【伊豆ぽたでサイクリング「3月は、伊豆稲取の雛のつるし飾りを見に行こう」】SURUGA Cycle Journal Vol.70
伊豆急行さんとの共同企画「伊豆ぽたでサイクリング」が2021年3月より始まりました。
伊豆急行さんは2017年からレンタサイクル「伊豆ぽた」や自転車を輪行袋に入れなくてもそのまま電車に乗れる「サイクルトレイン」の運営を始め、鉄道と自転車をリンクさせた新たな観光の創出に取り組まれています。
▲実際にこんな感じで乗り降りできます
▲乗車中の風景、新鮮です!
▲ホームの足元に注目!
今回の共同企画では、毎月「伊豆ぽた」に乗って沿線サイクリングの魅力をご紹介します。
坂の多い伊豆ですが、「伊豆ぽた」は電動アシスト自転車なので坂道を気にせずにスイスイ走れますよ。
1回目は伊豆稲取に行ってきました。
伊豆稲取は昔から「雛のつるし飾り」と金目鯛で有名ですが、他にも見どころの多い街です。
今回は伊豆急行の木田さん(右)のご案内でスルガ銀行サイクリングプロジェクトの田原(左)も一緒に、ここにしかない景色を見てきました。
スタート地点は「伊豆稲取駅」、伊豆急行線の駅です。
伊豆急行線はJR伊東線に乗り入れているので、熱海からのアクセスもスムーズです。
駅前広場には築城石とその歴史を学ぶ展示がされています。
東京・江戸城(現在の皇居)の石垣のほとんどはこの東伊豆エリアから切り出されて船で運ばれたものです。
「伊豆石」と呼ばれ、その良さは風化しにくく耐火性に優れていることにあったそうです。
▲近くで見るとその大きさと石切の技術に驚きます
駅をスタートして最初に向かったのは「文化公園 雛の館」。
「雛のつるし飾り」が展示されていることで有名なスポットです。
「雛のつるし飾り」とは雛人形と同様に、女の子の幸福や健康といった願いを込めて各家庭で作られた和裁細工のさげ物です。
高い天井から吊り下がるその長さとつるし飾り(人形)の繊細さを実際に見ると、圧巻の一言に尽きます。
人形1つひとつにはそれぞれ意味が込められているので、ぜひ意味を調べながら眺めていただきたいです。
九州柳川地区と山形酒田地区、そして伊豆稲取地区の3つの地区が発祥の地とされ、「日本三大つるし飾り」と呼ばれています。
次は「志津摩海岸」に向かいました。
やはり伊豆の海はキレイですね。
透明度が高く、その青さに癒されます。
遊歩道もあるので散策しました。
波打ち際は「ゴロタ」とよばれる丸みを帯びた石や岩が散乱しています。
遊歩道を進んでいくと、川との合流地点や伊豆急行線のよく見えるスポットに行き着きます。
険しい地形の中を走る伊豆急行線ではなかなか列車全体を納めた構図で撮影できる場所は数少ないので、この辺りもまた貴重な撮影スポットのようです。
海を堪能した後は山側へ向かい、みかん園の「ふたつぼり」さんへ。
こちらはみかんの収穫体験ができる人気のスポットです。
▲店主さんと一緒に
伊豆は温暖な気候のため、収穫できるみかんの種類も豊富で10月から5月まで合わせて15〜16種類ほど、特に冬から春にかけては一度に2〜3種類ずつのみかん狩りが楽しめます。
ログハウス風の休憩処では、カフェだけでなく生ジュース搾りやジャム作りといった体験もできます。
▲生搾りジュース、美味しすぎました
ジュースに使用されるみかんの種類は季節によって変わるそうで、今回はいよかんと清見のミックスでした。
甘さはスッキリとしていて爽やかな味わいです。
さらに氷もみかんシャーベットになっていて、100%みかんを楽しめるようになっています。
見晴らしの良いデッキでのジュースタイムも最高ですよ。
次は、別名「へび寺」と呼び親しまれている「清光院」さんです。
こちらは鎌倉にある建長寺を大本山とする、1505年に開山された歴史のある寺院です。
へび寺の由来は、金運が上昇するといわれる「蛇石」が安置されていることにあります。
神の使いとして崇められている金色の蛇が石に浮き上がったちょっとリアルな石で、撫でると金運上昇に御利益があると言われています。
▲蛇が浮き上がっています!
さらに外階段の壁には、白蛇と白龍が天に向かって昇っていく様子が描かれていて、さらに社務所に行くと白蛇の大吉くんにも会えます。
神秘の力を秘めたへび寺へ、ぜひ訪れてみてください。
▲圧巻の外階段
▲ご住職と一緒に
▲白蛇の大吉くん
清光院さんのすぐ近くにある「ダイロクキッチン」さんにも立ち寄りました。
こちらは、使われなくなった消防団の器具置き場をリノベーションしてシェアキッチン・レンタルスペースに生まれ変わったコミュニティスペースです。
▲消防団の名残が随所に
▲リノベーションされた店内
レンタル制なので、料理教室の開催やものづくり展示会といったイベントが行われています。
毎週水曜日にはカフェとして「36cafe」がオープンしています。
町民同士だけでなく旅人や訪れた人みんなの交流の場所になっているのですね。
次は稲取港の近く、新堤防辺りでとある方と待ち合わせです。
NPO法人ローカルデザインネットワーク(以下、LDN)を運営されている荒武優希(あらたけゆうき)さんです。
荒武さんは東伊豆エリアを盛り上げるべく地域おこし協力隊として活動していましたが、任期終了後も稲取に拠点を置いて活動を続けています。
「都市とローカルをつなぎ、暮らしたいまちと暮らす社会をデザインする」をモットーに、空き家を改修したシェアオフィス「EAST DOCK」や、先ほど立ち寄った「ダイロクキッチン」を手掛けたりと、稲取に新たな風を吹き込んでいます。
そんな街を愛する荒武さんに、稲取らしい風景が見られるスポットを案内してもらいました。
まずは路地裏を散策です。
港町らしさといいますか、昔ながらの小径や密集した瓦屋根の住宅が広がっていて、タイムスリップしたように感じます。
また、途中で「稲取八幡神社」の参道につながるのでそのまま境内も覗いてみることに。
こちらにも華やかな雛壇と雛のつるし飾りが飾られていました。
▲参道を歩く一行
ふたたび路地裏に戻って、ぶらり散策です。
普段は野良猫たちが出迎えてくれるそうですが、この日は全くと言っていいほど出会えず…。
猫がたくさんいるのもなんだか港町らしいですよね。
途中、荒武さんおすすめの景色を見せてもらうため階段を上って高台へ。
中腹辺りからの景色は、色とりどりの瓦屋根と青い海がキラキラしていて、見ていてほっこりしました。
そして最後に、荒武さんがLDNとは別で代表を務める合同会社so-anの手掛けた民宿「湊庵 錆御納戸(そうあん さびおなんど)」も見せていただきました。
▲民宿「湊庵 錆御納戸」
こちらも空き家になっていた木造2階建の民家をリノベーション。
「稲取の暮らしを体験できる宿」をコンセプトに、ワーケーションの場としても注目を集めています。
荒武さんとはここでお別れです。
荒武さん、稲取らしい景色と街を元気にする取り組みを教えてくださりありがとうございました。
海沿いを走っていると、「稲取キンメ」と書かれたのぼり旗が見えてきました。
「稲取漁港直売所 こらっしぇ」さんです。
▲店長さんと一緒に
▲キンメののぼり旗
こちらは2019年4月にオープンした、伊豆漁協さんとJA伊豆太陽(農協)さんがコラボしたという珍しい直売所です。
稲取漁港で水揚げされた鮮魚や干物だけでなく、地元で収穫された新鮮な農産物、東伊豆町地域認定商品など地場産品が取り揃っていて、まるで道の駅のようですね。
おすすめはやはり稲取漁港で水揚げされた金目鯛「稲取キンメ」でしょうか。
鮮度も味も日本一と言われています。
ちなみに「こらっしぇ」とは、稲取の方言で「こっちへいらっしゃい」という意味だそうです。
駐車場はもちろんサイクルラックも常設しており、お土産購入で立ち寄るのに間違いなしですね。
ふたたび稲取らしさあふれる景色が見られるスポットへ。
「むかい庵」さんです。
最初に立ち寄った「文化公園 雛の館」と同様に、雛のつるし飾りの展示場になっています。
さらに、年代物の雛壇やご家庭で作られた雛のつるし飾りをお借りして展示されていたりと、真心やあたたかみを感じるスポットでもありました。
そしてなんと言っても、キレイでした。
期間限定の展示となっていますので、気になった方はぜひ来年以降見に来ていただきたいです。
次は、むかい庵さんのすぐそばにある「素盞鳴(すさのお)神社」へ。
疫除けの神様として知られる須佐之男命(すさのおのみこと)を祀った、稲取の鎮守社です。
2014年から神社の石段に雛人形と雛のつるし飾りを飾るようになりましたが、その段数はなんと118段。
現在の雛人形の展示段数で単独日本一とのことです。
赤い毛せんが敷かれた急傾斜の石段には、町内外から寄贈されたひな人形544体がずらりと並び、その両脇には10対のつるし飾りも。
これらはすべて、主催する稲取温泉旅館協同組合の職員ら地元住民の手によって期間中毎日丁寧に飾られています。
実際に飾られた118段の雛飾りは本当に圧巻でした。
ランチには、高台にある「ManasCafe」さんへ。
明るく気さくなオーナーが迎えてくれる、アットホームなカフェです。
▲オーナーも一緒に
高台にあるためロケーションが本当に最高で、海に面したテラス席からは絶景が広がっていました。
眼下に稲取港、遠くには石廊崎、さらに天気が良いと伊豆諸島まで見渡せます。
▲テラス席
▲店内
お料理は、ロコモコやレモンペッパーチキン、タコライスなどのメインに、サラダ・副菜・スープが付いたプレートメニューが人気です。
今回はロコモコプレートとレモンペッパーチキンプレートをいただきました。
見た目はかなりボリューミーですが、ヘルシーかつやさしい味わいでペロリと食べてしまいました。
さらにおすすめドリンクがこちら。
爽快な景色にも映える彩り豊かな自家製ジンジャーエールです。
ちょっと辛口ですがそれがまたやみつきになる味でした。
お腹を満たした後は、山方面へと向かい、文化財指定「旧稲取灯台」を目指します。1909年12月に完成したこちらの灯台は、漁船の目印として太平洋戦争が激化するまで活躍しました。
東伊豆海岸のトモロ岬の辺りは荒波で難所でしたが、灯台の完成によって難破船はなくなったといわれています。
その功績が評価され、町の文化財に指定されたんですね。
旧稲取灯台の廃灯後につくられた「稲取岬灯台」が稲取岬で今も活躍していて、旧と新の両灯台を見に来る方も多いのだとか。
また、旧稲取灯台のすぐそばにある民家は初代灯台守の子孫の方が住む家で、土日は「灯台資料館」として開館しています。
稲取編、最後に訪れたのは「稲取ふれあいの森」。
四季折々の花に包まれた森林公園です。
園内にはクロスカントリーコースやアスレチック広場、展望台などもあったりと広大ですし、高台に位置するため見晴らしがとても良く、展望台からの眺めも最高でした。
また、展望台のすぐ近くにある「鳥」型の植え込みは全長150メートルもあり、遠くから見ると全貌がはっきりと分かります。
稲取港から見た「鳥」の様子も一緒にご覧ください。
稲取の町を思いきり満喫するコースでした。
3月以外の月にもぜひ訪れてみたいです。