勝手に本人スピンオフ『宮本浩次VS玉置浩二 歌化け物とスーパーボーカリスト達の宴(5)』
(前回までのお話↓)
井口の手足をばたつかせ上半身を激しく揺らす、その奇怪な動きにその場の一同は棒立ちとなった。
井口はその動きのまま宮本達に向かって突進してくる。
しかしその視線は明後日の方向だ。明らかに常軌を逸しているように見えた。
大丈夫なのか、この男は?
一体、何をするつもりなのか?
正気か?
宮本自身も挙動不審だのライブ中は激しい動きとよく言われるが、そのような可愛げのある表現ではおさまらない異常な井口の動きであった。
すると井口はにらみ合っていた泉谷と松山の間をめがけて近寄ってくる。
「うお」
泉谷と松山は思わず後ろに後ずさる。その隙間を井口は一陣の風のように
すり抜け自動販売機の前に立った。
宮本達は唖然となって井口の後ろ姿を見つめる。
なんだろう。なぜわざわざ人を避けずに井口は突進してきたのか。
流行りのぶつかりおじさんなのか。
なんという無礼者なのか。
自分達はいいが泉谷さんや松山さんに失礼ではないか。
そう同意を求めようと宮本は吉井に視線を送る。
しかし、吉井の目は爛々と輝いている。興奮しているのだ。興奮しながら 吉井はペットボトル飲料を購入する井口の後ろ姿を見つめている。
吉井と全く同じ目の輝きをしている人間がいた。
それは壁際に立ち、瞬きもせず見つめているKing Gnuの常田であった。
常田には井口の行動の理由が理解できた。
井口は井口なりに先輩達の争いを止めたかったのである。
しかし、化け物達を前に、若き井口が声をかけたところで何ができるというのか。
そこで井口が出した答えはその場の空気を撹乱して先輩達のヒートアップした気持ちをクールダウンさせるといった「必殺 その場の空気錯乱作戦」であったのだ。
常田は井口の愚行を同じメンバーとして止めようと一瞬、躊躇したが、 しかし「その愚行を見届けたい」という欲望が勝ってしまった。そして今、目の前で繰り広げられている光景に興奮していているのだ。常田と吉井は 目と目があった瞬間、同じ興奮を共有している事を察知し、ゆっくりと頷きあった。
「おう、ちょっと待てよ、そこの猿」
宮本より先に井口の背中に声をかけたのは、想像通りオーロラ色に輝く歌声を持つ北国の反社こと、松山千春であった。
「何がしてえんだ、おめえはよお」
その鋭い口調に捨て身の井口も言葉が出ない。井口は壁際に立つ常田に視線を送り助けを求めるが常田は目を瞑り、壁と同一化した。あっさりと井口を見捨てたのであった。
「いえ、お、俺は…」
「挨拶もなしに俺と泉谷の前を素通りするなんざ、いい度胸じゃねえか。 なめてんのかあ?おう、こら!」
松山は井口の脛に蹴りを入れる。
さっきまで泉谷と宮本に向かっていた松山の因縁はあっさり井口に向かっていった。
宮本を庇っていた泉谷は井口を庇わず、その光景を楽しそうに見ている。
「ふふ。ぴろじのせいで今、井口君という才能が潰されようとしているよ。それもこれもぴろじが僕とのライブ共演を拒むからだ。ひどいなあ」
玉置が満面の笑みを浮かべながら宮本に言う。
「み、宮本さん、助けてください」
松山に蹴りを入れ続けられる井口は宮本に泣きそうな顔で助けを求める。
助けてくださいと言われても、かばう理由は自分にはないし、そもそも 失礼な行動をとったのは井口であるし、しかし見過ごすわけにもいかないしと頭を掻きながらうーんうーんと思案している宮本。
その間も井口は松山に小突かれ続けていた。
と、その瞬間だった。
「いい加減にしたらどうっすか!」
一同、声の方向に振り返る。
そこに立っていたのはボーカリスト界で最も強い遺伝子をもつ声帯ハイブリットの持ち主、ONE OK ROCKのTAKAだった。
(続く!が、もはや収集がつかなくなっている)
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