やっぱり人間万歳、という反動に抵抗せよ

 それはせんじつめると、胃袋万歳、性器万歳、貨幣万歳である。どんなに考え付くされた人間擁護の宣伝も、結局は生きた人間たちの欲望器官によって塗りつぶされる。
 「正統」な思想や芸術に還流する、この人間万歳の大団円こそが、進歩や進化の歴史的な意味に泥を塗っている。人間万歳の革命や戦争を回顧すれば、そこには人間が他者を非人間としてなぶり殺す暴力が横たわる。人間が人間を無上の存在とみなすこと、それは自己存在の自我の究極肥大である。
 だからこそ、人間万歳の循環論を脱出したときに、初めて近代世界の存在意義もまた明らかにされる。近代は神の代わりに人間を置いた。今度は人間の代わりに別な存在が王位につくだろう。人間の最後の仕事は、その存在を自らの手で造ることだ。

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