【どまん中袋井ぽたりんぐEp1《同笠海岸を目指して!紅葉が彩る秋うららの遠州三山》】SURUGA Cycle Journal Vol.181
袋井市さんとのコラボ企画「どまん中袋井ぽたりんぐ」がスタートしました!
静岡県袋井市があるのは、ほぼ日本のまん中。「東海道五十三次」において西からも東からも27番目の宿、ちょうどまん中にある宿場町でした。北には遠州三山と呼ばれる3つの名山、南には整備が進められている沿岸部エリアや太平洋岸自転車道など、さまざまな姿を見せる袋井市の魅力的な自転車旅をお届けしていきます!
撮影日は2023年12月。今回は、紅葉が見頃を迎えた遠州三山の3つの寺院を巡りながら、同笠(どうり)海岸を目指すコースをお送りします!
ナビゲーターは袋井市職員の熊谷さん(左)と、遠州三山のひとつである「法多山尊永寺(はったさんそんえいじ)」広報担当の笠原さん(右)のコンビです。
▼今回のマップ
1. 可睡斎
スタートは、遠州三山のひとつである「可睡斎(かすいさい)」です。600年の歴史を刻む由緒あるお寺で、徳川家康に深く関わりがあります。
戦国時代、11代目の住職である仙麟等膳大和尚(せんりんとうぜんだいおしょう)が幼い家康とその父をかくまいました。その後、浜松城主となった家康が和尚を城に招いた際、和尚が無心に居眠りをしたことから「可睡和尚」と言われ、これが「可睡斎」という寺の名前の由来になっています。
可睡斎には一般の方でも宿泊ができる宿坊があります。今回は、こちらの宿坊に泊まった際に出される精進料理を朝ごはんにいただきましょう!
精進料理とは、殺生や煩悩への刺激を避けた料理のことで、動物性の食材と、五葷(ごくん)と言われるネギ属は使用しません。
この日の献立は、お粥、昆布やお漬物、ひじき、おひたし、豆腐の餡掛けなど。
お肉やお魚がないと随分シンプルなのでは?と思いきや、食材の持ち味を感じられる、体にも心にも優しい食事。不思議と穏やかな気持ちになってきます。朝の静かな空間の中でゆっくりといただきましょう。
可睡斎の精進料理は、朝食は宿坊に宿泊された方のみ、昼食は予約制(1週間前まで)でいただくことができます。修行僧の方々の心身の鍛錬に欠かせない食事を、実際に体験してみてはいかがでしょうか。
(朝食のみのご提供はされていません。)
精進料理の朝食で心が整ったところで、さっそく境内を散策しに行ってみましょう。
境内は10万坪と広大で、建造物25棟、拝観ポイント40か所と、とにかく広くて見所が満載。公式ホームページによると、一通り見学するのには4時間30分の時間が必要になるのだとか…!それくらい焦らず穏やかに、さまざまな場所に目を向けて拝観したくなる境内です。
今回はそのほんの一部分ですが、見どころをご紹介します。
まずは、冬~春ならではの可睡斎の注目ポイントから。
国の登録有形文化財に指定されている「瑞龍閣(ずいりゅうかく)」の大広間に、なんと32段1,200体のおひな様!
可睡斎では、毎年元旦から3月にかけて行われる「可睡斎ひなまつり」が開催されています。(この日は準備中のひな壇を見せていただきました。)人形供養で納められたおひな様で装飾されたこの大ひな壇は、ひなまつり期間中の目玉です。その他にも特別展示、体験イベントなどが開催され、多くの人が訪れます。
桃の節句なので、達筆な「桃」の書がありました。
日本最大級といわれる圧巻のひな壇を、ぜひ実際に見に来てください!
続いては本堂へ。明治中頃に冨里(旧浅羽町)の松秀寺から移築した建物です。軒下や梁の上の装飾彫刻が美しいです。
八角堂の「輪蔵堂(りんぞうどう)」の中には、大きな輪蔵(経典を収納するための回転式の書棚)があります。時計回りに一回転させると「大蔵経」を読んだことと同じ功徳を得られると言われています。
諸堂大修理の際の記念に飾られた鬼瓦や、
天狗様のものと言われる巨大な下駄など、なんだか巨大なものが境内のあちこちに。
階段を上った先にある「御真殿」から境内を見下ろしてみると、遠くに袋井市街の景色を望むことができます。
遠州三山が最も美しく彩られるのは紅葉の季節です。可睡斎には約1,000本のもみじが植栽されており、赤と橙色のグラデーションが境内を秋色に染めていました。
特に美しいのが、境内の西側にある「放生池」周辺。竹林や真っ赤なもみじが池に映り込み、爽やかな青空とのコントラストがまるで絵画のよう。
紅葉のベストシーズンは11月下旬から12月上旬にかけてです。美しい紅葉をゆっくりと眺めながら、心落ち着くひとときを過ごすことができました。
さて、いよいよここから自転車の出番です。今回の相棒はデイトナの電動アシスト自転車「Daytona Mobility DE01」です。
山門前まで戻る途中にある「もみじの庭」付近には、通り道に沿ってもみじの並木が。絵になりますね!
次の目的地まで緩やかなアップダウンが続きますので、電動アシストをしっかりオンにして出発していきましょう!
ちなみに、可睡斎の総門付近には手作りアイスクリームのお店「じぇらーとげんき」さんがあります。毎朝作りたてのジェラートの他、ユニークな名前の軽食がメニューに並んでいて気になります!
今回は朝が早かったので、残念ながらジェラートはお預け。またの機会に食べに来たいですね!
次の目的地は同じく遠州三山のひとつである「油山寺(ゆさんじ)」です。距離は可睡斎から約3km。上ったと思ったら下って…を繰り返しますが、電動アシストのおかげで勾配をあまり気にせず、気持ちよく走れました。
2. 油山寺
正式な名称は「医王山薬王院油山寺(いおうざんやくおういんゆさんじ)」。昔、この山から油が湧き出ていたことから「あぶらやま」と呼ばれていたことに由来しています。
参道入口を右に行くと広い駐輪場と鉄製のラックがありますので、ぜひご利用ください!
まず目を引くのは立派な山門です。かつて掛川城の大手門だったもので、国指定重要文化財になっています。
山門を通り抜けると、見事な紅葉がお出迎え。参道の両脇に紅葉が植えられており、紅葉シーズンになると参道が紅く染まります。
四季折々に姿を変えていく参道の景色は緑豊かで、人々に癒しを授けてくれています。木漏れ日が揺れ、まるで自然のトンネルのよう。ふと足を止めて木々を見上げたくなります。
さらに進んでいくと、「礼拝門」の近くに「天狗杉」の根が置かれていました。
油山寺の守護神である軍善坊大権現(ぐんぜんぼうだいごんげん)という足腰の神様に由縁のある霊木なのだそうです。
近くで見ると、地をつかむような立派な根っこ。これはパワーをいただけそうですね。
その先にあるのが「宝生殿」です。不動明王や四天王、十三仏などが安置されています。
大きな数珠を回してお参りさせていただきました。
宝生殿の辺りは日当たりが良く、自然の緑と晴れ渡る青空が広がっていました。参拝に訪れた人々が陽だまりに集い、境内が憩いの場にもなっているのを感じました。境内のどこに目を向けても緑豊かなのが、写真からも伝わるのではないでしょうか?
ここから、もう少し境内の奥に足を延ばしてみましょう。「驥山門(きざんもん)」を通り過ぎると、しばらく「天狗谷」という自然林が続いています。
お寺の敷地内ということを忘れてしまいそうな景色!1万年前の姿をとどめていると言われる森林で、野鳥の声や草木の静かなざわめきが心を和ませてくれます。
階段を上り切ると、手前には国指定重要文化財であり鮮やかな朱色が美しい「三重塔」、
奥には県指定の重要文化財になっている「薬師本堂」が見えてきました。
油山寺は「目の霊山」と言われており、749(天平勝宝元)年、孝謙(こうけん)天皇が眼の病気を患った際に、油山寺の本尊である薬師如来に眼病平癒を祈願されました。
境内を流れる「るりの滝」に加持祈祷を行い、この霊水で御眼を洗ったところ、病気が全快したと言われていることから、目や足腰にご利益があると親しまれています。
この三重塔と薬師本堂は、源頼朝公より眼病平癒のお礼として建立されたものです。
近くのベンチに腰かけて、暫し三重塔と紅葉の景色を楽しむのも風流ですね。
3. 久野城址
さて、ここからは南の海側に向かって走っていきます。油山寺を出て3kmほど走ったところで、田園地帯の真ん中にある「久野城址」という史跡に寄り道しました。
ここは久野城というお城があった場所です。資料が少なく、まだ謎に包まれている部分が多いのですが、1492~1501年に駿河今川氏による遠江侵攻に際して今川家家臣の久野宗隆(くのむねたか)が築城したと伝えられています。遠くから見てみると、城址周辺が小高い丘になっています。当時は周りを湿地帯の堀に囲まれ、丘の上に建てることで攻められにくいように工夫がされていたようです。
4. さわやかアリーナ袋井市総合体育館
久野城址から本日のランチスポットに向かっていく途中、「さわやかアリーナ袋井市総合体育館」の側を通りました。
広大な敷地にアリーナ体育館、子どもが遊べる広場、カフェが併設されており、アスリートからファミリー層まで多様なニーズに応えるスポーツと交流の新拠点として、2019(令和元)年に完成しました。
トレーニングジムやジョギングコースなどの設備が充実、アリーナでは季節ごとの催しもあり、人々の憩いの場になっています。
イベント等の最新情報は、ぜひ公式Instagramをチェックしてみてください。
さわやかアリーナは、げんこつハンバーグで有名な「炭焼きレストランさわやか」を運営するさわやか株式会社がネーミングライツパートナーになっているんです。
さわやかの緑のロゴも発見!
5. 炭焼きレストランさわやか 袋井本店
さて、お待ちかねのランチは「炭焼きレストランさわやか 袋井本店」さんにやって来ました!
この袋井本店は菊川、掛川に続いて3つ目の店舗として1982(昭和57)年にオープンした歴史あるお店です。
さっそく注文したのは、さわやかさんの看板メニュー「げんこつハンバーグ」。
楽しみだな~♪
さわやかさんは静岡県内のチェーン店なのですが、このげんこつハンバーグを求めて、平日・休日問わず県外からも多くの方が来られます。
ゴロンと真ん丸のハンバーグが運ばれてきました!これをスタッフさんがテーブルでカットし、アツアツの鉄板に押えて仕上げ調理をしてくれます。
ジュージューと肉汁が湧き出る音が食欲をそそります!げんこつハンバーグは牛肉100%ブロック肉のみを使用しているので、しっかりとした肉肉しさが楽しめるのが最大の特徴です。
できたてアツアツのハンバーグを頬張って、あぁ~幸せ!もりもりペロリと完食です。
6. 東海道の松並木
パワーチャージできたところで、後半も元気よく再スタートしていきましょう。次は、今回行く遠州三山のうち最後のひとつ、「法多山 尊永寺」を目指します。
東に向かって2kmほど走っていくと旧東海道に入りました。道路の両側には松並木が続いています。
途中、歌川広重によって描かれたこの地の風景画に関する説明看板も発見。かつての人々にとって、東海道は東西を結ぶ大事なライフラインでした。この松並木の道を走っていると、その当時の空気感にほんの少しだけ入り込めたような気持ちになります。
7. エコパアリーナ
松林を抜け、景色が開けてくると遠くに「エコパアリーナ」が見えてきました。
アリーナまでは緩やかな上り坂が続くので、電動アシストが活躍します。
だんだんアリーナが近づいてくると、なんだか迫力がありますね。
エコパアリーナは各種競技やコンサートなどの大型イベントの他にも、フリーマーケットやウォーキングイベントなど気軽に参加できる催しも定期的に開催しています。
最新のイベント情報は公式Instagramをチェックしてみてください。
エコパアリーナから法多山までは残り3kmほど。ゆるゆると坂を上っていきます。
8. 法多山 尊永寺
法多山のすぐ近くまでやってきました!なんだか商店街のような雰囲気の場所です。法多山の参道は「門前街」と言い、「門前ごりやくカフェ」や食堂などが立ち並んでいます。
法多山の駐輪場は、門前街を通り過ぎた先、仁王門の100m手前左側にあります。自転車を止めたら、さっそく境内を散策しに行きましょう!
進んだ先には、美しく紅色に染まった紅葉と、国指定重要文化財になっている「仁王門」が見えてきます。
1640(寛永17)年、江戸時代初期に建立されたものですが、桃山時代の遺風を残しているのが見どころ。どっしりと雄大な外観に迫力を感じます。門の左右には二対の仁王像が立っています。
門をくぐると…参道に沿って続く紅葉が。
時折上を見上げつつ、本堂までの道すがらに秋らしいもみじの景色を楽しみましょう。
11月下旬~12月上旬の紅葉の時期には「もみじまつり」が開催されています。紅葉のライトアップや、キッチンカー、ワークショップの出店などの催しがあり、毎年多くの人々が秋の彩りを楽しみに法多山を訪れます。
さて、法多山には名物の甘味があります。それが、参道の中腹辺りのだんご茶屋でいただく「厄除だんご」です。
よく見るだんごとは少し違った見た目をしていますね。
ひと口大のだんごが5個並んで分厚い餡子がのっていて、串を持って引き剥がしながら食べます。
江戸時代、毎年正月に幕府の武運長久、天下泰平、五穀成就の祈祷を奉修し、祈祷ご符と当地名産品を献上する習わしがありました。その時、門前に住する寺士「八左エ門」の発案で観世音名物団子が登城の土産に添えられ、将軍家より「くし団子」と名付けられました。(諸説あります)それ以降、150年以上人々に愛される名物となったのです。
上り坂が多かったので、甘いものがうれしい!外のテラス席から紅葉を眺めつついただく甘味はさらに格別です。
ちなみに、
◎毎月一度の「功徳日」だけに限定販売される「茶だんご」
◎桜の時期の「さくらだんご」
◎紅葉の時期の「栗だんご」
などなど、シーズンによってさまざまなだんごが販売されています!せっかくなので秋限定の栗だんごをお土産に…と思いましたが、大変好評でこの日は既に売り切れてしまっていました。
参拝とともに、法多山の名物もぜひ堪能しにいらしてください。
ここで今回のナビゲーター、法多山の広報担当の笠原さんにおすすめの見どころ&紅葉スポットを教えていただきました!
だんご茶屋から階段を降りていくと、真っ赤なもみじのトンネルが現れます。青空に赤い葉が映えて、上を見上げながらゆっくりと歩きたくなります。
しばらく仁王門に向かって歩いていくと、「紫雲閣」の近くに大きなイチョウの木が見えてきます。
お庭には、一面黄色のイチョウの絨毯が広がっていました!後ろのもみじとイチョウの秋色コラボが楽しめて、とてもおすすめの場所です。
また、この近くにある「黒門」は、仁王門の次に古い建築物であり、市指定文化財になっています。全体が黒塗りで、300年の時を経て立ち続ける、趣あふれる門です。
石畳の葉はお掃除されるのですが、場所によっては落ち葉がそのままになっているところもあるそうで、自然のままの景色もまた趣がありますね。境内を散策しながら、秋ならではの法多山の魅力を探してみてください!
9. 同笠海岸
さて、法多山を後にし、ラストは「同笠海岸」を目指します!
県道251号線に出ると、見渡す限り広がる茶畑。奥にある山々は秋の色に染まって、その美しさに思わず足を止めました。
県内有数の茶産地である袋井市。4月~5月の収穫の季節には鮮やかな緑色に輝く茶畑の風景を楽しめます。自転車で茶畑の中を走れるのは、この土地ならではですね。
時刻は16:00。法多山から約10kmを走り切り、無事同笠海岸に到着しました!
ちょうど夕陽が綺麗な時間帯で、しばしその景色に見とれてしまいました。
海岸沿いに通っているナショナルサイクルルート「太平洋岸自転車道」。道中にそれぞれナショナルサイクルルート、太平洋岸自転車道のロゴがありますので、ぜひ走りながら探してみてください。
さらに西に約1km走ると海に向かって伸びる「サンドバイパス」というパイプのような装置があります。
漁港内に砂が溜まりすぎないようにジェットポンプで移動させることで、侵食された海岸の養浜も担う日本で唯一の施設なのだとか。ひそかに袋井市の美しい浜を守り続ける、縁の下の力持ちです。
現在同笠エリアは、マリンアクティビティやスポーツなどが楽しめる、人々のにぎわい交流拠点としていくための開発が進んでいます! 海と親しむ新たな集いの場がどんな風になっていくのが楽しみですね。
ちなみに昨年の12月には2日間にわたり、「ふくろい海プロフェスタ」が開催されました。当日はあいにくの雨でしたが、地域の方による甘酒のおもてなしで体を温めながら、光で照らされた夜の海を眺めるイルミネーションイベントや、スポーツ施設内では、地元アーティストなどのステージイベントが行われました。
イベントの様子、今後のイベント情報は、袋井市公式Instagramでチェックしてみてください。
今回の総走行距離は約30kmでした。袋井市の北部から南部、山間から海岸部と、景色が変化していくのを走りながら感じることができます。遠州三山は3か所とも境内が広大で、もっとゆっくり時間をとって散策したい場所ばかりでしたね。
変わらない歴史がありつつ、生活に寄り添って変わり続けていく袋井市の魅力を、ぜひ実際に体感しに来てください。