【囚人のジレンマ】キラーロボット(神風ドローン)は規制できるか?
「キラーロボット」とも呼ばれる自律型致死兵器システム(LAWS)とは、人間の判断を介さないで標的を自律的に攻撃する殺傷兵器のこと。
自律型であることに加えて、比較的貧しい国でも立派な「空軍」部隊をほとんど市販で買うことができ、戦争の構造を根本的かつ不可逆的に変える可能性があるとされている。
2020年3月のリビアでの戦闘で、世界で初めてAIによる自律型致死兵器が攻撃を行ったと英国インデペンデント紙が報じている。
キラーロボットの規制を問うたイシューに対して、「キラーロボットを開発すべき」が55%、「キラーロボットを禁止すべき」が45%となっている(2021年12月4日現在)。
神風ドローン
攻撃用の軍事ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」と呼ばれている。
センサーやカメラで標的を認識し、自爆攻撃するドローンのこと。
攻撃側に人的被害のない精密な攻撃が可能で、コストが米国の最新鋭戦闘機などに比べても破格に安く、資金に乏しい国や組織でも所有でき、有効な武器となっている。
2020年のナゴルノ・カラバフ紛争でアゼルバイジャンがイスラエル製の「神風ドローン」を用いてアルメニア側に大きな損害を与えて事実上勝利したことでも注目された。
国際人道法上も問題視
国際人道法の遵守(の確保)が問題視され、生命に対する基本的権利と人間の尊厳の原則を脅かす可能性なども指摘され、国際NGOや数十か国の政府、AI技術者らが開発と使用に反対している。
AIシステムの意思決定プロセスが不透明であることから、完全に自律的な軍用ドローンが間違ったターゲットに対して攻撃を実行するリスクも指摘されている。
また、例えば特定のデモ参加者を識別して、小型のドローンが自律的に殺傷するといった、非倫理的とされる用法も懸念されている。
囚人のジレンマ
他方、国際的に禁止しても、誰かが隠れて開発し配備されれば、現在の軍事力のバランスを変え、制御できないスピードで拡散するとも言われている。
「互いに協力する方が協力しない方よりもよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利得を得る状況では互いに協力しなくなる」というジレンマがある(囚人のジレンマ)。
そもそも国際人道法は遵守されてきたのか、もしそうでないなら「戦争の構造を根本的かつ不可逆的に変える可能性がある」キラーロボットの禁止に「本当の」効力はあるのか。
キーワード
【国際人道法】
・不必要な苦痛の禁止
・攻撃対象を戦闘員及び軍事目標に限定(区別原則)
・損害と軍事的利益との比較(均衡性原則)
など。