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『メイ・ディセンバー ゆれる真実』@TOHOシネマズなんば 別館

チャールズ・メルトンは性犯罪の被害者である。それはそうだろう。彼に対する社会的なサポートは必要だし、加害者であるジュリアン・ムーアは法に則った処罰を受けるべき。ただ、彼の人生を被害者の人生として、否定的に、悲劇的に捉えることだけが正解ではないように思う。確かに彼はみんなと同じように卒業式には出席できなかっただろうし、大麻を吸うこともなかったんだろう。普通に若者らしい青春は経験していないのかもしれない。

でも、僕だってそんなもの経験してないぞと言いたい。普通に若者らしい青春て何なんだ。そんなもの経験していない人間はいくらでもいるし、その人たちの人生全てが悲劇的だとも思わない。同じ人生なんてひとつもない。それぞれがそれぞれの決断、あるいは他者からの影響もあって、その人にしか経験できない唯一無二の人生を送っている。決して物語ではないリアルな人生として。

どうしても魅力的な演技には見えなかったラストシーン。あれだけ取材して内面に迫ろうとしながら結局蛇を使ってしまうとは。他人の人生を理解しようとしたナタリー・ポートマンの試みが、ひどく的外れな行為だったように見えてくる。

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