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ぬれの制御_ぬれの三形態
1.はじめに
ぬれを制御することは、「浸透」「分散」「接着」などをはじめとして、多くの現象を制御することにつながります。
ぬれの度合いは、接触角により定量的な評価ができ、また、液滴を観察して測定することからも、直感的に固体と液体の親和性を知ることができます。
しかし、接触角の測定に、表面張力の測定を組み合わせると、
固体液体間の相互作用
固体の表面張力(自由エネルギー)
固体液体間の界面張力(自由エネルギー)
を知ることができ、より詳細な分析が可能になります。
2.固‐液間の相互作用(ぬれの三形態)
ぬれには、
拡張ぬれ
浸漬ぬれ
付着ぬれ
の三形態があり、これらぬれのエネルギー(W) [mJ/cm^2] は、γs:固体の表面張力、γl:液体の表面張力、γsl:固‐液間の界面張力として、それぞれ以下により求めることができ、
Ws = γs - γl - γsl (Ws:Work of spread)
Wi = γs - γsl (Wi:Work of immersion)
Wa = γs + γl - γsl (Wa:Work of adhesion)
関連する工業プロセスは例えば以下のようなものがあります。
ぬれの三形態と目的を合致させて、材料設計を行う必要があります。
メッキ、銀鏡、潤滑油、塗装
粉体の分散・凝集、クロマトグラフィー、吸取紙、錠剤、洗濯洗剤、フラッシング
塗装、接着剤、印刷
3.ぬれの三形態の理論式を実用化する
上述の式では、液体の表面張力以外は実測が困難です。
そこで、ヤングの式
γs = γl・cosθ + γsl
をそれぞれの式に代入し以下を得ることで、接触角 (cosθ)と液体の表面張力という実測可能な測定値からそれぞれのエネルギーが求まります。
Ws = γl (cosθ - 1)
Wi = γl・cosθ
Wa = γl (cosθ + 1)
ぬれを良くするためには、液体の表面張力(γl) を下げることが思いつきますが、各理論式からもわかるとおりエネルギー値(W)の最大化が目的である場合、γlを下げることがトレードオフになってしまうことがあります。
本稿では触れてませんが、エネルギー値(W)の最適化には、固体の表面張力(γs) を調整することも選択肢になります。
γsの測定方法については改めて解説したいと思います。
4.おわりに
本稿では、
ぬれには三形態あり、実際のぬれの現象や、目的に合わせて適切に理論式を参照する必要があること。
各ぬれの三形態にともなうエネルギーは、ヤングの式を用いることで、実測可能な接触角と液体の表面張力の測定から求まること。
についてを概説いたしました。
接触角計と表面張力計を合わせて使用することで、より最適な解を得ることにつながります。
接触角計と各種表面張力計のラインナップ:
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