社会的構造物


 人間が作り出した社会的構造物は、人間の理性(合理主義)によって齎されたと社会科学者たちは考える。個体としての人間の生物性を、社会性と結合させることによって、個人と、社会的構造物の同質性を彼らは規定する。そうすることによって、社会的構造物が有する意味は、人間の快苦の原理に基づいていることを彼らは説く。人間の生物性は、人間の科学的な把捉の為に肝要な要素であり、この生物性を明らかにするということこそが、人間の普遍的な行動法則を導出することになるわけだが、つまるところ、その行動法則は人間の動物的本能ということになる。この本能は正に快苦の原理である。

 これを考えると、社会科学者たちが理性の信奉者ではなかったことが判然とする。彼らは人間の理性と野性は同じ根源を共有していると、少なくともその理論の中では考えていたのである。

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