【南伊豆㊙︎ぽたりんぐ Ep4《自然の楽園 南伊豆マル秘スポットめぐり》】 SURUGA Cycle Journal Vol.155
伊豆半島の最南端に位置する南伊豆町は、豊かな自然に囲まれた伊豆半島の秘境の地。そんな伊豆半島の素敵なスポットを自転車でめぐっていく企画です。
3回目となる今回の南伊豆㊙︎ぽたりんぐは、南伊豆町の秘境感あふれる海岸沿いを中心にめぐっていきます。地元の方でもなかなか足を運ばないような、これぞ「マル秘!」な穴場スポットと、南伊豆で楽しめるアクティビティをご紹介していきます。
今回のナビゲーターは、南伊豆町職員の鈴木さん(左)と大戸さん(右)。まずは子浦の「KOURA BASE(コウラベース )」さんにやってきました!
海の幸や地場産食材を使った料理が人気の「アイキッチン」さんが併設されています。サップ、スノーケリング、フィッシングなど、さまざまな海の遊びを体験できます。
お店は子浦海岸の目と鼻の先にあり、カラフルな看板が目印です。サイクリストフレンドリーなお宿「JU-ZA CYCLE YADO Minamiizu」さんもすぐ近くにあります。
撮影当日は風がなくて海が穏やか。今回は海のアクティビティからスタートします!
まずは「KOURA BASE」さんのガイド付きツアーに参加して、子浦海岸でサップ体験をします。早朝6時スタート、2時間の朝食付きプランです。必要な備品はツアーの料金に含まれていますが、水着、タオル、マリンシューズはご持参ください。
※ツアー料金・予約方法など詳細は公式サイトからご確認いただけます。
サップ(SUP)とは、スタンドアップパドルボードの略で、ハワイ発祥のアクティビティです。サーフボードより少し大きいボードの上に立ち、パドルを漕いで水面を進んでいきます。
まずは浜辺でボードの乗り降りの仕方や、パドル(水をかく道具)の漕ぎ方などを教えてもらいます。パドルはボートのオールと違って漕ぎ手が支えて操作します。長さの調整もできます。
ガイドは「KOURA BASE」オーナーの内山さん(中央)。説明がとても分かりやすく、頭にスッと入ってきます。これはおふたりともすぐに乗れそうな予感!
さっそく浅瀬でボードに乗ってみます。
慣れるまではボードの上に立つのが怖いんです。
最初は恐る恐るでしたが、おふたりともすぐに立ちあがり余裕の表情。丁寧にレクチャーしてもらえるので、初めての方もご安心ください!
サップは風や波の影響を受けやすく、うねりがあるとボードの上でバランスを取るのも一苦労なのですが、サップ初体験のおふたりもすぐ乗りこなせるほど穏やかな海!それが子浦海水浴場の特徴です。湾の奥に位置し、遠浅の砂浜でほとんど波がないので、小さなお子様連れのご家族にも人気です。
そして湾内では海底火山が作り出したダイナミックな景観を間近で見ることができます。
サップは小回りが利くので、狭い洞窟にも入って行けて、探検には最高のツールですね。
朝ごはんはガイドさん手作りのお弁当。
岩場に上陸していただきました。動いた後の食事は一段と美味しい!
サバイバル感満載!非日常体験にわくわくしますね。
「KOURA BASE」さんのサップツアーは、事前予約制です。早朝(6時~8時)、午前(9時~12時)、午後(14時~17時)の1日3回。観光プランに組み込んで、南伊豆のマリンアクティビティをお楽しみください!
早朝サップは開始時間が早いので、今回は子浦に前泊しました。宿泊したのは、民宿「いすゞはま荘」さん。
妻良(めら)漁港から仕入れる新鮮な獲れたて地魚料理と、女将さんの笑顔が自慢のお宿。子浦海水浴場までは自転車で約2分です!
畳のお部屋は心が落ち着きますね。柔らかな光が差し込み、海風が心地よいお部屋でのんびりとお過ごしください。
今回泊まった部屋の窓から海が見えました。いつもと違う景色、空気、匂いは、日常を忘れさせてくれます。
お風呂は湯船に浸かってリラックスできます。
宿の名物は調理担当のご主人が腕を振るう料理です。素泊まりプランもありますが、ご宿泊の際はお食事付きを強くおすすめします!これでもか、というほどテーブルに並んだお料理の数々(夕食の写真です)。
イサキとヤガラのお造り、ムツの煮付けやトビウオのなめろうなど、妻良漁港から仕入れた地魚料理が食べられます。
仕入れによって内容が変わるので、何が出てくるかはお楽しみです。ボリューム満点で、たくさん食べる人も満足できること間違いなしです。
子浦地区を散策していると、天日干し中の干物を発見!手のひらサイズの小さな魚もキレイに並んでいます。
製造しているのは、ひもの専門店「カネキ物産」さんです。地元で採れた魚を手作りで干物に加工・販売しています。地方発送も行っているのでお土産にいかがでしょうか?
子浦には江戸幕府14代将軍徳川家茂(いえもち)ゆかりのお寺「西林寺」があります。江戸時代、家茂公一行の船は強風のため子浦へ避難し、「西林寺」に宿泊しました。その際に村人たちが献上した料理が、子浦に伝わる伝統料理「将軍鍋」の始まりと言われています。伊勢エビや豊富な魚介類を使用した味噌仕立ての豪快鍋です。
おもてなしに大変喜んだ家茂公は、葵の御紋、茶碗や火鉢を贈りました。さらに家茂公自らが植えた松は、「将軍お手植えの松」として今も残っています。おふたりが指差す先の、本堂右奥にそびえる松のことです。
御本尊の「阿弥陀如来立像」は南伊豆町の有形文化財に指定されています。
境内には子浦地区の文化財案内があります。案内を参考に、子浦文化財めぐりをしてみてください。
深い入江の妻良港は、かつては江戸と大阪を行き来する船の風待ち港として栄え、村は今では想像できないほど賑わっていたそうです。何日も季節風が収まらない時には、湾内が船で埋め尽くされ、子浦から対岸の妻良まで船の上を歩いて渡れたと言われています。時代が変われば町の様子も大きく変わるんですね。
天候や潮の流れ、風の向きを調べるために利用されていた日和山(ひよりやま)からは、湾内を一望できます。海岸の眺望と風待ち港の歴史を感じられるのが「子浦日和山遊歩道」です。
子浦から落居(おちい)口までを繋ぐ約2kmのハイキング。すべて歩くと1時間ほどかかるので、運動ができる服装と靴がおすすめです。今回は子浦側からアプローチします。
入口がやや分かりにくいですが、遊歩道の案内板が目印です。まずは松やウバメガシなど、海岸特有の植物が繁る階段を上っていきます。
岩山を好んで生えるウバメガシは育ちが悪く、子浦のような大木の林は珍しいため、静岡県の天然記念物に指定されて大切に保護されています。
展望所からは湾内を一望できます。早朝サップで行った洞窟が上からよく見えます!
「ころばし地蔵」の案内標識に従って進むと、岬の先端に3体のお地蔵様がありました。風待ち港として栄えた昔、子浦の遊女が客を引き止めるために転がしたと言われている地蔵です。地蔵を転がすと風が変わり、海が荒れて港を出た船が戻ってきたそうです。罰当たりな行いですが、安全祈願のご利益を逆に利用した遊女たちの知恵だったのでしょう。
落居口に向かって進むと、見晴らしのいい芝生の広場に出ました。かつて灯台として使われた「ひよりみの灯」があった場所です。目の前には手付かずの大自然、変化に富む海岸の景色が広がります。
対岸の岩場にはどうやって行くんだろう?何があるんだろうと、好奇心をくすぐられる景色です。
落居口まであと少し!
道路に面した落居口に出ると一気に現実世界に戻ってきた感覚があります。「子浦峠の茶屋」の脇が遊歩道へ繋がっています。
サップ2時間の後に1時間のハイキングはなかなかの運動量!飲み物持参必須ですね。子浦にお越しの際は、素晴らしい景色とハイキングが楽しめる遊歩道をぜひ歩いてみてください。
子浦から海岸線を西へ進み、「波勝崎(はがちざき)モンキーベイ」に到着しました。
こちらは、富士箱根伊豆国立公園に指定されている、伊豆半島南西部の岬「波勝崎」にあるお猿の楽園です。
野生のニホンザルの観察・餌やり体験ができます。波勝崎周辺には約300頭のニホンザルが生息していますが、野生動物のためタイミングによっては猿が見られないこともあるようです。今回はたくさんの猿を見ることができてラッキー!
じっくりと観察したいところですが、観察にはいくつか注意点があります!
・サルに近づきすぎないこと
・直接触れないこと
・目を覗き込まない
などなど…あくまでも野生のサルであることを忘れずに、入園の際は注意事項をよくご確認ください。ルールを守って安全に楽しみましょう。
餌やり体験は建物の中から行います。芋と煎餅が入ったバケツを持って柵の側まで行くと、続々と猿が集まってきました。
柵の間からトングで差し出した餌を器用に片手で受け取り、食べる様子がまるで人間のようです!可愛い!
餌を食べる順番はボス猿(力の強い順)からと決まっていて、観察していると力関係がよく分かります。不要な争いを避けるため、群れの中で順位がついているそうです。
食いしん坊の猿は次々と餌を取りに来て、力の弱い猿たちは後ろで大人しく順番待ちをしています。自然の中で生きていくのは大変ですね。
売店ではユニークなオリジナルグッズが販売されています。小さな子どもが泣いてしまいそうな猿のアイマスク。
バナナ・サツマイモ入りカレーや、サザエの肝入りカレー。どんな味か気になります!お土産にいかがでしょうか?
ランチは妻良港近くの「橋本屋食堂」さんへ。この辺りは飲食店が少ないエリアなので、貴重なお食事処です。「ラーメン」と書かれた赤い暖簾がいい味出しています。
暖簾をくぐってなかに入ると、昔ながらの雰囲気が落ち着く店内。ラーメン、カレー、カツ丼など、食堂の定番メニューが揃っています。
店内のテレビでローカルニュースを見ながら注文した料理を待ちます。のんびりとした時間の流れが心地良いです。シンプルなラーメンと中華丼はホッとするお味。いつまでも続いて欲しい、また来たくなる食堂です。
透き通ったスープの醤油ラーメン。飾らないシンプルさが魅力です。
中華丼はご飯を覆い尽くすほど餡がたっぷりです。
ランチの後は妻良海岸に行ってみましょう。正面には日和山(ひよりやま)がよく見えます。「子浦日和山遊歩道」はあんなに険しい崖の上を歩くコースなのかと、対岸から見るとよく分かります。
妻良港を取り囲む崖には、美しい縞模様の崖が広がっています。海の底に降り積もった火山灰や白い軽石の地層です。
波や海流の作用を受けながら積もった地層には、波紋のような複雑な模様が刻まれています。どれだけ長い年月をかけて今の形になったのでしょうか…自然が作り出した芸術作品ですね。
いよいよ南伊豆の秘境中の秘境と言われている「吉田地区」へ。国道沿いにある「海の里 吉田入口」の看板に従って小道に入ります。
本当に海岸にたどり着くのだろうか…と不安になるような山道を進むと、険しい谷間に削られた小さな平地に集落が見えてきました。集落を抜けた先に海が広がります。(※駐車場はありません)
周囲を険しい山々に囲まれ、地理的にも隔絶された地には手付かずの自然が残っていました。聞こえてくるのは波の音や風の音だけ。ここでは誰にも邪魔されず、癒しのひと時を過ごせます。
吉田の浜の山裾には、小さな社の白鳥神社があります。
社殿の扉には穴の空いたひしゃくが…。これには安産のお祈りとお礼参りの意味があります。
神社の登り口には、樹齢約800年と言われている大きなビャクシンの木がひっそりと佇みます。
続いては南伊豆のなかでも穴場と言われている「入間(いるま)海岸」にやってきました。浜は小さな入り江になっており、長い防波堤と波消しブロックのおかげで穏やかなビーチです。
付近の有名観光スポット「ヒリゾ浜」と比べると混雑しにくく、のどかな雰囲気のなかでのんびり過ごしたい方にオススメです。岩場もあるのでシュノーケリングや磯遊びなども楽しめます。
入間の港から南伊豆歩道(吉田~入間コース)に入ると、海底に降り積もった火山灰や軽石からなる、美しい地層が広がる「千畳敷(せんじょうじき)」へアクセスできます。
なかなか険しいコースです。おふたりはまるで探検隊のよう。
石を削って作られた歩道。長い年月をかけて作られた地層がとても美しいです。
入間の港から歩くこと40分。「千畳敷」に辿り着きました!千畳敷は海底に降り積もった火山灰や軽石からなる美しい地層で、海岸にせり出した広い台地は畳が千畳も敷けるほどの広さがあります。おふたりのすぐ後ろは断崖絶壁の崖になっています。お越しの際は足元に十分にご注意ください。
千畳敷の上に大きな岩が!海に落ちそうで落ちない絶妙なバランス。
ここではかつて伊豆石の採石が行われていて、石を削り取った跡があちこちに見られます。伊豆石は比較的柔らかいため加工がしやすく、船を利用して運び出しやすい場所で盛んに切り出されました。
こんな秘境の地で、手作業で採掘を行っていたのでしょうか…人々の営みの痕跡を見ることができました。
地元の方でもなかなか訪れることのない「秘境エリア」をめぐった今回の南伊豆㊙︎ぽたりんぐはここまで。「百聞は一見にしかず」と言うように、気になる場所はぜひ実際に訪れてみてください。写真だけでは分からない自然の雄大さに圧倒されます!自分の目で見て感じて体験すると、一生の思い出になりますよ。
それでは次回もお楽しみに!