君は医療放射線を運良く回避できるか

 そこに現代のガン死がかかっているといっても過言ではない。君が閉所恐怖症ならば、君はCTを回避するだろう。君が美食家ならば、君はまずいバリウムを回避するだろう。君が痛がり屋なら、君はマンモグラフィーを回避するだろう。君が対人恐怖症や引きこもりなら、君は病院の診察室へ赴くことはないだろう。
 おめでとう、命拾いした人たち。君たちは自身の性癖に感謝すべきだ。それが、君たちの寿命を守ったのだ。
 それに対して、健康な肉体を持つからこそ、その健康を守るべく自ら病院に足を向けた愚直な人たちよ。君たちはてくてくと医療放射線を体に受けに行き、自らの寿命を図らずも縮めてしまったのだ。
 CTスキャンを終えた後に診察室で、胃の形が変だとか、便秘気味だとか医師に言われて安心する君たちの不運よ。無意味な放射線を叩き込まれること以上に、肉体のリスクなどあるはずがないのに。
 こんなところにまで、運命による命のイタズラが撒かれてあるなんて、一体誰が見当できるだろうか。人間社会は、いつでもどこでも血にまみれている。

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