モンスターバトルロードの話
はじめに
かつてドラクエシリーズ初のアーケードゲームとして大人気だった、モンスターバトルロードシリーズ。私は当時やったことはないのですが、後継機のバトルスキャナー以降はプレイしたことがあります。バトルスキャナーをプレイしていた当時に永久保存版のバトルロードビクトリーの存在を知り、プレイし始めました。宇宙王決定戦もクリアして何年か放置していたのですが、クロスブレイドが終わると聞いて久しぶりにやりたくなり、つい先日プレイしました。
その時に「このゲーム、ステータスインフレが発生していないのでは?」と思いました。ステータスインフレがあると、強くなっていっている自覚がありやすいのと引き換えに、弾が進むごとにステータスが置いていかれてしまうのでひたすら強いカードを入手していかなければならないという状態になってしまいます。その一方でステータスインフレが起こらない場合、強くなっている実感があまり湧きにくい代わりに、どのカードでも耐性や特技を活かして強みを発揮できる機会があるのです。バトルロード時代には魔物3体でしかパーティを組めなかったのがバトルロードⅡからは人間キャラを入れてパーティを組めるようになり、職業レベルシステムが採用されたのは、自分が強くなっていくという実感を感じさせやすくするため、という意味合いもあるのかもしれません。
検証
インフレが起こっているのかどうかを調べるため、まずExcelに全モンスター,合体モンスター・レジェンドチーム,装備のステータスを書き起こして比較してみました。どのように比較したのか、例としてまずはスライムを挙げます。
写真にある通りHP,ちから,かしこさ,みのまもり,すばやさ,全ステータスの合計値,HPを除いた全ステータスの合計値(今後除外値と呼びます。)の項目に分けました。合計値を算出した理由は、例えばポケモンでは全ステータスの合計種族値がある一定の値を超えないように調整されている,ジョーカー3では合計値が8000に統一されている,といった風に何らかの規則性があるのではないかと思ったからです。しかし、これでは合計値があまりにもHPに依存しすぎており、本当にインフレが起こっているのかわかりにくくなります。ギガンテス,メタルドラゴンのようなHPが高いモンスターは合計値がその分大きくなってしまうのです。そこで除外値も算出しました。
合体モンスターも普通のモンスターと同様の方法で調べ、装備もHP補正がない分合計値の他に特殊効果を調べてみたりしました。
このように合計190体のモンスター+合体・レジェンドチーム+装備103個のデータを打ち込み、グラフ化したものがこちらになります。
まずはモンスターの方から。見てわかる通り、除外値が平坦になっています。つまり、ほとんどステータスインフレが起こっていないのです。この絶妙なバランスを保ったまま190体ものモンスターを出せるのかとまとめ終わって見てみた時感動しました!合計値の値が大きすぎて見かけ上そのように見えているだけなのでは?と思う方もいると思うので、合計値と除外値をそれぞれグラフ化したものも入れました。外れ値はメタル系です。みのまもりとすばやさが異様に高い分HPが低く、これを除くと合計値が高くなりがちです。外れ値が出てこないようにするにはHPを1/10にして入れるのも良いかもしれません。合体・レジェンドについても上が合計値、下が除外値となっています。極端に高いのは大魔王です。それを除いたとき、合体モンスターとレジェンド魔王の除外値は意外と大差がないことがわかります。しかし魔王は除外値が700超えのものがいたりと全体的に合体モンスターよりも高い傾向にあります。魔王の方はスペシャルカードを使えない分、やや高めにしているのかなと思いました。続いて装備ですが、その多くが43〜66に固まっています。賢者の杖シリーズの影響も一応ありそうです。合計値が高い装備の多くは第3の技持ち武具にオノやツメ、呪い装備で構成されています。武器融合装備はウェポンダブルスキャンがあるので置いていかれないようにするためか、合計値が高いものが多いです。
モンスターについては全体の平均,分散,標準偏差,シリーズごとの合計値の平均も調べました。その結果がこちらになります。
メタルがいるためあまりあてにはできないかもしれませんが、分散を見てみましょう。大きくブレが存在する合計値やHPに比べて、除外値の分散が非常に小さいのです。つまりそこまで値に差がないということです。ところで、除外値の平均の277ですが、見覚えのある数字ですよね?先ほど例に挙げたスライムの除外値を見てみましょう。そう、この平均値はなんとスライムの除外値と全く同じなのです!全体の平均が全モンスターの代表格であるスライムに行き着くというのは偶然のような気がしますが、なかなか神がかったバランスをしていると思いました。シリーズごとの平均値は、やはりDLCであるビクトリーがトップになっており、次いで合計値はⅡが高い割に除外値は初代の方が高く、母数が少ない分メタル系の影響が出ています。
一部のカード紹介
ここからは様々なカードを紹介していこうと思います。全部やっていたら流石にキリがないので、一部を紹介します。
バトルロード界の600族、メタルキングです。その除外値は、全モンスターの中でもトップの値です。こうしたメタル系がちょっと外れ値になってしまいます…、と言いたいところなのですが、実はそうでもなかったりします。
こちら、ビクトリーで追加されたメタル系のゴールデンスライムになります。HPが上がった分その他が削られている,という特徴ゆえに除外値は371と、そこまで大きくはないです。合計値もメタキンを下回っています。純粋なメタル系のゴールデントーテムについても除外値は409と控えめで、次に紹介するモンスターとそこまで大差がありません。ちなみにスライムタワーとゴールデントーテムは何故かステータスがゾロ目になっています。
合計値,メタル系を除いた時の除外値が共にトップなのはゴールデンゴーレムでした。やり込んでいた人の中には納得する人もいるのではないでしょうか?高いちからとかしこさを持ち、それぞれに対応した技も使えるのでなかなか強いモンスターです。次点には、合計値はトロルキングの1231,除外値はバズズの374が続きます。ビクトリーを除くとキースドラゴンの1211,かぶとこぞうの358が次点です。
バトルロードで強いカードの代表格、ナイトリッチです。このように、必要性が低いすばやさを削ってその他を全体的に高水準とした、理想的なステータスをしています。このかしこさとみのまもりを持ちつつ高い耐性があるのでそりゃあ強いわけです。
一番上を見たら一番下も気になるもの、というわけで除外値の最下位はマンドレイクでした。合計値はほとんどHPで補っていますが、ちから以外のステータスがあまりにも悲惨なことになっています。原作でも印象に残りにくいモンスターでしたが、これでは流石に使われないのでやっぱりマイナー脱却とはいかないですね…。ちなみにソルジャーブルやくさったしたいなど、意外と除外値200以下のモンスターもそこそこいます。
合体モンスターの中でも強い部類のカンダタです。合体元はごろつきを除きあまりパッとしないステータスと特技を持つ彼らですが、合体するとなかなか優秀なステータスを誇る合体モンスターへと変化します。雷神斬りの雷属性持ちが強いですね。
レジェンドチーム,伝説の勇者です。ちからは破格の255!ビクトリーのモリーチャレンジ9戦目の相手なので、苦戦した人も多いのではないでしょうか。耐久の低いボストロールなどを入れるとロトの剣技やデインブレイクで大幅に削られてしまうので、何かしらの対策が必要です。
魔王の除外値トップはドルマゲスでした。除外値は777と縁起の良い数字ですが、果たして暗黒神との邂逅は、彼にとって幸運だったのでしょうか…?
大魔王ゾーマです。一番HPが高い大魔王ですね。合計値は9995と、あとちょっと高ければ10000の大台に到達していました。除外値も大魔王の中では高めで、なかなか強い大魔王といえます。
全体の中での除外値トップはやはり攻撃力999の圧倒的数値を誇るダークドレアムでした。999もの攻撃力と無難な耐性を持ち、こちらも強い大魔王です。
合計値が高い斧、はおうのオノです。高いところは高く、そのほかのステータス補正が高いとその分合計値が高くなっていきます。しかし合計値こそこちらの方が高いですが、優秀な特技を持つグレートアックスの方がよく使われている印象です。
私がよく愛用している武器、風林火山です。満遍なくステータスが上がり、合計値もその分かなり高いです。青技の風林火山はやや運要素が強いものの、うまく特効が入ればかなりのダメージを出せます。
合計値トップはほしくだきか神竜のつるぎ…と思っていましたが、竜神王の剣・弐の太刀でした。他の融合武器に比べるとネタっぽい印象を受けますが、対竜王においては破格の性能を誇ります。相手にドラゴンがいる対人戦で使っても普通に強いと思います。次点はほしくだきの150,神竜のつるぎは142でした。
小ネタ紹介
だいたい書きたいことは書いたのですが、最後にちょっとした小ネタを紹介して終わろうと思います。
・バトルロード初登場の特技
バトルロードには多彩な技が登場しますが、主に現在他ゲームでも印象深いバトルロード産の特技を紹介します。
ばくれつきゃく
マルティナのイメージがついているばくれつきゃくですが、初登場はメーダの第三の技です。確かに触手なので足かもしれないですが、それをばくれつきゃくと言うのなら、ホイミスライムもばくれつけんではなくばくれつきゃくになるのでは?
キングダムソード
ドラクエ10,ウォークにおけるさまようよろい系統の十八番特技です。全体攻撃+守備減とけっこう強い効果を持ちます。これがバトルロード初登場というのはそこそこ有名な話かもしれません。
テールアタック,竜のおたけび
現在ドラクエ10で超絶強化されて人気のバトルレックスですが、テールアタックと竜のおたけびはドラゴンから借りてきたものです。効果も全然違っており、竜のおたけびは明らかにバトルレックスのものの方が強いですね。このようにドラクエ10の仲間モンスターはバトルロード由来の特技を使うモンスターが多いです。(他の例ではキラーパンサーのひっかきのあらし,モーモンのホラーフェイスなど)
煉獄魔斬
ドラクエ10の魔剣士やライバルズの魔剣士が使用できる特技として登場している煉獄魔斬も、初出はバトルロードの魔剣士ピサロです。効果はそれぞれの作品で異なり、演出も違いますが、やっぱり私はバトルロードの演出が一番好きですね。
魔神の絶技
ドラクエ10やスーパーライトでのダークドレアム,邪竜軍王ガリンガの代表的な特技、魔神の絶技は真ダークドレアムが使用してきます。通常版が使うのは魔神の剣技です。超大ダメージを受けますが、ダブルギガスローよりはマシ…だったりするのでしょうか?サイコキャノン,天地邪砲,絶望の眼差しなどバトルロード由来の特技が大魔王の特技としてスマホゲームに登場することも多いです。
・キラーマシン系統の特技
キラーマシン,キラーマシン2,キラーマシン3,メタルハンターは特技名がCODE:○○○というものになっています。ここに入る3桁の数字なのですが、これらは全て素数になります。実際に当てはめてみて確認してみましょう。
・バトルロード初登場のモンスター
モンスターバトルロードシリーズが初登場となるモンスターが何体か存在するのでまとめて紹介します。
キラーマシン3
スーパーキラーマシン(Sキラーマシン)
スライムジェネラル
ダークランサー
ガーディス
ベスキング(スライムベスのモリセレ内にイラストのみ登場)
スラ・ブラスター
山よりも大きな魔人(パルプンテの効果内でのみメッセージ欄に登場していた。グラフィックとしての登場はこれが初めて)
終わりに
いかがだったでしょうか?モンスターズシリーズのステータス解析をしているところは多いですが、バトルロードシリーズのステータスを本格的に解析しているところはそんなに多くないので、もっと調べてみると意外な事実がまたわかるかもしれません。ここまでインフレを起こさないように綿密に能力値が考えられつつ、合計値や除外値が高いからといって強い、合計値や除外値が低いからといって弱いとはいかない絶妙なゲームバランス,多彩なスペシャルカードに派手なとどめの一撃演出,そして手軽に歴代の魔王や大魔王と白熱のバトルが楽しめるからこそ、バトルロードシリーズが今もなお人気である秘訣なのでしょう。クロブレの後継機は現状でなさそうなので、バトルスキャナーシリーズやクロブレが恋しくなった時は、中古のバトルロードビクトリーを買って遊びましょう!WiiかWiiUなら持ってる人もそこそこいるのではないでしょうか?3桁の値段で買えますが、3桁には止まらないくらいのボリュームがある神ゲーなので、ぜひ遊んでみてください!DLCはもう買えませんが、それでも普通に楽しめます!スラッピーとの、約束だぞ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?