小言のこごと、その7
あなたにとっての25センチ規模の小言は、私にとっても25センチ規模の思い出なのである。
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GENERATIONS from EXILETRIBEの小森隼さんがTOKYOHEADLINEで連載中のコラム、「小森の小言」。
第59弾のテーマは「漫画」についてでした。
人は自分が見て聴いて感じた事で構成されているけれど、誰かが時間と心を込めて作り上げたものがあなたという人間の一部を形成したのならば、それは作り手からすれば誇らしき事象なんじゃないかな、と思う。
180,960円でこんなにも沢山の経験と体験と人生観を学んだとするのならばとんでもない破格です。
人生設計製作所があるとすれば、きっと倒産ギリギリの経営に違いない。
"180,960円"
これは彼が今までに愛する週刊少年ジャンプに捧げてきた、尊きお小遣いとお給料の大凡の総額。
彼のこの事実への受け止め方と言い回しの愛おしさにも漫画から学び得たものが含まれるのならば、もう私は漫画に一生頭が上がらない。
有難う、彼が今までの人生で出会った漫画達。
私は彼のこういうところも大好きです!
叱られた後にバスでジャンプを読んだこと、
お風呂場で漫画の台詞の真似っこをしては
ひとりで大騒ぎして遊んでたこと、
おじいちゃんの下に溜まった漫画達を預けてたらあまりの量でとうとう処分されちゃっていて悲しくなったこと、
心を動かされて春高バレーに足を運んだこと...
そういえば彼が教えてくれる数多のエピソード達の中でも、漫画の存在はようく光っている気がする。
12歳の時にはじめて週刊少年ジャンプを手に取ってから気が付けば13年。はじめて漫画を手に取った瞬間から数えると、もっと永く。
変わらぬ25センチに向かう彼はうんと大きく成長したけれど、それでも変わらぬ物が確かに彼の手の中にあるのだ。
この先も、例え読み方や手に取り方が変われども、彼の傍にきっと漫画は有り続ける。
これからの長い人生の中であなたは漫画の世界でどんな人生に出会うんだろう、どんな言葉に心を震わせるのかな?
願わくば、あなたのその心の内を見せるように愛したそれをこの先も教えて欲しいな、と私は思う。
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はじめて漫画を手に取ったのは、多分幼稚園の年長さんの頃だったと思う。
割とご近所の「平和堂」というローカルスーパーの2階、端にあるちいちゃな本屋さんの入り口のラックにそれはあった。むんとした暖房の温さを肌で感じた記憶があるから、多分2月頃。
「みんなの幼稚園」だとか、そういう子供向け雑誌が傍にある最中、何故だか「なかよし」を手に取った事を未だによく覚えている。
当時とにかく絵を描くのが好きだった私にとって、漫画との出会いは特別センセーショナルだった。
「ぴちぴちピッチ」に「まもってロリポップ」、「東京ミュウミュウ」だったり。きっと同世だったら目が醒めちゃう様なラインナップにどれだけ心踊らされたことか!
あの頃の私が描いた絵を、未だに思い出せる。
リボンにハートにツインテール、必ず下ろした前髪にふわふわの裾、パフスリーブ。
周りの子よりもうんと早いスピードでペンとスケッチブックを消費していたものだから、母も買い込むことに必死だったと後々聞いた記憶がある。
目眩く漫画の中の可愛くて、ときめいて、どの作品にもとめどなく溢れるファンタジーに魅せられていた気がする。そして私も、そんな自分の世界を可視化したかったのだ。
彼が漫画から人間としての在り方に大きな影響を受けているのならば、私が1番に影響を受けているのはきっと「描くこと」。
気が付けばはじめて漫画を手に取ってから20年近く経とうとしているけれど、24歳になった私の手元で変わらず世界は広がっているし、やっぱりペンは動く。
「漫画家になりたい」とか、そういう事は一度だって考えた事は無かったけれど、それでも私は描くことが好きだ。
大人になった今、私が描くことは「気持ちを伝える手段」としてずっとずっと生きている。
ボールペンにサインペン、シャーペンと消しゴム。おばあちゃんから授かった大切な水彩色鉛筆。今の私の大切な味方はこんな具合。
これから先どんな道具と出会って、私は描き続けるんだろう。どんな漫画を手に取って、大切に生み出されたそれから「私もこんなの描いてみたい」と心を揺らされるんだろう。
これから出会える漫画とその瞬間達が凄く楽しみだし、何歳になったってきっと変わらぬ私のちいちゃな希望なのだ。
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