映画「ダイハード」ラスト3分の奇跡を分析する。
今更「ダイハード」のパート1が傑作である事は空が青く、ティモシーシャラメが美しいのと同じくらい自明の理なんだが、ラストのエンドクレジットに入るまでのこの怒涛のキャラ捌きとシーンの積み上げを3分弱で描ききっている事を改めて
知って震えている。
1)マクレーン、生還してアルと感動の初対面
2)ドウェイン警視のクレーム
(観客が抱くマクレーンの職業倫理違反(刑事なのに人を殺しまくる)への疑問を
先に言わせる
3)カールが生きていた!
(エンタメな盛り上げと2への回答(そりゃこんな事態なら刑事も殺しちゃうよ
ね!)の2つの要素を兼ねている)
4)アルが発砲してトラウマ解消(カタルシスを提供)
5)アーガイルが乗るリムジンが勢い良く登場
6)ソーンバーグが不躾にインタビューしてくるのをホリーがパンチ
(観客が抱くソーンバーグへのイラつきを一網打尽にする痛快さ)
パンチ画面、中継に切り替わり視聴者目線にして笑い声を入れる
(観客のリアクション誘導)
7)アーガイルのセリフ「来年のクリスマスも荒れるぞ、この二人!」で
パート2への布石
8)車中でキスする2人(映画の主題「マクレーン夫妻の離婚危機」への解答)
何気に出色なのは4の後、愁嘆場にしないで早々にリムジンを突っ込ませるところに痺れる(べたつかなくてテンポがいい)
ジョン・マクティアナンはあまり作家として語られないが、自分のエゴを出さず
キャラクターとドラマを尊重した上でアクションを作る事を大切にしている大人な芸風で(でも刑務所入っちゃったけど)今のド派手なアクションが先にあって逆算してストーリーを作っているアクション映画とはやはり一線を画す(ちゃんと人間ドラマがある)なので、ダイハードは何度見ても何十年経った今見ても面白いのであろう。
最近、社会の病理を描いた病み系コンテンツや受け手の想像力に委ねます系の悪く言えば投げっぱなしコンテンツブームでウェルメイド系コンテンツはうけないという話をされたのだけどこっちの方が断トツ作るの難しい(作劇的に)し、長い目で見たらすぐ消費されて終わりでなくロングセラーになる可能性が高いと思うのだがねえ、など。
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