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烈戦人造人間はセンスの塊だったという話

「ドラゴンボールZⅢ 烈戦人造人間」とは、ドラゴンボールのファミコンソフトである。

現代のゲームでは珍しくなったが、ファミコン当時は流行ったアニメ作品がRPGになることが多かった。そのドラゴンボールRPG作品の6作目になる。(ナンバリングはⅢだが同じ系譜のRPGが他に3作あるので実質6作目)

バトルシステムはカードバトルとコマンド式RPGを組み合わせたような形式で、キャラクターは攻撃時にカードを選び、そのカードの攻撃、守備の星の数によってキャラクターの攻撃力、守備力がブーストされるようになっている。
カードには流派が設定されており、「亀」「神」「魔」などの流派が一致すれば強力な攻撃が出せるし、「必」を選べばKIを消費してさらに強力な必殺技を出すことができる。(後期の2作は少し仕様が異なるが)

そしてこの星の数はそのままマップでの移動力となっており、戦闘用に強いカードを残しておくと移動がちょっとづつしかできないし、逆に移動で星の多いカードを使ってしまうと戦闘では弱いカードしか使えなくなるという感じで、なかなかカードと戦闘、そしてドラゴンボールの世界観とのバランスも取れた良システムだった。

そんな、キャラゲーとしては十分良ゲー寄りだったドラゴンボールのRPGシリーズだが、この「ドラゴンボールZⅢ 烈戦人造人間」はクソゲーと言われている。

理由は粗の多さだ。ストーリーがあまりにも短く、フリーザ対超サイヤ人悟空から始まってラスボスはセル第1形態対ピッコロ。しかもイベント戦闘である。
人造人間と謳っていながら物語の大半はクウラ軍と戦っており、ゲーム内のイベントもギャク混じりのお使いが殆ど。せっかく派手なカットインが入る必殺技も1ターン無駄にして「KIをねる」をしないと出せないし、最終章ではベジータとトランクスがオートで操作できないためにベジータは超サイヤ人になることができない。強襲サイヤ人~超サイヤ伝説までで好評だった戦闘力表記が無くなったことも残念な点だった。
他にも、成長すると勝手に切り替わる謎の2Dモード戦闘や、Z戦士たちが何故か岩を破壊するためのダイナマイトを探し回る展開、ドラゴンボールを飲み込んでしまった恐竜に下剤を持っていってうんこをさせる(もちろん取りに行くのは鼻の無いクリリン)というシュールすぎるお使いイベントとか、もう粗を言い出せばキリがないようなゲームなのだが、それでもキラリと光る部分はあったのである。
いや、むしろ光る部分だけで言えば、ファミコン当時から考えるとあり得ないほど先進的だったのだ

いやさすがに「センスの塊だった」は言い過ぎたが、今回はこの烈戦人造人間について語ってみたい。

前作のラスボス戦から始まる展開

烈戦人造人間のオープニング戦闘は超サイヤ人悟空対フリーザである。直接的な前作の激神フリーザ、実質的な前作の超サイヤ伝説はともにフリーザがラスボスのため、前作のラスボス戦から始まる展開になる。これは中々熱いだろう。

シリーズもののオープニングが前作ラスボスというのは今でこそよく見る展開だが、それを初めてやったのはこの烈戦人造人間ではないだろうか?
いや実際そうかはわからないが、かなり初期なのは間違いないはずである。そういう意味では、烈戦人造人間は時代の先を行っていたゲームと言えるだろう。
ちなみにこのフリーザ、初戦とはいえ通常攻撃2~3回で倒せるのは御愛嬌だ。

音楽が良い

クソゲーの音楽は出来が良いというのは定説だが、この作品も例に漏れず音楽が良い。特に評価が高いのがボス戦のBGMである。

軽快なテンポでありながらもどこか怪しさを感じる曲調。
怪しく奏でる副旋律が人造人間編、セル編の雰囲気をうまく表している。
後の読者はあまりそういうイメージが無いかもしれないが、連載当時の人造人間編、セル編は謎解きサスペンスのような趣があったのである。多くの謎が残されたまま次の恐怖が襲い来るような先の見えない不安、その当時の雰囲気をよく表した名曲と言えるだろう。

ただ一つ難点があり、戦闘曲はターンが終ったり画面を切り替えたりすると出だしに戻ってしまうのだ。(デデデデーン ちゃーんちゃーんちゃちゃーんちゃーん デデデデーン ちゃーんちゃんちゃ デデデデーンと繰り返された人も多いはず)
つまり、最後まで聞くには戦わずに放置するしかなかったというのは御愛嬌である。

周回戦闘スキップを試みた形跡がある

近年のスマホゲーでは周回戦闘作業のスキップ機能が実装されていることが多い。何度も同じ作業を行う煩わしさを解消しつつ、キャラクターを強化できるというユーザー側にとっては嬉しい機能だ。

烈戦人造人間にはこの周回スキップ機能のようなものが搭載されている。それがこの2D戦闘である。

この戦闘モードは敵とのレベル差が一定以上に開くと自動的に切り替わるようになっており、自操作せずに勝手に戦って勝手に敵を倒してくれるという、まさに自動周回支援と言えるモードだ。30年前のゲームに周回を楽にしようという発想があったのは驚きである。

ただこの2Dモード、致命的な欠陥がある。
普通に戦うより長いのだ。

そもそも普通の3D戦闘にもオートモードがあるため、自動化ならそれで十分だし、2Dモードだとカード効果や支援の恩恵が受けられず、回復もできなくなる。そのため戦闘が終わったら結構なダメージを受けているということもザラで、はっきり言って2Dモードはメリットゼロだった。
そしてさらにこのモード、裏技を使わないとOFFにできないのである。つまり、隠しコマンドを知らないユーザーはレベルが上がったら強制的に2D戦闘を見させられることになってしまったのだ。これはかなりしんどかった。

このようにかなり欠点があるのは御愛嬌だが、ともあれ「自動周回スキップ」という発想がRPGに持ち込まれたのはこのゲームが初めてではないだろうか?
そういう意味では、列戦人造人間は時代の先を行っていたゲームと言えるだろう。

超高速戦闘を再現した唯一?のゲーム

ドラゴンボールのゲームは今でも続々と発売されている一大コンテンツだが、現在においても、戦士たちのスピード感を正しく再現できたゲームは存在しない。
それはある意味当たり前の話で、目にも止まらぬ動きをリアルに再現してしまったらアクションゲームとしては成り立たなくなるし、演出としても何をやってるかがわからないからだろう。

しかし、そのスピード感を再現したゲームが30年前に存在していたのである。それがこの烈戦人造人間なのだ。

まず参考として直接的な前作となる激神フリーザ(FC)の戦闘を見てみよう。

次に、実質的な前作となる超サイヤ伝説(SFC)の動きも見てみたい。

どうだろうか。かなりもっさりである。当時のゲームとして演出は頑張っているものの、ドラゴンボールのスピード感が再現できているとは言い難い。

ではそれが烈戦人造人間ではどうなったのか。

これは速い・・!

まさに目にも止まらぬ動きである。こんなに格闘が速いゲームは現代においても見たことが無い。きっとドラゴンボールのスピード感をリアルに再現するとこんな感じになるのではないだろうか。
筆者は小学生当時、この演出を見たときはとても感動した。これこそがドラゴンボール!と思ったものである。
これほどの速さをファミコン当時に実現できていたのは今考えれば驚きで、そういう意味では、烈戦人造人間は時代の先を行っていたゲームと言えるだろう。

ただ速すぎてダメージ表記が見にくく、過去作ではあった倒れる演出も無くなったため、いつのまにか敵を倒していたという状況が頻発するのは御愛嬌だ。

一撃でやられるゲームバランス

ドラゴンボールの原作では、この頃のキャラクター間の格差は途方もなく大きくなっている。地球人ではもはや人造人間の相手にもならない。

そんな格差もこのゲームは忠実に再現している。
このゲームはパーティーメンバーにクリリン、ヤムチャ、天津飯、チャオズと4人の地球人がいるが、人造人間を相手に戦闘に出した場合、ほぼ一発でやられるのだ。

出典:マルカツ!レトロゲーム

一発でこのダメージである。仮にレベル上げを繰り返してMAXにしても、星の数が低ければ一発は耐えられる程度にしかならないのである。
攻撃はそれなりに(といっても数十~程度)通るのだが、原作の格差はかなりの精度で再現されていると言えるだろう。

この一撃死も、昨今の「死にゲー」に影響を与えているとかいないとか。フロムソフトウェアの重役がかつて烈戦人造人間に関わっていたという噂もあるとかないとか(嘘)。
そういう意味では、烈戦人造人間は時代の先を行っていたゲームと言える・・いやこれはちょっと厳しいな。

ちなみに、お助けゲスト的な立ち位置で参戦する超サイヤ人トランクスもほぼ一撃で沈むのは御愛嬌である。(ある意味原作通りだが)

こんどは オラが やる!

いかがだっただろうか。欠点も多いゲームだが、烈戦人造人間の先進さが伝わっていれば幸いである。

ファミコンのドラゴンボールRPGシリーズはこの後1作、「サイヤ人絶滅計画」というオリジナルのシナリオのものが発売されているが、そちらは戦闘がかなり冗長になってしまっており、そこはとても残念だった。

近年もDBゲーは据え置き機でも沢山出ているが、その殆どがアクション型になる。個人的には今の技術でめちゃくちゃ戦闘演出を凝ったコマンド型RPGを作ってほしいなぁと思うのだがどうですかねバンダイさん・・?
例えば序盤は格闘もそんなに動きが速くないし破壊描写も控えめだが、物語が進むごとにどんどん速くなって破壊描写もとんでもなくなっていく、みたいなのがあったらいいな。

なお、当時のゲームのファンの方は神龍に願った上で、「ドラゴンボールZ RPG」で検索すると良いことがあるかも・・?


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