映画と出会った話
あの時のサマーと私を思い出して
高校生の時、悩みや迷いを全部忘れてただただ自分の考えに没頭できる空間がひとつあった。
そう、TSUTAYA。
部活や塾の帰りに寄って、CDを借りてiPodに音源を入れる。これがわたしの趣味だった。
当時アルバイトはしていなかったので、もちろんお小遣いから使える金額は限られており、何も借りないけど、とりあえずどんなものがあるのか物色するだけの日もあった。
基本CDだけを借りていた私は、ある日なんとな〜く映画コーナーに立ち入ってみて、何か気になるものがないか物色していた。
そこで忘れもしない。
直感で気になったジャケットがあった。
「(500)日のサマー」だ。
サマーと会った日
今見たら何がそんなにいいのか、
正直わからない。でも、
たくさんの映画が並ぶ中でこの2人のこのジャケットがとっても輝いて見えた。
正直、明確な時期は覚えてないけれど、それはまだ準新作の緑の札がかかっていて、最安の旧作になるまで待とうと思った記憶がある。
きっとおしゃれで大人で、
こんな恋愛がしたい!と思うようなラブストーリーなんだろうな〜と頭がお花畑な当時は思っていたかもしれない。
恋愛はしたことあるけど、デートなんて帰り道や市内のジャスコ、なんもない田舎でできることなんてただ歩くことだったりして、
まだ本格的なデートやそもそもお付き合い自体もしてなかった時。
恋愛のキラキラストーリーが観たかった。
それから数ヶ月、もしかしたら一年くらい経っていたのかもしれないけど、それが旧作になった時、お小遣いを使って初めて映画を借りてみることになった。
そして、その時。
サマーに理想を描き始めた頃にはいなかった、彼氏ができていた。
すごく誠実で、真面目で。とても尽くしてくれる同い年の同級生だった。そして重要なポイントは、「私、この彼のこと本当に好きなのかな?」と悩んでいた時期でもあった。
人生ってめちゃくちゃタイミングが重要だと思うけど、これほどタイミングが合うことはあまりない。
このタイミングだからこそ、この映画との出会いで私と映画の歴史は始まることになりました。
(500)日のサマーって?
ここからはネタバレ。
でも映画の内容を話したいわけじゃないので、
簡潔に。
この映画、どんな話なの?ということを一言で言うと、「恋愛あるある」(ファンに怒られそう...)
1人の男性と女性が出会い、タイトル通り彼らが恋した(500)日の間に何が起こったか、
時系列をバラバラにして追ってく映画。
主人公のトムはメッセージカードを制作する会社で働いており、そこに転職してきたサマーという女の子と出会う。
トムは、運命の出会いを信じており、いつか運命の女性に出会えると信じている。対して、サマーは運命なんてない。ちょっとさっぱりしてる女の子。いや、ちょっとじゃないかなり。
もちろん、トムはサマーが運命の相手だ、
と出会った瞬間から確信する。
サマーは?
サマーはトムとデートをするし、キスをする。
でも、
「真剣に付き合う気はないの」などと言う。
いや、ビッチなのよ。
トムとサマー
先程申し上げたように、時系列がバラバラな映画。
最初はうまくいっていない2人の様子から始まり、その後出会い、絆が深まる様子、そしてうまくいかなくなった理由が描かれていく。
有名なのはデートシーンで、
トムとサマーのIKEAデートは、今日本でこれだけIKEAに家具の購入目的でなく、
デートが目的のカップルが多い要因の一つのはず。
この辺りまでは。
この辺りまでは私が予想していた、
「おしゃれな恋愛映画」だった気がする。
トムは初めてサマーと過ごした夜に興奮してミュージカルみたいに踊り出すし、サマーは仕草も話し方もファッションも破壊的に可愛い。(というよりサマー役のズーイーちゃんが独特の魅力で、本当に可愛い)
でもここまでだった。
この後、人生ではじめての感情が待っていた。
真剣にお付き合いしたいトムと、
あくまでも友達でいたいサマーがすれ違い、
ついに、サマーはトムと映画館で映画を観てるときに急に泣き出してしまう
そしてその瞬間だった。
なぜか私も泣いていた。
ぶっちゃけ、
ここで泣いた、というと多くの方から( ? )という
反応をいただく。
正直今だったら泣けない。
でもこの時の感情ははっきり覚えてる。
サマーと一緒に泣いた
私が泣いた理由は明確。
その時付き合っていた彼氏のことだった。
相手が本当に優しくて、誠実で、ものすごく尽くしてくれて、なんの申し分もないのに、
この人を愛せない気持ちってなんなんだろう?
そんなことに初めて悩んだ時期だったから。
今まで好きな人が振り向いてくれないとか、
好きな人に振られた、みたいなことはあった。
でも好きだったはずの人が、
その人になんの落ち度もないのに、
なんか好きになれない。
好きになりたいのに。
私っておかしいし、
ひどい人間なのかもしれない。
そんなふうに思ってしまっていた。
でもこの突然泣いたサマーを見た時、
サマーの気持ちがわかってしまったような気がした。
その瞬間、
「その感情、あなただけじゃないよ」
ということを初めて"映画"に言われた瞬間だった。
サマーの設定年齢とほぼ一緒の今、
その後の拙い経験からサマーにはもうちょっと複雑な感情や考えがあったことは推測できるものの、
当時の私はそれだけで涙べちょべちょ。
この時初めて、
映画はこの「私だけじゃない」をはじめとして、
他人が言葉では教えてくれないような、
「感情の引き出し」を見つけさせてくれるツールなんだと気づいた。
正直、とても救われた。
この日を境に、
映画をもっと観て、他人の人生(それが事実でも創作でも)を覗き見ることによって、
もっと自分の感情を知りたいと思うようになった。
このサマーとの出会いを境に、
映画を通して自分を追いかけることになったのだ。
それからの映画と私
それから、
TSUTAYAで行くのはCDコーナーよりもDVDコーナーに行くようになったし、
新作じゃなければ、
準新作まで課金して借りた。(進歩)
そこで借りた映画をノートにメモして、
観たいと思った映画もメモして、
どんどん鑑賞していった。
今思えば、
映画のサブスクなんてない時代、
借りちゃったら、つまんないからやめよ〜とか、
これ本当に面白いのかな?という口コミすら
満足に調べられないし、
借りたら1週間で返さなきゃいけないので、
ものスゴイ集中して見ていた気がする。
そして、
このサブスクの時代の波で、
私が一番通った地元の最寄駅のTSUTAYAは潰れてスーパーになってしまった。
あのTSUTAYAのボロボロのケース。
もう5年くらい触っていない。
でもあのTSUTAYAでジャケットが正面を向く、
この映画のDVDに会っていなかったら。
これも全て、
タイミングが良かったんだと思う出来事。
ちなみに(500)日のサマーで感じたことは
もっとたくさんあるのだけど、
これは私と映画の出会いの話をしたかったので、
また別でちゃんと書きたい。
たぶん初回からサマーに入れ込むのは、
相当捻くれたやつだと思われるかもしれないけど、
たぶん捻くれてるのかもしれない。
でも、トムの気持ちだってもちろん経験したことある。
今ならわかってあげられる、
サマーやトムから感じ取ったあの気持ちを
あの頃の私に説明できるようにしてあげたい。
とにかく、私が映画をはじめとする、
物語と出会う目的は
「自分の感情の引き出しを見つけてあげる」
それだ。
サマー、
自分と向き合う一つの方法を教えてくれて、
本当にありがとう。
これからたくさん、
私と映画の話をたくさん記録していきます。