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一般人として、古賀選手・石川選手へリスペクトを込めて
先日、女子バレーボール選手としてNECや日本代表で活躍した古賀紗理那選手の引退セレモニーに参加した。その中で「腹筋を1日800回していた」という話があった。
古賀選手と言えば高校生の頃から日本代表に選ばれてきた超一流選手。どこか控えめで人前に立つことは好きではないと話す内弁慶な性格ながらも、代表のキャプテンととしてプレー内外でチームを鼓舞し、先頭に立って引っ張る姿勢が印象的だった。もちろんストイックなイメージもあったが、「腹筋を1日800回」という具体的な数字を聞くと想像もつかない次元で戦っていることを改めて感じた。
子どもの頃からスポーツに携わる機会のあった人間の端くれとして、私は古賀選手のようなアスリートの「ストイックさ」に憧れ、尊敬している。彼女らは試合中や練習中だけではなく、食事や睡眠など生活のありとあらゆる場面において努力を続けており、「結果を出す」ことを第一に考えて日々を過ごしている。妥協せず、人生を賭けて何かに打ち込み、緊迫感のある一発勝負の世界で結果を出すその姿に魅了され、活力を貰っている。もちろん、持って生まれた才能があってこその部分はあると思うが、それ以上に先の見えない努力を四六時中続ける精神力があってこそ、第一線で活躍し続けられるのだと思う。
同じくバレーボール選手、男子日本代表の石川祐希選手もストイックの境地にあるプレイヤーである。野球の大谷翔平選手があまりのストイックぶりに尊敬を込めて「ベースボールマシーン」と表現されることがあるが、石川選手もまさに「バレーボールマシーン」であり、私の中では歴史上の偉人のような存在である。
石川選手の著書「頂を目指して」を最近拝読した。文中には石川選手のバレーボール人生の軌跡と、ターニングポイントになる場面で何を考えてどんな選択をしたか、何を考えて日常を過ごしているかについて記述されている。選手としてのプレーや日頃の徹底したバレーボールファーストな生活ももちろん素晴らしいと感じるが、プロとして生活し、日本代表を背負う石川選手の考え方にリスペクトが尽きなかった。
本書中にはこんな表現がある。
「大切なのは、自分がどんな結果を求めて努力をするのか、その結果を得るためにどんな努力をするべきなのかを意識することだ。」
これはスポーツに限らず、どんなことにも共通することだと思う。自分が目標とする所に到達するまでに必要だと認識できている努力は、スポットで苦しい場面はあるかもしれないが、トータルでは楽しいものになる。ただ、それを実際に行動に移すことが難しいのであり、だからこそ結果を持って努力を証明する石川選手にリスペクトが尽きない。本書中には食事やSNS、先輩後輩の上下関係に至るまで「目標に到達する上で必要かどうか」という判断軸で意思決定をしていることが記されているが、全てのリソースを注いだ上で見せる全力プレーだからこそ、単にTVで観ているだけのファンにも気迫が伝わり、感動が生まれるのだと感じる。
古賀選手や石川選手のようなアスリートが、単に趣味でスポーツをしている自分の延長線上にあるとは思わない。ビジネスマンも成果を求めて努力する点では同じなのかもしれないが、どこか根本的なものが違うように感じる。
それでも、私がこれからを生きる上で彼らのようなアスリートをリスペクトし続けるだろうし、私自身も目標を立ててそれに向かって努力する姿勢は忘れないようにしたい。プロと一般人は時間を注ぐべき対象も責任も全く異なるが、自分の生活の中で可能な範囲でベストを尽くすことはできる。そんな勇気と活力を与えてくれる偉大なるアスリートにリスペクトを込めて。