芸人さんに学ぶ伝えるということ
以前、上司と一緒に、マーケティング関係の方からサービスの紹介を受けたことがあったのですが、その方は、やたらめったらマーケティング用語を使う方でした。
こちらの反応を見ることもなく、当然のように、とにかく饒舌に横文字をぺらぺら。
帰り道、上司は、「何を言ってるか分からなかったけど、あまりにも当たり前のように言うし、なんか舐められる気がして聞くにも聞けなかった」と、ぽつりとこぼしました。
私たちはそのサービスのお話を聞くのは、その日がはじめてでした。
それを理解できなかったことが、なんだかこちらだけに非があるような感覚になってしまって、いい気持ちになれなかったことを覚えています。
もちろん似通った業界だったので、こちらの勉強不足の部分もあるとは思います。
ただ、やはり伝わらないのは、受け取り手ではなく、伝え手の責任だと思うのです。
芸人さんの「伝える」技術
私はお笑いが好きで、よく劇場に観に行くのですが、芸人さんの「伝える」技術は本当に勉強になります。
自分たちのことを知らない人の前で、「お前ら誰やねん」の状態で、自分たちの漫才を見てもらうというスタンスなので、伝え方、伝わり方は、やはりかなり気にされているんですよね。
ただ、まだ若手の方ばかりの公演だったり、毎日やっている公演になると、ある程度その人たちのことを知っているお客さんや、その人たちのことを好きなファンばかりが集まってくるので、身内ネタっぽくなってしまう日もあります。
よく通ってる身からすると、それはそれで面白いんですが、もしなんとなく興味があって、たまたまその公演に入った方にはきっと伝わらないなあと思います。
そんな中でも、私の好きな芸人さんのひとりで、初見に伝わらない可能性があることへの補足・説明を絶対に怠らない方がいます。
芸人さん界隈・常連には、当たり前に浸透している事実があるからこそ成り立つボケなども、初見に見せるようなフリを必ずしたり、サラッと補足を付け足したりします。
本当にマメで、いつも感心するのですが、その中でも、私の中で心に残っているエピソードがあります。
とあるライブのコーナー。
詳しい内容は忘れましたが、メッセージアプリLINEをテーマに行うコーナーでした。
その頃はすでにLINEは今と同じくらい浸透していたので、MCは当たり前のように「LINEを使って〜」とすらっと説明しました。
そのときに、例の芸人さんが即座に、「LINEっていうメールみたいなツールがあってね」と補足したんです。
「いやそれくらい分かってるわ!」と舞台上の芸人さんから総攻撃。
客席もくすくす笑いが起きていました。
でもその日の客席をよく見てみたら、いつもの劇場より、年齢層がかなり高かったんですよね。
おじいちゃん、おばあちゃんもちらほら。
ボケだったのかもしれないけど、きっと、伝わらない可能性があるかもしれない1%の人に向けて、そんな補足をしたんだろうなと思います。
そして恐らく、普段からそういうことを意識してるからこそ、そんな補足が自然と出たんだと思います。
伝わるのが当然じゃない、知っているのは当然じゃない、そのことを改めて実感した体験でした。
それにこれは偏見かもしれませんが、自分を大きく、賢く見せたい人ほど、やたら業界用語を使いたがる傾向があるように思います。
むしろ、賢い人や、知識が豊富な方こそ、誰にでも伝わりやすい言葉に噛み砕いてお話する能力に長けている人が多いはずです。
本当にその言葉が必要なのか、本当にその言葉で伝わるのか、常に考えて配慮することが、伝えるということだと私は思います。
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