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自由の国デンマークを支える教育とは。全寮制の学びの場「フォルケホイスコーレ」

下北沢で日本初の「レジデンシャル・カレッジ」(居住型教育機関)をつくるプロジェクトに携わるようになってから、世界の「全寮制」に自然と興味を持つようになりました。中でも、デンマークの全寮制の成人教育の学校「フォルケホイスコーレ」は前々から興味があり、訪れたかった場所。
デンマーク郊外にある「Krogerup Folkehøjskole(クロロップホイスコーレ)」に突撃訪問してきました。ランチタイムに学生たちに会うことができ、日本人やデンマーク人の生徒さんや先生から、フォルケのこと、色々と教えてもらいました。(文章・写真:水上 友理恵)

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民主主義の根底となる「フラットな議論」ができる学校


クロロップホイスコーレはどのような学校なのでしょうか?

(生徒さん)18才以上の学生約115名が学んでいます。性別や年齢も関係なく同じフロアで、同じ性別の生徒が2人部屋か、もしくは1人部屋に住んでいます。

この学校では、日本人も多く、モーリタニア出身のNPOが創設した「クロッシングボーダー」という国際関係のコース(定員は約18名)に、15人ほどいます。日本人の場合、大半の人が大学を休学してきています。デンマークの場合、大学入学前のギャップイヤーを2年間ほど取るのが当たり前なので、19-20才ほどの生徒が約7割を占めると思います。

選抜は英文エッセイによって行われ、語学力と志望動機を見られます。
ここのホイスコーレでは、授業は必修科目と選択科目にわかれており、全部英語で行われます。デンマーク語で授業が行われるホイスコーレもあるようです。選択科目ではヨガをやったり、クッキングをしたり、思い思いに楽しみます。

4ヶ月で1タームになっており、メンバーはごっそり入れ替わります。そのタイミングで別のフォルケホイスコーレに移る人もいます。1年の留学だと、(私は)最初怠けてしまうような気がしていて、数ヶ月だと1ヶ月単位でゴールを決めて頑張れる良さがあると思います。

同じフロアに男女が一緒に住んでいて問題など起きませんか?

(生徒さん)同じフロアに住んでいることが理由で問題が起きることはないと思います。デンマークではジェンダー教育が進んでいて、「性の欲求があるのは自然なこと」という認識があります。

性の話も性別関係なく出来ますし、コンドームの販売機が洗濯機の脇に置いてあります。ピルを飲んでいる女の子も多いです。日本でも性教育の重要性を思い知らされますし、自由でも問題が起きないのは、そうした性教育が徹底されているからだと思います。

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みんなの問題は、みんなで解決するのが「デンマーク流」


ここに入学して、驚いたことはありますか?

(生徒さん)先生も生徒も全く対等な関係であることに驚きました。例えば、デンマークでは、小学校の時から「逆家庭訪問」が当たり前で、ここでも先生の家に行って先生の家族に会うこともあります。「先生も一人の人間なんだ」って思えますよね。また、先生が政治に関して議論することや、生徒が先生の言うことを批判することも問題ありません。

日本では「言われたことをきちんと遂行すること」が評価されますが、
デンマークでは「批判的に考察し、自分の意見をしっかりと持ち、議論を戦わせる」ことが大切です。

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共同生活を行う上で、ルールなどはありますか?

(生徒さん)「食器は使ったらちゃんと片付ける」といったモラルはみんな守ります。
ただし、守るべきルールはこれと言って特にありません。
また、4ヶ月の学期ごとに生徒が全て入れ替わるので、各タームごとに「みんなで新しい学校を作る」ような雰囲気があります。
いわゆる「レジデンシャル・アシスタント」のような仕組みはなく、当番制の持ち回りで、パーティの企画などの寮運営を行っています。

何か問題が起きた時にはFacebookグループに書き込みをし、そこでフェローシップの学生による「デモクラシックミーティング」が行われ、生徒からあげられた問題が議論されます。先生から議題を提案されることはありません。「ルールは与えられるものではなく、みんなで話し合って決めるもの」という感覚が、共同生活を通じて自然と育まれます。
デンマークで民主主義が活発なのも、きっとその延長線上に「政治への参加」があるのだと人々が考えられるからじゃないでしょうか。

フォルケホイスコーレは「一生学び続けられる場」

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また、訪問する上で、アーバンデザインを専門とするHald先生にも出会うことができました。(偶然にも、学生を連れて日本を年二回ほど訪れているそうです)

デンマークでは、なぜこのような学校があるのでしょうか。

(Hald先生)財政的に政府の補助が入っていることが大きいと思います。
また、デンマークの法律では、かつては高校から大学に直接進学した生徒の方が良い評価を得られる法律がありましたが、撤廃されました。そこで、高校卒業後、ギャップイヤーを取る若者が増えました。

また、ユニークなことですが、ホイスコーレでは試験をしないように法律で決められています。試験で良い点数をとることや、評価されることが目的ではなく、学びたい人が自分の学びたいことを学ぶ場所です。
リタイアした人のための、ホイスコーレもあり、「学びたい人が、一生学び続けるための場」がデンマークにはあるんですよ。

ところで、東京での新しい取り組みは素晴らしいですね。今度、学生を連れて日本も訪問するので、また東京で会いましょう!

レジデンシャル・カレッジ作りのヒントとなるようなお話が、現地の学生や先生から直接聴くことができ、本当にありがたい限りです。「おばあちゃんになったら、日本の老人ホームじゃなくて、こういう学校に入れたらいいのになあ・・・」という生徒さんがいて、まさにそんな学校を将来つくれたらいいな、と夢(妄想!?)は広がるばかりです。インテリアも含めて「さすがデンマーク!」と叫びたくなるほどハイセンス。居心地の良い空間づくりも含めて、大変勉強になりました。ご協力してくださったみなさま、本当にありがとうございました。

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