界樹要素はほかにも大きく取り入れられているが、ここであげるのは割愛しよう。

2周目から選べる難易度の「King of kings」は、ナムコ時代にアトラスが作っていたゲーム『キングオブキングス』。脱出アイテムが世界樹の「アリアドネの糸」だったり、『ノーラと刻の工房』の激堅黒パンが出ていたりと、アトラスセルフオマージュは非常に多い。気がついてない部分もまだまだあるだろう。ハッキリ言ってあげるとキリがないくらいあるので、とても書ききれない。金を稼ぎやすいとはいえ、マッカビームは不必要なオマージュ。

秩序や混沌をセリフにもにじませてくるが、そこが本筋ではない辺りは『アバタールチューナー』シリーズを思いだす。だが、シナリオ自体はまったくアバチュではない。そもそも、本作には「現代の神話そのもの」がない。そこに関しても、ちゃんとした理由があるので『メタファー』ではOKだ。

アーキタイプの「デビルサマナー」が悪魔を呼び出すのも、過去作の要素だ。デビルサマナーなので、戦闘中に悪魔を呼び出して使役する。

実は、呼び出される悪魔にも、ちゃんと理屈がある。
これもまた人によっては大きなネタバレなので、一番最後に載せておこう。

もちろん、これらは適当に入れられたものではなく、作中できちんと意味を成している。惜しむらくは、さまざまな部分にアトラス要素があるもののネタバレになるので詳しく語れないことだ。また、アトラス以外にもヒエロニムス・ボスの宗教画などがモチーフとなる敵のデザイン、選択肢のセリフ、盛り上がるシーンの演出などなど、冒頭からラストに至るまでそうした引用が徹底している。だが、徹底しているが故に元ネタを明かせない。

金子一馬デザインから離れたペルソナシリーズは、通常ボスのデザインやラスボスのデザインが個人的にしっくりこなかったのだが、本作は通常ボスからラスボスまで「メタファーという作品としての意図」「デザイン元からのインスピレーション」がわかり、納得できるのもすごく良かった。あえて、そうした理屈をゲーム中や見聞録でもいっさい説明していないのも潔い。

ヒエロニムス・ボスの絵をモチーフとした大ボス・ニンゲンたちのデザインは、元の意匠を生かしつつ本作としての意図を組んだうえでリデザインされてカッコ良かったり、禍々しかったりする。ちょっとグロすぎる。欲を言えば、もっとボスモチーフのニンゲンを見たかった。金子一馬氏の悪魔絵からの脱却かつ、作品のモチーフとしては、これ以上ないくらいの正解だ。

ただ、悪魔全書ならぬニンゲン全書がなく、個々のニンゲンの背景がわからないのは意図的なのだろうが、名前の由来に関しては知りたかった。ラテン語かエスペラント語で語源と思われるものは調べたのだが、確証がないのだ。悪魔を仲間に出来ない『アバタールチューナー』の時も、似たような欠点を感じていたが、あちらは神話という背景があるのでキャラ(悪魔)の下敷きとなる設定やエピソードが現実にある。こちらは、背景がわからない。

あの世界のどこで、どんな被害があったのかなどの図鑑が欲しかった。とくに『聖アントニウスの誘惑の三連祭壇画』の右下にいる、刀が刺さった尻と足だけのやつが元ネタのニンゲン。アイツが気になって仕方がなかった。

ボスに限らず、本作は宗教画の要素がたくさんあるようにも思える。グラフィックが油絵風の背景なのも、意図的だろう。

作品の哲学に沿ってデザインされている、不安感のあるUI

バトルのUIは、『ぺルソナ5』からの直感的かつビジュアルで魅せる方向のUIになっている。本作、見づらいという意見がとても多いのだが、それもそのはず。インタビューなどで語っていた「不安を乗り越えるというテーマ」に沿って、不安を感じさせるUIになっているからだ。

だからこそ、色合いから常に揺れている表現、ペンキをぶちまけたようなデザインなど、プレイヤーに不安を抱かせるように作られているのだろう。

さらに、本作では「王の魔法」によって常に王様に見られているという状況をUIで表現している。プレスターンアイコンの横にある王の顔は、わざわざターンが交代するたびに指さしてくれるし、勝利時は血塗られたレッドカーペットを歩く主人公たちを「王の顔が見下ろしている」視点で表現されている。アトラスのUIのなかでも、かなりクセが強いのはそのためだろう。

「思考」が単語となって飛び出している様子を表現しているメニュー画面では、各項目で腕や足を「王が見ている」。敵の性能をアナライズしたときも巨大な目で王が見ている。何かに見られている不安感が常につきまとう。

あまりにも、思想が強いUIだ。見やすさを置き去りにしているので、ハッキリ言えば『ペルソナ5』のほうがバランスが良い。だが、作品の世界にしっかりあっているUIではある。ただ、カッコつけているわけではないのだ。

正直、UIに関しては橋野氏がリリースする本家ペルソナシリーズはかなり首尾一貫とした哲学のもとに作られている。これは、同じ系列のスピンオフ作品とも一線を画しているのだが、本作に関しては哲学が前面に出すぎて目が痛かった。『P5』のほうがすっきりしていて見やすいくらいだ。

そろそろ、スッキリしたデザインでシンプルなUIも見てみたい。

ちなみに、ネタバレと勘違いされそうなので先に書いておくと、あくまでもデザインの話なのだが、本作の世界地図は正面から見た人間の脳のような形をしている。これも、考察させる要素として面白い。トマス・モア『ユートピア』の挿絵をベースに、より脳のような形にアレンジされた大陸の形となっているのだ。

これはおそらく、アトラス35周年ネタが仕込まれているのと同様で、ゲームを遊ぶプレイヤーの体験としてのメタファーを表しているのではないだろうか。今まさに、プレイヤーがコントローラーを握って脳で認識している目の前のゲームの世界、という意味合いのデザインなのだろう。

物語とはまったく無関係に、こうしたメタファーが仕込まれているのは過去のアトラス作品のようで、自分はとても好きな部分だ。

メタファーの世界地図(セガのトピックより)
正面から見た人の脳(イラストACより)

遊んでいて、アトラス作品の思い出を喚起するようにできている反面、今に至るアトラスの変化を突きつけられる内容でもある。はじめて『真・女神転生』に触れて衝撃を受けたあの日の思い出は、脳に焼き付いている。

『真・女神転生デビルサマナー』や『デビルサマナー ソウルハッカーズ』の没入感が好きで、意味もなく矢来銀座やあかねモールをうろついていた。

転校していじめを受けたなかで遊んだ『女神異聞録ペルソナ』に救われ、曲が大好きでサントラを買って、何度も泣きながら聞いていたあの日。ブラウンもなんじょうくんも、自分にとっての友人だったあの日。

『ペルソナ2罪』のラストに納得がいかず、ファンサイトで論争した日々。攻略本に罰も作っていると伏せ字で書かれていて、発売を待った日々。

『PERSONA』で曲が差し替えられたことにまったく納得できず、当時レビュワーをやらせてくれと何度も言っていたら、編集に怒られた思い出。

ゲームライターとなって仕事で関われるようになり、表現やページ数で編集と何度もケンカしながら、少しでも売れて欲しいと願って雑誌や書籍で書き続けてきたアトラス関連の記事。希望も絶望もアトラスのゲームで学び、仕事も人生も、アトラスのゲームで変えられてきた。

アトラスのゲームは、大きく分けて橋野桂氏の作風とそれ以前で分けられる。鈴木大司教が顔となっているファミコン、SFC時代のカルトマニアックな時代から、SS、PSでのいわゆる「アトラス」なイメージが確立した時代。岡田耕始氏、金子一馬氏の熱狂的なファンが支え、悪魔絵などの今に至る基礎が大きく作られた時代だ。『真・女神転生III』や『デジタル・デビルサーガ』は、こうした作風と橋野氏が混ざり合ったタイトルともいえる。

そして『ペルソナ3』以降の橋野氏によるペルソナ時代。さらに細分化するならば『ペルソナ5』のヒットによる、グローバルを見据えた大衆化路線が現在のアトラスを支えている。『ペルソナ4』よりも、さらに推し進められた現在の路線はそれはそれで好きだが、あまり好みの方向性ではない。

だからこそ『真・女神転生V』は好きだったし、 悪魔の裏庭や仲間(仲魔)の掘り下げがある『真・女神転生Ⅴ Vengeance』は、もっと好きな作品だ。

変わることは悪いことではない。
ただ、寂しいと感じる心に嘘はつけないだろう。

たまに、〇〇やってないだろみたいなことを言われたり書かれたりしてきたので、良い機会だからこれまで遊んできたアトラスゲーをまとめておこう。

他社製含むプレイ済みアトラスタイトル(自分がプレイした機種)
・コンシューマー
『銀河伝承』
『デジタル・デビル物語 女神転生(FC、メガテンα版)』
『バイオ戦士DAN』
『えりかとさとるの夢冒険』
『あっぱれ! ゲートボール』
『ダンジョンエクスプローラー』
『究極タイガー』
『パズルボーイ』
『PC原人』
『デジタル・デビル物語 女神転生II(FC、メガテンα版)』
『ビックリマンワールド 激闘聖戦士』
『パズルボーイII』
『チキチキマシン猛レース』(FCのみ)
『真・女神転生(SFC、PCE、MCD、PS、ゲームアーカイブス、GBA、i-revo、スマートフォン、Switchオンライン)』
『女神転生外伝 ラストバイブル(カラー版、3DSVC、ゲームギアミクロ)』
『女神転生外伝 ラストバイブルII(カラー版、3DSVC)』
『魔神転生(SFC、i-revo、VC)』
『カブキロックス』
『真・女神転生II(SFC、PSドミネーター版、PS修正版、ゲームアーカイブス、GBA、i-revo、スマートフォン、Switchオンライン)』
『豪血寺一族』
『真・女神転生if…(SFC、PS版、ゲームアーカイブス、i-revo、Switchオンライン)』
『魔神転生II SPIRAL NEMESIS(SFC、i-revo、VC)』
『女神転生外伝 ラストバイブルスペシャル』(ゲームギアミクロレッド)
『アナザ・バイブル(GB、メガテンα版)』
『ラストバイブルIII(SFC、VC)』
『旧約・女神転生(SFC、VC)』
『ジャック・ブラザースの迷路でヒーホー!』
『豪血寺一族2 ちょっとだけ最強伝説』
『峠KING THE SPIRITS』
『ガンバード』
『真・女神転生デビルサマナー(SS、悪魔全書とセットの修正版、PSP)』
『首領蜂』
『真・女神転生デビルサマナー~悪魔全書』
『ストライカーズ1945』
『女神異聞録ペルソナ(PS、PSクラシック、PSPのPERSONA)』
『プリクラ大作戦』
『戦国ブレード』
『Bloody bride いまどきのバンパイア』
『グルーヴ オン ファイト 豪血寺一族3』
『南方拍堂登場』
『怒首領蜂』
『RONDE -輪舞曲-』
『デビルサマナー ソウルハッカーズ(SS、PS、3DS)』
『プリンセスクラウン(SS、PSP、十三機兵の先着特典版)』
『スノボキッズ』
『デビルサマナー ソウルハッカーズ 悪魔全書 第二集』
『レブス』
『ダークメサイア』
『サウザンドアームズ』
『ハムスターパラダイス』
『ペルソナ2 罪(PS、PSP)』
『魔剣X(DC、PS2の魔剣シャオ)』
『グローランサー』
『ペルソナ2罰(PS、PSP)』
『デスピリア』
『真・女神転生 デビルチルドレン 黒の書(GB、VC、PS版)』
『真・女神転生 デビルチルドレン 赤の書(GB、VC、PS版)』
『アイシア』
『爆熱ドッジボールファイターズ』
『真・女神転生 デビルチルドレン 白の書』
『BUSIN ~Wizardry Alternative~』
『グローランサーIII』
『真・女神転生 デビルチルドレン 光の書』
『真・女神転生 デビルチルドレン 闇の書』
『真・女神転生 NINE』
『虹色ドッジボール 乙女たちの青春』
『真・女神転生III NOCTURNE(PS2、マニアクス、マニアクスクロニクル、PS4とPCとSwitchのHDリマスター)』
『真・女神転生 デビルチルドレン パズルdeコール!』
『真・女神転生 デビルチルドレン 炎の書』
『真・女神転生 デビルチルドレン 氷の書』
『BUSIN 0~Wizardry Alternative NEO~』
『グローランサーIV』
『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』
『九龍妖魔學園紀(PS2、re:charge、アークが出したHDリマスター)』
『ステラデウス』
『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー2』
『新世紀勇者大戦』
『超執刀 カドゥケウス』
『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』
『ペルソナ3(PS2、FES、PSPのポータブル)』
『グローランサーV』
『カドゥケウスZ 2つの超執刀』
『世界樹の迷宮(DS、3DSの新、SwitchのHDリマスター)』
『オーディンスフィア(PS2、リメイクのレイヴスラシル)』
『グローランサーVI』
『カドゥケウス ニューブラッド』
『世界樹の迷宮II 諸王の聖杯(DS、3DSの新、SwitchのHDリマスター)』
『ペルソナ4(PS2、VitaとPCのゴールデン)』
『救急救命 カドゥケウス2』
『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王(サントラ付き、マニクロ付き)』
『女神異聞録デビルサバイバー(DS、3DSのオーバークロック)』
『真・女神転生 STRANGE JOURNEY(DS、3DSのDEEP)』
『世界樹の迷宮III 星海の来訪者(DS、SwitchのHDリマスター)』
『東京鬼祓師 鴉乃杜學園奇譚』
『HOSPITAL. 6人の医師(WiiU)』
『ラジアントヒストリア(DS、3DSのパーフェクトクロノロジー)』
『キャサリン(PS3、PS4とswithのフルボディ)』
『ノーラと刻の工房 霧の森の魔女』
『デビルサバイバー2(DS、3DSのブレイクレコード)』
『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』
『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』
『真・女神転生IV』
『ドラゴンズクラウン(PS3、Vita、PS4のプロ)』
『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス』
『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド』
『世界樹と不思議のダンジョン』
『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト(Vita)』
『幻影異聞録♯FE(WiiU、SwitcuのEncore)』
『真・女神転生IV FINAL』
『世界樹の迷宮V 長き神話の果て』
『ペルソナ5(PS4、PS4とSwitchのロイヤル)』
『世界樹と不思議のダンジョン2』
『ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト』
『ペルソナ5 ダンシング・スターナイト』
『世界樹の迷宮X』
『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス』
『十三機兵防衛圏 プロローグ』
『十三機兵防衛圏(PS4)』
『ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ(PS4、Switch)』
『真・女神転生V(Switch、PCとSwitchのVengeance)』
『ソウルハッカーズ2(PS5、Xbox、PC)』
『ペルソナ5 タクティカ(Xboxゲームパス)』
『ペルソナ3 リロード(Xboxゲームパス、エピソードアイギスも同様)』
『ユニコーン オーバーロード(Switch)』
『メタファー:リファンタジオ(PC、PS5は撮影用で体験版のみ)』

・携帯電話(機種はドコモ900シリーズ、サービス名はメガテンαなど)
真・女神転生if…ハザマ編』
『真・女神転生20XX』
『真・女神転生ピンボール JUDGMENT』
『ステラデウス~漆黒の精霊~』
『女神異聞録ペルソナ 異空の塔編(携帯、Switch)』
DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー A’sTEST Server 完全版
女神転生QIX ペルソナ3』
『女神転生CHAINING SOUL ペルソナ3』
『真・女神転生 デビルコロシアム 20XX』
『魔神転生 blind thinker(携帯、Switch)』
『デビルサマナー ソウルハッカーズ Intruder』
『女神転生外伝 新約ラストバイブル(携帯、Switch)』
『ペルソナ2 罪 LOST MEMORIES』
『アイギス THE FIRST MISSION(携帯、Switch)』
『ペルソナ3エム』
『魔神転生 blind thinker II』
『真・女神転生II外伝 魔都崩壊』
『デビルサマナー ソウルハッカーズ NEW GENERATION』
『女神転生外伝 新約ラストバイブル II 始まりの福音(携帯、Switch)』
『ペルソナ2罰 INFINITY MASK』
『ペルソナ モバイルオンライン』
『女神転生外伝 新約ラストバイブル III 夢幻の英雄(携帯、Switch)』
『ペルソナ3 エスケープ』
『世界樹の迷宮 MOBILE』
『デビルチルドレン(Mobage)』
『真・女神転生 DEVIL COLLECTION』

・スマートフォン
『D×2 真・女神転生リベレーション』

・ブラウザゲー、無料配布、脱出ゲーム、ボードゲームなど
『真・女神転生 ONLINE IMAGINE』
『ペルソナ3 ザ・ナイト・ビフォア』
『ペルソナ アインソフ』
『真・女神転生 SYNCHRONICITY PROLOGE』
『ドラマチック謎解きゲームCD 真・女神転生 明ケナイ夜カラノ脱出』
『ペルソナVS』
(TPRGはいくつか読んでいるものの実際にプレイできなかったので除く)

・その他(アスキー作品など)
『偽典・女神転生 東京黙示録(PC-98、Win)』
『デジタル・デビル物語 女神転生 日本テレネット版(PC8801mkIISRゲームリバイバルコレクション)』
『真・女神転生 デビルチルドレン メシアライザー』
『真・女神転生トレーディングカード カードサマナー』

・旧アトラススタッフが辞めてから関わっているゲーム
『新世黙示録 ―Death March―』
『モナーク/Monark(Switch)』
『カリギュラ(Vita、PS4とSwitchのオーバードーズ)』
『カリギュラ2(PS4、Switch)』

自分で書き起こして、ちょっとドン引きしたのだが、流石にすべてのアトラス開発をあそぶまでには至っていなかった。食費を削り、バイト代を削り、社会人になって生活費を削り、買い続けていた、どうでもいい自分の人生とともにある歴史だ。ゲームライターとして雑誌で応援することを心に決めるまで、理想が燃え尽きて辞めるまで、人生を変えてきた作品たちとも言い換えられる。35年の歴史とともに、自分のアトラスゲーの歴史もあった。

リアルタイムではなく、『真・女神転生』のあとに『女神転生』『女神転生II』を遊んでいたり、流石に大人にならないと買えないので働いてから購入したタイトルも多いのだが、掲載したのはそれぞれ全ルート遊んできた。

自分もまだまだであるが、毎回アンケートを入力するときに死ぬほど苦労するので、プレイ済みタイトルの聞き方はもう少し考えて欲しい。もっとも、もうあの長いアンケートに答えることはないだろう。未来は若者の物だ。

世界樹よりの難易度調整を感じる「いつも敵が叫んでプレスを増やす」プレスターンバトル

バトルに関しては良くできていて楽しかったのだが、爽快感という面では『 真・女神転生Ⅴ Vengeance』のプレスターンに軍配が上がる。本作は、どちらかと言うと世界樹のようなカツカツ感とシビアさを楽しむ作りだ。

だからこそ、全滅するのがわかってもアーキタイプの編集画面まで戻れない点は気になった。また、剣を振って先制を取るアクションとしては、メタファー≧真V>>>幻影異聞録>ソ2>真IV(エストマソード)くらいのやりやすさになっているが、アクションとしてはこなれていない部分も目に付く。

プレスターンは、ガッチガチかつカレンダー制で装備の購入やアイテムの補充タイミングが縛られていることもあり、難易度が高いというよりも手間がかかる仕様だった。終盤はこちらもインチキめいたアーキタイプなどで手数を増やせるのだが、ボスもザコもプレスタ―ンアイコンを平気で増やす「魂の叫び」という技を使ってくる。どいつもこいつも叫んでいる。

敵が手数でインチキするのをしのぐバランスなので、カロリーが高かった。

▲試しにビギナーに変えて挑んでみたら、やはり叫んでいてビックリした。魂が叫びすぎ

ディーラーのアクションで金を稼ぐバランス。戦闘でも困ったら金をばらまく戦い方が強いという狙った調整は嫌いではない。やはりファンタジーの選挙でも、カネをばらまくやつが強いのだ。何か誤解されそうな戦闘である。

ハードでプレイしてもMP管理が面倒で、攻略と育成を含めたカレンダーを楽しむ作りなのだろうが、育成面では足かせになっているようにも感じた。

難易度のキングオブキングスは1周目で選んでみたかったが、本作はカレンダーの関係上、詰みセーブが発生しやすい。どうしても抜けられなくなった人のために、難易度を下げることで対処できないモードを1周目に置くわけにはいかなかったのだろう。準備やレベル上げが出来ないタイミングの詰みセーブがいくつかあるので、セーブは分けたほうがいい。

完全版は出るかどうか。大型DLCはありそう?

よく言われるのが完全版だが、本作単体で話は完結している。終盤明らかに「ここにダンジョン入れられたよね?」と思える部分や、ペルソナシリーズの3学期のようにイベントを差し込む余地はあるが、Steamで出している以上海外ユーザーにも文句を言われるので完全版は出さないと思われる。

また、出ないと思う根拠としては、先制時とバックアタックで戦闘BGMが違うことが挙げられる。今までの完全版では目玉のように毎回やってきた(P3の場合はリメイクとなるP3リロードで採用されていた)のだが、今回は最初からBGMが違う。よって出ないだろう。

出そうな根拠としてはアトラスだから。
根拠があまりにも強すぎる……!

とはいえ、現時点の自分の予想だと完全版は出ないと考えている。エルデンリングのような大型DLCで後日談、もしくはおなじみのすっ飛ばす期間に、何かをねじ込むのではないだろうか。毎度おなじみ謎の少女、第10の種族。無印では語られなかった深層が、いま明かされる(語られなかった深層が別に明かされない)。

ゲーム自体は満足だったが、残念だったのは35周年をうたうヒストリーブックに、金子一馬氏などの退社したスタッフのコメントがなかったことだ。(『世界樹の迷宮』を手掛けた新納一哉氏のコメントはあった)

ただ、自分は絶対ないという確信があったので驚くべきことではなかった。

アトラスは、これまでも(サントラのブックレットなどで個人が触れる場合を除いて)過去のスタッフにはあまり触れない傾向にあったので、むしろ目黒氏の退社に関するコメントを出しているほうが例外なのである。

これは、目黒氏が退社後もフリーランスの作曲家として、今後も音楽面でアトラス作品に関わっていくという事情があるのも大きいだろう。

悪魔絵で多大な貢献をしていた金子一馬氏の退社にもコメントがなく、ヒストリーブックにない時点で何かがあったことは想像に難くない。アトラス側がオファーしなかったのか。金子氏が断ったのか。外からではわからない。

いろいろあったとしても、表面上は退社に関するコメントを出して取り繕うポーズくらいは見せたほうが良さそうなのだが、アトラス作品の継承をしている開発と、経営・広報の方針は違うのかもしれない。

スクウェア・エニックスで言えば、ドラクエシリーズの記念作に故・鳥山明氏がコメントを寄せないようなものなので、やはり違和感は大きい。

『anan 2024年10月23日号』のアトラス特集では、P44に橋野氏と副島氏のインタビューが載っている。ここで、副島氏は先輩のキャラクターデザイナーや他にないものを描く人、という言い方をしているのだが、かたくなに金子一馬という名前は出てこない。スクエニで例えれば、ドラクエの話をするときに「有名な漫画を描く人がキャラクターデザイナーをしてました」みたいな言い方をするようなものなので、やはり不自然だ。『ペルソナ5』のインタビューなどでは、金子氏の名前も出ていたはずなのだが……。

一方で、P80にあるオモコロ特集のほうでは永田氏が好きなクリエイターとして金子一馬氏の名前を挙げているので、より不自然さが目立った。

何があったのかはアトラスか金子一馬氏が語らない限り、永久に不明のままだろう。スタッフロールの悪魔デザイン部分にはDemon designとして金子一馬氏の名前があるので、完全なタブーではないと思うのだが謎が深まる。

神話・伝承から離れた完全新規IPの誕生。生まれ変わった新アトラスからの感謝のタイトル

ここ数年、個人的にアトラスの作品で失望することが多かった。2024年になって良い作品も多く生まれているが、もはや熱意を取り戻せないほどに。

アトラスのゲームを仕事でレビューしたり、オススメしたくなくなったりした結果、ビデオゲームに対する熱量も冷めつつあった。

それは、自分の天職だと考えていたゲームライターを辞める大きなきっかけとなっていった。自分からゲームへの執着を失わせ、新しい道を歩ませる決意をさせるほど、ここ数年の作品には失望が重なることが多かった。

本作は完全な新規IPというよりも、まだ「お祭り」的な要素はあるが、金子一馬氏の悪魔イラストから脱却した作品としてやっていけることを示している。これが作れるなら、アトラスはまだ歴史の継承も、新しい1歩も踏み出せるのだろう。それはもう、自分の好みとは違う方向性になるとしても。

自分にはもう、かつてのようなアトラスへの熱狂はない。
今後も、常に新しいアトラス作品をプレイするかは、わからない。
少なくともソシャゲである『P5X』を続ける気力は、あまりない。

35周年記念の作品となる本作を遊んだことで、アトラスの中で今後目指していきたいものと、捨て去りたいもの。残したいものが見える気がした。

今のアトラスが目指している美学と、過去のアトラスの美学。
それは似て非なるものになるのかもしれない。

だけど、『メタファー:リファンタジオ』は遊んで良かったと思う。

このレベルの職人芸で作り込んでいけば、アトラスは往年のスクエニ(スクウェア)のようなRPGで名を馳せる大会社になっていくだろうとも思えた。

そして、そこにはもう、自分が好きな古いアトラスの姿はないこともわかったのだ。けれど、かつてのように延々と荒れてゲーム業界そのものに失望をしてしまうほどの苦しみはなかった。作品に希望を見ることができたから。

ゲームへの愛情が、再び、かすかに、自分のなかへ灯るのも感じられた。

これからも良いゲームをお願いします、新しいアトラス。

そして、さようなら。
今まで良いゲームをありがとう、
私が好きだった、古き時代の、アトラスよ。


















オマケ:9月以降のネタバレ注意(デビルサマナーのアーキタイプの正体)

ゲームを進めて9月以降、ユーファのランクが途中の状態で鎧戦車に乗ると「デビルサマナー」のアーキタイプについて教えてくれる。実は、本作で呼び出している悪魔は「心の海」から呼び出したものなのだ。

……。

デビルサマナーじゃなくて、ペルソナ使いじゃねーか!

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